社会福祉士の国家試験では,ときどき最高裁判所の判断が出題されます。
その後の法改正に関係するからでしょう。
もうかなり前の最高裁判断になりますが,成年後見人が選任されると選挙権が剥奪されるのは,違憲であるという判断が示されました。
その後,公職選挙法が改正されて,この規定が削除され,被後見人の選挙権が回復しました。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題77
日本国憲法の基本的人権に関する最高裁判所の判断についての次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 公務員には争議権がある。
2 永住外国人には生活保護法に基づく受給権がある。
3 生活保護費を原資とした貯蓄等の保有が認められることはない。
4 嫡出子と嫡出でない子の法定相続分に差を設けてはならない。
5 夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は違憲である。
最高裁判断と言うと,とても難しいと感じるかもしれませんが,今もその制度が残っている場合は,違憲ではないという判断はされていないと考えることができそうです。
先述したように,最高裁判断はその後の法改正につながるからです。
改正しないと,違憲状態が存続してしまいます。
それでは解説です。
1 公務員には争議権がある。
争議権とは,ストライキを行う権利のことです。
公務員はストライキを行うことができません。
つまり違憲ではないということです。
遠い昔には公務員が争議権の行使を求めてスト権ストが行われていたこともあります。
日本が元気だった時代のことです。
2 永住外国人には生活保護法に基づく受給権がある。
これはこれまで何度も出題されていますが,生活保護法は永住外国人に適用されません。
生活保護法は,国民を対象とした法制度だからです。
3 生活保護費を原資とした貯蓄等の保有が認められることはない。
これは,過去に一度出題された中島訴訟です。
生活保護費を原資とした貯蓄等の保有は認められています。
4 嫡出子と嫡出でない子の法定相続分に差を設けてはならない。
これが正解です。
この判断により,民法が改正されています。
5 夫婦別姓を認めない民法や戸籍法の規定は違憲である。
夫婦別姓が認められていないのは,現在(2025年6月時点)もそのままです。
違憲であるという判断がなされていたら,夫婦別姓は認められているはずです。