2025年6月8日日曜日

社会保障制度に関する事例問題の着眼点


2025年(令和7年)2月に実施された第37回国家試験から,令和元年度カリキュラムに沿った内容に移行しています。


大きな変更はなく,科目の再編が中心です。


全体の出題数は150問から129問になり,大きく減りましたが,「社会保障」の出題数は,7問から9問と2問も増えています。


増えた分は,事例問題(問題の類型ではタクソノミーⅢ型)で出題されてくると思うので,結構やっかいです。


タクソノミーⅢ型は,知識の総合問題だと言えるからです。


知識ゼロでは正解することは,困難です。


〈社会保障の事例問題の主な着眼点〉

1.けがの原点となった事故が起きたのは,仕事中だったか,プライベートだったのか

2.医療保険の場合,健康保険なのか,国民健康保険なのか

3.年金保険の場合は,何歳なのか

4.国民年金の場合は,第何号被保険者なのか


1の場合は,仕事中の事故なら,健康保険は適用されないからです。

2の場合,世帯主が健康保険加入者であれば,家族は被扶養者になる可能性がありますが,国民健康保険加入者の場合,被扶養者という制度はありません。

3の場合,介護保険の場合は,40~64歳は第二号被保険者,65歳以上は第一号被保険者,国民年金の場合は20歳以上~60歳未満が加入します。

4の場合,配偶者が厚生年金加入者(国民年金の第二号被保険者)の場合,被扶養配偶者は,第三号被保険者となる可能性があります。配偶者が国民年金加入者(国民年金の第一号被保険者)の場合,被扶養配偶者も第一号被保険者として加入します。これらの場合も年齢に注意します。


それでは,今日の問題です。


第35回・問題51

事例を読んで,社会保険制度の加入に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Gさん(76歳)は,年金を受給しながら被用者として働いている。同居しているのは,妻Hさん(64歳),離婚して実家に戻っている娘Jさん(39歳),大学生の孫Kさん(19歳)である。なお,Gさん以外の3人は,就労経験がなく,Gさんの収入で生活している。 

1 Gさんは健康保険に加入している。

2 Hさんは国民健康保険に加入している。 

3 Jさんは健康保険に加入している。

4 Jさんは介護保険に加入している。

5 Kさんは国民年金に加入している。


最初に注意するのは,年齢などの属性です。


Gさん(76歳)は,被用者なので70歳になるまで,厚生年金に加入していたと考えられますが,70歳になった時点で厚生年金の加入権を失っています。医療保険は,74歳までは,健康保険に加入していました。75歳になった時点で健康保険から後期高齢者医療制度に変わっています。


Hさん(64歳),Jさん(39歳),Kさん(19歳)はいずれも就労経験はなく,Gさんの収入で生活しています。


これらを頭に入れておいて,各選択肢を考えていきます。


1 Gさんは健康保険に加入している。


Gさんが加入している医療保険制度は,後期高齢者医療制度です。


2 Hさんは国民健康保険に加入している。


これが正解です。


Gさんが75歳になるまでは,健康保険に加入していたので,被扶養者としてHさん自身は医療保険に加入する必要はありませんでした。


しかし,後期高齢者医療制度には被扶養者という制度がないために,Hさん,Jさん,Kさんは,全員,国民健康保険に加入しなければなりません。


3 Jさんは健康保険に加入している。


Jさんは,就労していないので,健康保険に加入できません。健康保険に加入するためには,現時点(2025年6月)では,月の収入として88,000円以上が必要です。


4 Jさんは介護保険に加入している。


この家族の中で,介護保険に加入しているのは,Gさん,Hさんの2人のみです。


Jさんは,40歳になると第二号被保険者となります。


5 Kさんは国民年金に加入している。


Kさんは,20歳になると,国民年金に加入します。


〈おまけ〉

Kさんが現時点で,事故や病気などになり,国民年金の障害等級表の1級,2級に相当する障害となった場合は,20歳になると,障害基礎年金が給付される可能性があります。


このように,障害基礎年金の場合,保険料を納付せずとも,保険料を受け取れる可能性があります。

この場合には,社会保険制度には珍しく所得制限が設けられています。所得が高いと,年金の減額や停止が行われます。


このほかにも学生納付特例制度を利用している最中に国民年金の障害等級表の1級,2級に相当する障害となった場合も障害基礎年金を受け取ることができます。受給するのに,保険料の追納は必要ありません。

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