現役世代の公的医療保険を大きく分けると,健康保険と国民健康保険の2つがあります。
それぞれの保険者には,組合があります。
健康保険組合は,大企業などが独自に組合を作り,保険業務を行います。
国民健康保険は,同業者などが独自に組合を作り,保険業務を行います。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題52
公的医療保険における被保険者の負担等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 健康保険組合では,保険料の事業主負担割合を被保険者の負担割合よりも多く設定することができる。
2 「都道府県等が行う国民健康保険」では,都道府県が保険料の徴収を行う。
3 「都道府県等が行う国民健康保険」の被保険者が,入院先の市町村に住所を変更した場合には,変更後の市町村の国民健康保険の被保険者となる。
4 公的医療保険の保険給付のうち傷病手当金には所得税が課せられる。
5 保険診療を受けたときの一部負担金の割合は,義務教育就学前の児童については1割となる。
(注) 「都道府県等が行う国民健康保険」とは,「都道府県が当該都道府県内の市町村とともに行う国民健康保険」のことである。
知識なしでは,5分の1以上の確率では正解できないかなり難しい問題です。
国家試験が終わると,いろいろな団体や個人が,いわゆる「難問・奇問」と位置づける問題がありますが,実は,このような問題の方が正解するのが難しいものです。
「難問・奇問」は,焦らないで冷静に考えると意外と正解できます。
今日の問題のような内容の問題は,どれだけ考えても知識なしでは,答えを導きだすことができません。
それでは解説です。
1 健康保険組合では,保険料の事業主負担割合を被保険者の負担割合よりも多く設定することができる。
これが正解です。
大企業などが独自に組織する健康保険組合は,かなり自由に運営することができます。
保険料も独自に設定することができます。
そのほかには,法定給付以外に組合独自の給付である「付加給付」を設定することもできます。
2 「都道府県等が行う国民健康保険」では,都道府県が保険料の徴収を行う。
社会保険の中で,都道府県が保険者となる制度は,国民健康保険のみです。
しかし,保険料の徴収を行うのは市町村です。
このような一般住民を対象とする事務は,都道府県には向きません。
3 「都道府県等が行う国民健康保険」の被保険者が,入院先の市町村に住所を変更した場合には,変更後の市町村の国民健康保険の被保険者となる。
国民健康保険には「住所地特例」という制度があり,入院前の市町村が引き続き保険者となります。
この制度は,介護保険でも採用されています。
4 公的医療保険の保険給付のうち傷病手当金には所得税が課せられる。
傷病手当金には,所得税はかかりません。
5 保険診療を受けたときの一部負担金の割合は,義務教育就学前の児童については1割となる。
一部負担金は,義務教育就学前の児童については2割です。