日本の年金制度は,先に被用者を対象とする厚生年金ができて,そのあとに厚生年金の被保険者以外の20歳以上60歳未満を対象とする国民年金ができました。
現在は,1階部分が国民年金,2階部分が厚生年金という2階建て構造となっています。
〈保険者〉
いずれも政府
〈保険料〉
国民年金 定額制
厚生年金 報酬比例(報酬が高いと多く拠出する方式)
それでは,今日の問題です。
第35回・問題55
公的年金制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 厚生年金保険の被保険者は,国民年金の被保険者になれない。
2 基礎年金に対する国庫負担は,老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金のいずれに対しても行われる。
3 厚生年金保険の保険料は,所得にかかわらず定額となっている。
4 保険料を免除されていた期間に対応する年金給付が行われることはない。
5 老齢基礎年金の受給者が,被用者として働いている場合は,老齢基礎年金の一部又は全部の額が支給停停止される場合がある。
知識がないと正解できない問題です。
年金保険は複雑ですが,すべての国民を対象とする皆年金は,自分の人生にも関係するだけに確実に覚えておきたいです。
それでは,解説です。
1 厚生年金保険の被保険者は,国民年金の被保険者になれない。
厚生年金の被保険者は,給与明細に厚生年金保険料と記載されているので,国民年金には加入していないと思う人が結構います。
国民年金は,日本国内に住所のある20歳以上60歳未満の者が加入します。
国民年金の被保険者は,第一号から第三号まであります。
第二号被保険者は,厚生年金の被保険者です。
第三号被保険者は,第二号被保険者(つまり厚生年金の被保険者)の被扶養配偶者です。
第一号被保険者は,第二号被保険者でも第三号被保険者でもない者です。
2 基礎年金に対する国庫負担は,老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金のいずれに対しても行われる。
これが正解です。基礎年金(つまり国民年金)には国庫負担があります。
現在の国庫負担割合は,2分の1です。
3 厚生年金保険の保険料は,所得にかかわらず定額となっている。
〈保険料〉
国民年金 定額制
厚生年金 報酬比例(報酬が高いと多く拠出する方式)
4 保険料を免除されていた期間に対応する年金給付が行われることはない。
国民年金も厚生年金も保険料免除の期間は,年金額の算定に関連します。
国民年金の場合,全額免除では,国庫負担分が将来受け取る年金額に関係します。
現在の老齢基礎年金の満額(年額)は,約80万円です。
40年間,全額免除の場合,半額の約40万円が支給されます。
厚生年金の場合は,免除された期間は,保険料納付があったものとして計算されます。
これは,産前産後休業・育児休業,特に育児休業の取得を促すための仕組みです。
5 老齢基礎年金の受給者が,被用者として働いている場合は,老齢基礎年金の一部又は全部の額が支給停止される場合がある。
被用者として働いている場合は,老齢基礎年金の一部又は全部の額が停止される制度は,在職厚生年金といいます。
つまり,この制度があるのは,厚生年金です。