2020年5月31日日曜日

DSM-5とは



社会福祉士の国家試験は,科目の一部が精神保健福祉士と共通です。

そのため,国試当日では午前中に実施される科目は「共通科目」と呼ばれます。

人によっては,午前の科目を「基礎科目」,午後の科目を「専門科目」と言う人がいますが,そういう意味ではありません。

さて,現在知り組んでいる「人体の構造と機能及び疾病」は,精神保健福祉士との共通科目です。

そのため,精神疾患についての出題は,かなり頻度が高くなっています。

国際的な疾患の診断分類には,WHO(国際保健機関)が作成した「国際疾病分類(ICD)」があります。

最新版は,2018に発表されたばかりの「ICD-11」です。

精神疾患については,アメリカ精神医学会が作成した「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」があります。

最新版は,DSM-5です。

このうち,出題基準に示されているのは,ICD-11ではなく,DSM-5です。

ところが,わが国の診療報酬などではICDを採用していることもあり,精神保健福祉士の専門科目では,ICD-11が出題されます。

過去には,共通科目でもICDが出題されたこともありますが,基本的には,DSM-5が出題されると考えてよいでしょう。

特に,ICDは,第10版から第11版になったばかりということもあり,日本では本がまだ出版されていないようです。


最低覚えておきたいこと(作成者)
ICD-11
世界保健機関
DSM-
アメリカ精神医学会

DSM-5の具体的な疾患分類については,別の機会に譲るとして,疾患名を日本で訳したときに,かなり苦労があったようです。

強迫症/強迫性障害
パニック症/パニック障害

といったように,新しい疾患名に加えて,日本で定着している疾患名を併記しています。

たとえば,強迫症/強迫性障害
の場合は,
強迫症が,新しい疾患名
強迫性障害が,日本に定着している疾患名

です。

国試では,併記して出題されますが,強迫性障害は知っていても「強迫症/強迫性障害」は知らないと思わないようにしましょう。

いずれも同じものです。


もう一つ覚えておきたいこと(診断方法)
DSM-Ⅲ,およびDSM-
多軸診断
DSM-
多元的診断

社会福祉士は,精神保健の専門家ではないので,多元的診断とは何かを詳しく覚える必要はありません。

単純に,多軸診断から,多元的診断という方法に変わったのだ,ということだけを押さえておけば十分です。

それでは,今日の問題です。


29回・問題7 精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 作成したのは世界保健機関(WHO)である。

2 精神障害を内因性,心因性という名称で分類している。

3 身体疾患の診断基準も掲載している。

4 多軸診断システムを用いている。

5 操作的診断基準によって診断する。


この問題は,DSM-5が初めて出題されたものです。

そういった意味では,この時点では必ずしも正解できなくてもよい問題だったと言えます。
しかし,今は対策ができるので,同様の問題が出題された時は,正解しなければなりません。

それでは解説です。



1 作成したのは世界保健機関(WHO)である。

世界保健機関が作成したのは,ICDです。
DSMを作成したのは,アメリカ精神医学会です。



2 精神障害を内因性,心因性という名称で分類している。

「内因性」「心因性」という名称で分類したのは,DSM-Ⅲ以前だそうです。

この問題が難しいのは,この選択肢を消去するのが難しいためです。



3 身体疾患の診断基準も掲載している。

DSMは,身体疾患の診断基準は掲載していません。

アメリカ精神医学会が作成したものだと考えると,身体疾患は含まれない,ということを推測することが可能です。


4 多軸診断システムを用いている。

多軸診断システムを用いていたのは,DSM-ⅢとⅣです。
DSM-5では,多軸診断を廃止して,多元的診断を取り入れています。



5 操作的診断基準によって診断する。

これが正解です。

精神疾患の診断は,診断する人によって差が生じることがあることが指摘されていました。

そこで,DSM-5では,明確な診断基準を設けたのです。それが「操作的診断基準」と呼ばれるものです。

この場合の操作的とは,「明確な」といった意味合いです。

2020年5月30日土曜日

認知症の基礎知識~特にレビー小体型認知症




今回は,主な認知症について学んでいきたいと思います。


主な認知症とその症状

疾患名
特徴
アルツハイマー型認知症
脳にアミロイドタンパクが蓄積することで,脳に変性を来す認知症。
脳血管性認知症
脳卒中などで脳がダメージを受けることで,発症する認知症。
意識がクリアな時とクリアではない時があるため「まだら認知症」と呼ばれることがある。
レビー小体型認知症
大脳などにレビー小体が蓄積することで,脳に変性を来す認知症。
この認知症の特徴は,はっきりした幻視とパーキンソン病のような症状があることである。
ピック病
大脳の前頭葉と側頭葉が萎縮することで発症する認知症。
ピックさんが発見したことでピック病とも呼ばれる。
この認知症の特徴は,記憶力は比較的保たれるが,初期から人格が変わることがみられることである。

これを押さえたところで,今日の問題です。


29回・問題6 レビー小体型認知症に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 米国人によって提唱された疾患である。

2 レビー小体は主に脊髄に蓄積する。

3 臨床診断に用いる中核的特徴にパーキンソン症状がある。

4 幻覚症状の中では幻聴が最も多い。

5 前頭側頭型認知症とも呼ばれる。


レビー小体型認知症に絞った出題です。

認知症が出題されたときには,必ずレビー小体型を絡めて出題されるので要注意です。

ポイントは,症状です。


レビー小体型認知症の症状の特徴を2つ挙げてください。


答えは,パーキンソン症状とはっきりした幻視です。


今日の問題の答えは,もうわかっていると思いますが,解説します。



1 米国人によって提唱された疾患である。

レビー小体型認知症を提唱したのは,日本人です。

具体的には,横浜市立大学名誉教授の小阪憲司氏です。



2 レビー小体は主に脊髄に蓄積する。

レビー小体が主に蓄積するのは,大脳などです。

たとえ脊髄に蓄積しても,認知症状は生じないでしょう。



3 臨床診断に用いる中核的特徴にパーキンソン症状がある。

これが正解です。



4 幻覚症状の中では幻聴が最も多い。

最も多いのは幻視です。



5 前頭側頭型認知症とも呼ばれる。

前頭側頭型認知症とも呼ばれるのは,ピックさんが発見したピック病です。




<今日の一言>


唐突感のあるものは,正解になりにくい


国家試験を受けると無力感にさいなまれます。

あれだけ勉強したのに,わからないものが出題されるからです。


今日の問題の中では,

1 米国人によって提唱された疾患である。

これがそんなタイプのものになるでしょう。

レビー小体型認知症の問題なのに,提唱者を出題するというのは,唐突感があると思いませんか?

こういったものは,正解にはなりにくいものです。

このようなものを排除(つまり消去)することは,問題慣れしないと難しいかもしれませんが,この感覚をつけられれば,つまらないミスは減らせます。

2020年5月29日金曜日

生活習慣病の発症と遺伝の関与


生活習慣病は,古くは「成人病」と呼ばれていたものです。

現在,生活習慣病と言い換えられているのは,発症は個々の長年の生活の積み重ねによるものであるからです。

生活習慣病という名称から,生活習慣が発症の要因であるように思われがちですが,実は,遺伝も大きくかかわっています。

糖尿病には,1型と2型があり,高年齢者に発症することが多いのは,2型糖尿病です。

日本人の糖尿病の9割以上は,2型糖尿病ですが,2型糖尿病は遺伝が大きくかかわり,糖尿病の遺伝子を持たない人は,暴飲暴食をしても発症リスクは低いと言われています。

それでは,今日の問題です。

難易度は,高めです。


第29回・問題5 生活習慣病に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 発症に生活習慣の関与が強いのは,2型糖尿病よりも1型糖尿病である。

2 アルコール摂取量は,メタボリックシンドロームの診断基準に含まれる。

3 生活習慣病の発症に,遺伝要因は関与しない。

4 喫煙は,膀胱がんの危険因子の一つである。

5 身体活動レベルの増大は,生活習慣病の発症リスクを上げる。


難易度が高いのは,正解は選択肢4だからです。

今は,参考書などに書かれていますが,この時,初めて喫煙と膀胱がんのかかわりが出題されたのです。

ほかの選択肢をきっちり消去することによって正解できるタイプの問題です。

それでは解説です。


1 発症に生活習慣の関与が強いのは,2型糖尿病よりも1型糖尿病である。

前説のように,2型糖尿病は,遺伝がかかわります。


2 アルコール摂取量は,メタボリックシンドロームの診断基準に含まれる。

メタボリックシンドロームの診断基準は,胴囲に加えて,血中脂質異常,高血圧,高血糖の中で2つ以上が該当する場合です。


3 生活習慣病の発症に,遺伝要因は関与しない。

2型糖尿病のように,遺伝は発症に関与します。


4 喫煙は,膀胱がんの危険因子の一つである。

これが正解です。

この問題は,ほかの選択肢を消去することによってこの選択肢が残るタイプの問題です。
ほかの選択肢を消去できなければ,正解することができません。


5 身体活動レベルの増大は,生活習慣病の発症リスクを上げる。

身体活動の増大は,発症リスクを下げます。

2020年5月28日木曜日

感染症の基礎知識

人類の歴史は,まさに感染症との闘いの歴史とも言えるのかもしれません。

近年は,免疫について出題されていませんが,免疫は,液性免疫と細胞性免疫の2つがあります。
おそらくですが,このような免疫をもった人類が生き残ってきたのではないでしょうか。


それでは,今日の問題です。

第29回・問題4 感染に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 疥癬の他者への感染を予防するために,患者の使用した食器の消毒を行う。

2 結核は,空気中に浮遊する病原菌を吸入することで感染する。

3 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は,水や食べ物を通して感染する。

4 デング熱は,マダニを介して感染する。

5 C型肝炎ウイルスの感染予防には,ワクチンが実用化されている。

感染症に関する出題は,現在のカリキュラムによる国家試験になってから,実はそれほど多くはありません。

そのためなのか,この問題の難易度はそれほど高くはありませんが,正解するのはそれほど簡単ではありません。

理由は,

問題の分類

①すべての選択肢がわかって,答えられるもの。
②答えがすぐわかるもの。
③ほかの選択肢を消去することで,答えにたどりつくもの。

のうち,②答えがすぐわかるもの。だからです。

正解は,

2 結核は,空気中に浮遊する病原菌を吸入することで感染する。

結核は,空気感染です。

結核は,二類に分類されています。

新型コロナウイルスは,今のところは,飛沫感染だとされているので,ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つことが推奨されているのです。

それでは,ほかの選択肢を確認してみましょう。


1 疥癬の他者への感染を予防するために,患者の使用した食器の消毒を行う。

疥癬は,接触感染です。

最も注意しなければならないのは,医療・介護従事者が媒介する感染です。

患者の処置が終わったあとのグローブ交換などで感染を防止します。


3 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は,水や食べ物を通して感染する。

HIVは,体液から感染します。

水や食べ物を通して感染するのは,肝炎です。

後天性免疫不全症候群は,五類に分類されています。


4 デング熱は,マダニを介して感染する。

デング熱は,蚊を媒介して感染します。

デング熱は,四類に分類されています。


5 C型肝炎ウイルスの感染予防には,ワクチンが実用化されている。

C型肝炎ウイルスのワクチンは,まだ実用化には至っていません。

ただし,A型とB型肝炎のワクチンは,実用化されています。

C型肝炎は,五類に分類されています。

C型肝炎が発生した1980年代の後半では,C型肝炎ウイルスが発見されなくて,非A非B型肝炎(A型でもB型でもない肝炎という意味)と呼ばれていました。

しばらくして,C型肝炎ウイルスが発見されました。それから30年も経ちますが,ワクチンが未だ実用化されていないというのは,ワクチン開発には時間がかかるということなのでしょう。

2020年5月27日水曜日

心臓の解剖生理

身体の構造のうち,出題頻度が比較的高いのは,脳と心臓です。

これは脳疾患と心臓疾患をかかえる日本人が多いからでしょう。

今回はそのうち,心臓の解剖生理を取り上げたいと思います。

心臓の構造については,驚くなかれ,私立中学の入試でもたびたび取り上げられています。
実際に学ぶのは,中学の理科ですが,小学生でも学んでいます。

しっかり覚えないと答えられないために,受験者に差が出やすいものの一つです。

心臓の解剖生理は,図などで見た方が理解しやすいですが,言葉で書くと以下のようになります。

血液の流れ

①右心房
 ↓ (三尖弁)
②右心室
 ↓
③肺動脈
 ↓
④肺
 ↓
⑤肺静脈
 ↓
⑥左心房
 ↓ (僧帽弁)
⑦左心室
 ↓
⑧大動脈
 ↓
⑨大静脈
 ↓
①右心房

心臓には,大動脈から分岐した冠状動脈によって,血液が運ばれます。
そのあと,冠静脈 → 冠静脈洞(右心房に開口)から心臓に戻ります。

それでは,今日の問題です。

第29回・問題3 心臓の正常解剖に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 冠状動脈は大動脈起始部より分岐する。

2 右心房と右心室の間の弁を僧幅弁という。

3 上大静脈と下大静脈は左心房に開口する。

4 肺静脈の中の血液は静脈血である。

5 冠静脈洞は左心房に開口する。


この問題は,かなり難易度が高い問題でした。
この時点で,参考書に書いてあったのは,


2 右心房と右心室の間の弁を僧幅弁という。
4 肺静脈の中の血液は静脈血である。

この2つだけです。

右心房と右心室にある弁は,三尖弁です。

肺静脈は,肺から心臓に戻ってくる血管なので,酸素を含んだ動脈血が流れます。

このほかは,勘を働かせるしかありませんでした。

しかし,ここで,前回書いたことを思い出してください。

間違い選択肢は,

高い ⇔ 低い
増加 ⇔ 減少
右  ⇔ 左
上  ⇔ 下

といったものを入れ替えて,作られることがよくあるということです。

そこで,ほかの選択肢に身を向けてみると


3 上大静脈と下大静脈は左心房に開口する。
5 冠静脈洞は左心房に開口する。

どちらも「左」が含まれています。
そこで,「右」ではないかと推測します。

結果的には,それでよかったのですが,わからない時は,こういった推測ができると得点力は飛躍的に伸びます。

残るは

1 冠状動脈は大動脈起始部より分岐する。

これが正解でした。


<今日の一言>

今日の問題のようにすべての選択肢がわからなくても,正解できる可能性があります。

というか,そういった問題の方が多いかもしれません。

問題のタイプは,以下のように分類できます。


①すべての選択肢がわかって,答えられるもの。
②答えがすぐわかるもの。
③ほかの選択肢を消去することで,答えにたどりつくもの。

②の問題の場合は,ほかの選択肢がどこが間違っているのかはよくよくわからなくても,絶対に答えはこれだ,とわかるものです。

勉強した人とそうでない人の差が表れやすいものの一つでしょう。

答えがわからない人は,あてずっぽうで答えを選ぶことができないからです。


最も多いのは,

③ほかの選択肢を消去することで,答えにたどりつくもの。

一つでも消去できないものがあると極端に正解できなくなりまする

しかし,答えを1つ選ぶ問題で,2つまで選択肢を絞り込むことができたなら,合格にはかなり近づいています。

このことについては,いずれまたお話しする機会があることでしょう。

2020年5月26日火曜日

加齢に伴う生理機能の変化


老化に関する出題は,かなりの高確率で出題されています。

一問丸ごと出題されたものの出題確率は,45.4%です。
問題のどこかに含まれているものを含めるとほぼ毎回出題されています。

しかも身近な内容でもあり,難易度はそれほど高くはありません。

気を付けるべきポイントは,問題1が難しいために,それを引きずってしまい,落ち着いて問題を読むことができなくなってしまうことです。

それでは今日の問題です。

第29回・問題2 加齢に伴う生理機能の変化に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 体重に占める水分の割合は増加する。

2 収縮期血圧と拡張期血圧の差は縮小する。

3 聴力は高周波音域から低下する。

4 肺活量は維持される。

5 流動性知能は維持される。


落ち着いて問題を読むことができれば,それほど難しい問題ではないと思います。

問題文が短いこともあり,おかしな引っ掛けはありません。

それでは解説です。

1 体重に占める水分の割合は増加する。

体重に占める水分の割合は低下します。
そのために,脱水をきたしやすくなります。


2 収縮期血圧と拡張期血圧の差は縮小する。

収縮時血圧とは,最高血圧のことです。
拡張期血圧とは,最低血圧のことです。

加齢に伴い,上がるのは収縮時血圧(最高血圧)です。
拡張期血圧(最低血圧)は,それほど上がりません。

そのため,差は拡大します。


3 聴力は高周波音域から低下する。

これが正解です。

老化に伴う難聴は,感音難聴といいます。
感音難聴は,高音域から聞こえにくくなります。
この5つの選択肢の中で,過去最も出題回数が多いのは,この選択肢です。


4 肺活量は維持される。

肺は,加齢に伴い,機能低下をきたしやすい臓器の一つです。
そのほかに機能低下しやすい臓器には,腎臓などもあります。


5 流動性知能は維持される。

流動性知能は,結晶性知能とセットで覚えておきたいものです。

流動性知能は,新しいことへの適応力です。その場の判断力なども流動性知能の一つです。
高齢者の自動車運転による事故が社会問題化していますが,事故を起こす原因の一つには,流動性知能の低下が考えられます。

このように流動性知能は加齢とともに低下します。

一方,結晶性知能は,経験などにより培われていく知能です。
いわば,「おばあちゃんの知恵袋」といったところでしょうか。


<今日の一言>

社会福祉士の国家試験は,正しいもの,あるいは適切なものを1つまたは2つ選ぶ問題で構成されています。

そのため,当然のことながら,正解以外は間違いです。

しかし,試験委員にとって,間違い選択肢をつくるのは,結構難しいものです。

そのため,さまざまな方法を用いて問題を作ります。

今日の問題で気がついた人もいるかもしれませんが,以下のようなものが多用されます。

高い ⇔ 低い
増加 ⇔ 減少
拡大 ⇔ 縮小
右  ⇔ 左
上  ⇔ 下

などなどです。

これらが含まれた選択肢は,より慎重に考えることが必要です。

答えがわからないという時は,極力選ばないという慎重さも必要です。

2020年5月25日月曜日

1問目は難しい

今回からは,初心に戻って,第29回国試問題に取り組んでいきたいと思います。

なぜなら,多くの人が手にすると思われる過去問題集には,第29回国試の解説はついていないからです。

つまり,多くの受験生は取り組むことのないものとなります。

1問目は難しい

ここで覚えておきたいのは,1問目は,勉強してこなかった内容が含まれる問題が出題されるされることが多いことです。

それでは,早速今日の問題です。


第29回・問題1 身体の標準的な成長・発達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 器官が形成され始めるのは,受精後24週以降である。

2 体重が出生時の約2倍になるのは,出生後3~4か月である。

3 身長が出生時の約2倍になるのは,2歳前後である。

4 乳歯は,生えそろうと32本になる。

5 リンパ系組織が成長のピークとなるのは,乳幼児期である。


このような問題があると,子育て経験のある人が有利だと思う人もいるかもしれません。

しかし,子育て中は,毎日が必死で,細かいことは覚えていないのが現実です。

この問題は「人体の構造と機能及び疾病」で出題されたものです。

この科目は,実は医療職であっても,簡単には正解できない問題も含まれます。
逆に,勉強しなくても点数が取れる問題もあります。

この問題は,前者です。

それでは解説です。


1 器官が形成され始めるのは,受精後24週以降である。

気管が形成され始めるのは,受精後4週以降です。


2 体重が出生時の約2倍になるのは,出生後3~4か月である。

これが正解です。

自分の子どもが生まれたときの身長,体重は覚えていたとしても,その後の成長は明確に覚えていないのが現実でしょう。


3 身長が出生時の約2倍になるのは,2歳前後である。

身長が出生時の約2倍になるのは,3歳以降です。


4 乳歯は,生えそろうと32本になる。

乳歯は20本,永久歯が32本です。


5 リンパ系組織が成長のピークとなるのは,乳幼児期である。

勉強してきた人が,確実に消去できるのは,おそらくこの選択肢のみでしょう。

スキャモン(スカモン)の発達曲線によれば,免疫にかかわるリンパ系型が最も成長するのは,思春期の頃です。


<今日の一言>

多くの人が手にする過去問は,3~4年分のものです。

これらを完璧に覚えても正解するのに必要な知識にはなりません。

この中で繰り返し出題されるのは,5分の1程度です。

5分の3は,それよりももっと前に出題されたものです。

あとの5分の1が新しい問題です。

今日の問題のベースとなった問題

第22回・問題1 身体の正常な成長・発達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 大泉門は,生後6か月までに自然に閉鎖する。
2 すべての原始反射は,生下から認められ幼児期には消失する。
3 受精後8週目を過ぎると,人としての基本的生理機能を担う器官の形成期に入る。
4 学童期から青年期における顕著な身長の伸びには,成長ホルモンが関与している。
5 脳や感覚器官は,生後から成人まで穏やかなS字カーブを描いて成長する。

第25回・問題1 身体の標準的な成長・発達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 成人の身長は,出生時の約5倍になる。
2 成人の体重は,出生時の約10倍になる。
3 脳の重量は,4~6歳で成人のおよそ90%を超える。
4 リンパ系の器官は,成人期に最も発達する。
5 生殖器系の器官は,出生時と思春期の2回急激に発育する。

第22回の正解は,選択肢4です。
第25回の正解は,選択肢3です。

これらを解いていても,国試で正解できるかは不安です。

そのため,国試の最初の科目の「人体の構造と機能及び疾病」は,難しくなるのです。

特に1問目は,簡単ではない問題が出題されることが多い傾向にあります。

第32回国試の1問目は比較的難易度が高くはない問題が出題されましたが,例年はそうではない,と考えておいた方がよいと思います。

国試当日は,問題1は正解できなくてもよい,くらいに思う気持ちの余裕が必要です。

2020年5月24日日曜日

社会福祉士の国家試験とは?



社会福祉士の国家試験は,近年は2月の第一週の日曜日に実施されています。

そこにピークを合わせて勉強していくことになります。

分厚い参考書を目の前にすると,本当にこれだけのものを覚えられるのだろうか,と不安を覚える人も多いのではないでしょうか。

しかし,科目別にみるとそれほどの分量はありません。


千里の道も一歩から


500ページの参考書の場合

1日5ページで,100日で終わります。

最初に取り掛かるときのコツは・・・

500ページのうちの5ページだと思わないことです。
これだと100分の1です。

発想を変えて,科目ごとの小ゴールだととらえると

70ページの科目だと,5ページは,14分の1です。

100分の1と14分の1では,進んだという手ごたえがまったく変わります。



分厚い参考書は,科目ごとに切り離す

ちょっと面倒ですが,まずは科目ごとに切り離してみましょう。

1冊だと持ち運びたくないですが,科目ごとに切り離すと軽くなるので,持ち運びしやすくなります。

何より,進行ぐあいを実感いできます。

そのうえで,国家試験についてです。


国家試験は,複雑な問題は出題されません。

事例問題でさえ,ある法則によって出題されています。


それでは,次回の国試に向かってのスタートしましょう。

2020年5月23日土曜日

苦手科目を作らない


社会福祉士の国家試験の合格基準は以下のようになっています。
1 問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者。

2 1を満たした者のうち、以下の18科目群(ただし、(注意2)に該当する者にあっては7科目群。)すべてにおいて得点があった者。
1] 人体の構造と機能及び疾病
2] 心理学理論と心理的支援
3] 社会理論と社会システム
4] 現代社会と福祉
5] 地域福祉の理論と方法
6] 福祉行財政と福祉計画
7] 社会保障
8] 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
9] 低所得者に対する支援と生活保護制度
10] 保健医療サービス
11] 権利擁護と成年後見制度
12] 社会調査の基礎
13] 相談援助の基盤と専門職
14] 相談援助の理論と方法
15] 福祉サービスの組織と経営
16] 高齢者に対する支援と介護保険制度
17] 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
18] 就労支援サービス、更生保護制度

(注意1) 配点は、11点の150点満点である。
(注意2) 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第5条の2の規定による試験科目の一部免除を受けた受験者にあっては、配点は、11点の67点満点である。

19科目ありますが,就労支援サービスと更生保護制度は,出題される問題が4問ずつと少ないために,2科目で1群とされています。

総得点(150点)の60%は,90点程度となります。

国家試験の近年の合格率は,30%程度で推移しています。

つまり,90点程度を超える人は,受験者全体の30%しかいないことになります。

社会福祉士の国家試験を実施する「公益財団法人 社会福祉振興・試験センター」は,受験者の得点分布を公表していません。

そのため,平均点がどの程度のところにあるのかは推測の域を超えませんが,経験的なことから,70点台後半~80点台前半にあるのではないかとみています。

仮に第33回国試の平均点を79点とすると,69点~89点までに,受験者全体の7割近くが分布しているのではないかと思います。

さて,本題です。

合格基準点が89点のとき,自分の得点が69点だったとすると,とても点数が低いように思うかもしれません。

しかし,社会福祉士の国試は19科目もあるので,1科目1点を上乗せすると19点も伸びます。

現時点(5月)は,まだ時間があるので,すべての科目を同じようにまんべんなく勉強するようにしましょう。

得意科目で,プラス1点できても,苦手科目でプラスできなければ,全体の得点は伸びないからです。

人によって苦手にする科目が異なると思いますが,多くの人が苦手としているのは,

現代社会と福祉
社会保障
障害者に対する支援と障害者自立支援制度


あたりです。

現代社会と福祉は,覚える内容が多く,見慣れない用語が並んでいるので気が引ける人もいるでしょう。

しかし,この科目の特徴は,現代社会をえぐりだすところにあるので,勉強せずとも解ける問題もあります。

そのため,受験者には意外と差が生じない科目です。

努力が点数に結びつきやすいのは,

福祉行財政と福祉計画
社会保障
障害者に対する支援と障害者自立支援制度

もし各科目2点程度だったとしたら,各科目3点プラスは可能です。

32回国試を受験した人の中で,以下の問題を正解できなかった人は,伸びしろたっぷりだと思います。


32回・問題44 「平成31年版地方財政白書」(総務省)における民生費に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 地方公共団体の目的別歳出純計決算額のうち,民生費は教育費に次いで多い。
2 都道府県の目的別歳出では,生活保護費の割合が最も高い。
3 都道府県の性質別歳出では,扶助費の割合が最も高い。
4 市町村の目的別歳出では,児童福祉費の割合が最も高い。
5 市町村の性質別歳出では,人件費の割合が最も高い。

正解は,選択肢4。


32回・問題50 「平成28年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費は,150兆円を超過した。
2 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を部門別(「医療」,「年金」,「福祉その他」)にみると,「福祉その他」の割合は1割に満たない。
3 2016年度(平成28年度)の社会保障給付費を機能別(「高齢」,「保健医療」,「家族」,「失業」など)にみると,「家族」の割合は1割に満たない。
4 2016年度(平成28年度)の社会保障財源における公費負担の割合は,社会保険料の割合よりも大きい。
5 2015年度(平成27年度)における社会支出の国際比較によれば,日本の社会支出の対国内総生産比は,フランスよりも高い。

正解は,選択肢3。

いずれの問題も出題頻度が高いものです。

合格基準点を超えるためには,誰も解けないような問題を正解することよりも,こういった問題を確実に正解することが欠かせないのです。

苦手科目であっても,こういった問題を確実に正解することで,得点を伸ばしていくことができます。

2020年5月22日金曜日

更生保護の担い手~地域生活定着支援センター②


今回は,地域生活定着支援センターを学んでいきたいと思います。


地域生活定着支援センター

刑務所出所後の帰住先のない高齢者や障害者を対象として,福祉サービスにつなげる支援を行う。
支援内容
①コーディネート
保護観察所の依頼に基づいて,福祉ニーズの確認等を行って,受入れ先施設等のあっせん,福祉サービスに係る申請支援等。
(2)フォローアップ
コーディネートした者が矯正施設から退所した後,本人を受け入れた施設等に対する助言等。
(3)相談支援業務
矯正施設から退所した人が福祉サービスにあたって,本人又はその関係者に対する相談,助言その他必要な支援。


それでは,今日の問題です。



精神保健福祉士・第21回・問題67 地域生活定着支援センターに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 事業の実施主体は,市町村である。

2 少年院から退院する者は,支援の対象者に含まれる。

3 支援は,刑務所からの出所直後から始まる。

4 精神障害者が支援を受けるには,精神障害者保健福祉手帳の所持が必要である。

5 矯正施設の長は,支援の対象者を決定する。



この問題は,精神保健福祉士の国家試験のものです。

それでは解説です。


1 事業の実施主体は,市町村である。

地域生活定着促進事業の実施主体は,都道府県です。


2 少年院から退院する者は,支援の対象者に含まれる。

これが正解です。

支援の対象者

懲役若しくは禁錮の刑の執行のため、刑務所、少年刑務所若しくは拘置所に入所している者又は保護処分のため少年院に入院している者。


3 支援は,刑務所からの出所直後から始まる。

支援は,出所前から実施します。

出所後では,この事業の趣旨から外れてしまいます。


4 精神障害者が支援を受けるには,精神障害者保健福祉手帳の所持が必要である。

精神障害者保健福祉手帳の所持は要件にはありません。


5 矯正施設の長は,支援の対象者を決定する。

支援の対象者を決定するのは,保護観察所の長です。


<今日の一言>

障害者手帳について

障害者手帳には

身体障害者手帳
療育手帳
精神障害者保健福祉手帳

があります。

このうち,手帳を所持しないと障害者とならないのは,身体障害者です。

身体障害者福祉法による身体障害者の定義

「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。


このような規定があるのは,身体障害者のみです。

そのため,身体障害者が,障害者総合支援法の障害福祉サービスを利用するには,身体障害者手帳を所持していることが必要です。

2020年5月21日木曜日

更生保護の担い手~自立準備ホームのその2



 今回も自立準備ホームにかかわる勉強をしていきたいと思います。

前回,紹介したものです。

自立準備ホーム(法務省のホームページから)

平成23年度から開始された「緊急的住居確保・自立支援対策」は,NPO法人等が管理する施設の空きベッド等を活用するもので,この施設を「自立準備ホーム」と呼び,あらかじめ保護観察所に登録しておき,保護が必要なケースについて,保護観察所から事業者に対して宿泊場所,食事の提供と共に,毎日の生活指導等を委託するものです。

行き場のない刑務所出所者等の帰住先・定住先を確保するため,これまで更生保護施設が中心となり,こういった行き場のない刑務所出所者等について,国の委託を受けて収容保護し,社会生活に適応させるための生活指導等を行ってきました。
 しかし,それでもなお行き場のない刑務所出所者等が多数に上ることから,法務省では更生保護施設の受け入れ機能を強化するとともに,平成23年度から「緊急的住居確保・自立支援対策」による住居の確保の施策を実施しています。

それでは,早速今日の問題です。


精神保健福祉士・第16回・問題66 更生保護施設と自立準備ホームに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 全国の更生保護施設の設置状況をみると,女子施設,男子施設がほぼ同じ割合で整備されている。

2 更生保護施設とは,引受人がいないなどの理由で適切な居住地が見つからず,生活の場が確保できない人を保護するための施設で,厚生労働大臣が認可する。

3 自立準備ホームとは,あらかじめ保護観察所に登録されたNPO法人,社会福祉法人などが,それぞれの特長をいかして,自立を促す施設である。

4 民間の更生保護施設は宿泊施設の位置づけであり,社会生活技能訓練(SST)や酒害・薬害教育等の効果的な補導援護処遇は,精神科病院が担う。

5 宿泊保護対象者は,更生保護施設,自立準備ホームのいずれか1つを選択することができる。


更生保護施設も自立準備ホームも勉強していなければ,日常生活ではおそらく見聞きするものではないと思います。

しかし,日本の福祉の歴史を紐解くと,入所施設の始まりは,現在の児童自立支援施設である感化院です。

つまり,入所施設が制度化されたのは,更生保護の領域だったということです。
その後,福祉と更生保護は,別の道を歩くことになりましたが,ようやく21世紀になり,融合するようになったと言えます。

更生保護制度はなじみのない科目だと思わずに,福祉の原点があると思って,頑張って覚えていきましょう。

それでは解説です。


1 全国の更生保護施設の設置状況をみると,女子施設,男子施設がほぼ同じ割合で整備されている。

男子施設の方が圧倒的に多いです。


2 更生保護施設とは,引受人がいないなどの理由で適切な居住地が見つからず,生活の場が確保できない人を保護するための施設で,厚生労働大臣が認可する。

認可は,法務大臣です。
更生保護領域は,基本的に法務省管轄です。

厚生労働省がかかわるものは,それほど多くはありません。
例えば,医療観察法における指定入院医療機関と指定通院医療機関の指定です。

ほかに厚生労働省がかかわるものがあったら,それをチェックしておくと良いと思います。


3 自立準備ホームとは,あらかじめ保護観察所に登録されたNPO法人,社会福祉法人などが,それぞれの特長をいかして,自立を促す施設である。

これが正解です。

自立準備ホームは,認可制ではなく,登録制であることに注意です。


4 民間の更生保護施設は宿泊施設の位置づけであり,社会生活技能訓練(SST)や酒害・薬害教育等の効果的な補導援護処遇は,精神科病院が担う。

更生保護施設は,日常の生活指導として,SST,薬害教育などを実施しています。


5 宿泊保護対象者は,更生保護施設,自立準備ホームのいずれか1つを選択することができる。

対象者が決めるのではなく,保護観察所が決めます。

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