身体の構造のうち,出題頻度が比較的高いのは,脳と心臓です。
これは脳疾患と心臓疾患をかかえる日本人が多いからでしょう。
今回はそのうち,心臓の解剖生理を取り上げたいと思います。
心臓の構造については,驚くなかれ,私立中学の入試でもたびたび取り上げられています。
実際に学ぶのは,中学の理科ですが,小学生でも学んでいます。
しっかり覚えないと答えられないために,受験者に差が出やすいものの一つです。
心臓の解剖生理は,図などで見た方が理解しやすいですが,言葉で書くと以下のようになります。
血液の流れ
①右心房
↓ (三尖弁)
②右心室
↓
③肺動脈
↓
④肺
↓
⑤肺静脈
↓
⑥左心房
↓ (僧帽弁)
⑦左心室
↓
⑧大動脈
↓
⑨大静脈
↓
①右心房
心臓には,大動脈から分岐した冠状動脈によって,血液が運ばれます。
そのあと,冠静脈 → 冠静脈洞(右心房に開口)から心臓に戻ります。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題3 心臓の正常解剖に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 冠状動脈は大動脈起始部より分岐する。
2 右心房と右心室の間の弁を僧幅弁という。
3 上大静脈と下大静脈は左心房に開口する。
4 肺静脈の中の血液は静脈血である。
5 冠静脈洞は左心房に開口する。
この問題は,かなり難易度が高い問題でした。
この時点で,参考書に書いてあったのは,
2 右心房と右心室の間の弁を僧幅弁という。
4 肺静脈の中の血液は静脈血である。
この2つだけです。
右心房と右心室にある弁は,三尖弁です。
肺静脈は,肺から心臓に戻ってくる血管なので,酸素を含んだ動脈血が流れます。
このほかは,勘を働かせるしかありませんでした。
しかし,ここで,前回書いたことを思い出してください。
間違い選択肢は,
高い ⇔ 低い
増加 ⇔ 減少
右 ⇔ 左
上 ⇔ 下
といったものを入れ替えて,作られることがよくあるということです。
そこで,ほかの選択肢に身を向けてみると
3 上大静脈と下大静脈は左心房に開口する。
5 冠静脈洞は左心房に開口する。
どちらも「左」が含まれています。
そこで,「右」ではないかと推測します。
結果的には,それでよかったのですが,わからない時は,こういった推測ができると得点力は飛躍的に伸びます。
残るは
1 冠状動脈は大動脈起始部より分岐する。
これが正解でした。
<今日の一言>
今日の問題のようにすべての選択肢がわからなくても,正解できる可能性があります。
というか,そういった問題の方が多いかもしれません。
問題のタイプは,以下のように分類できます。
①すべての選択肢がわかって,答えられるもの。
②答えがすぐわかるもの。
③ほかの選択肢を消去することで,答えにたどりつくもの。
②の問題の場合は,ほかの選択肢がどこが間違っているのかはよくよくわからなくても,絶対に答えはこれだ,とわかるものです。
勉強した人とそうでない人の差が表れやすいものの一つでしょう。
答えがわからない人は,あてずっぽうで答えを選ぶことができないからです。
最も多いのは,
③ほかの選択肢を消去することで,答えにたどりつくもの。
一つでも消去できないものがあると極端に正解できなくなりまする
しかし,答えを1つ選ぶ問題で,2つまで選択肢を絞り込むことができたなら,合格にはかなり近づいています。
このことについては,いずれまたお話しする機会があることでしょう。
最新の記事
身体障害者福祉法
今回は,身体障害者福祉法を取り上げます。 身体障害者福祉法は, 1949 年(昭和 24 年)に作られた法律です。 成立当時の法の目的と現在の目的を比較してみます。 1949 年当時 現在 ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
グループワークは以下の過程で実施されます。 準備期 ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階です。 この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。 ...
-
ソーシャルワークは,外国生まれです。 これから社会福祉士を目指そうと思う人は,カタカナの言葉が多いので,覚えるのがとても大変だと思うでしょう。 しかし,それらをうまく使いこなすことができれば,とてもかっこよいと思いませんか? ただし,かっこよいから使うのではありません。専門用語は...
-
模擬試験を受験するとその場で解答をもらえることが多いので,すぐ自己採点する人も多いことと思います。 しかし,ここで気を付けなければならないのは,模擬試験は,実際の国家試験よりも点数が取りにくい傾向にあることです。 そこを押さえておかないと「あれだけ勉強したのに点数が取れな...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
ホッブズ問題 とは,社会の人々が自分の利益のために行動する「万人の万人に対する闘争」の状態の時,どのように社会の秩序が保たれるのか,について問う命題です。 社会学者のパーソンズは,この命題に対して,人は社会のルールに従って行為するため,社会の秩序が保たれると考えました。これを「主...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...