令和元年に「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化を図るための関係法律の整備に関する法律」が成立,施行しています。
この法律の趣旨は,「成年後見制度の利用の促進に関する法律」に基づく措置として,成年被後見人,被保佐人であることを理由に不当に差別されないよう、資格や営業許可等の各制度が定める欠格条項等の適正化を図ることです。
具体的には,以下のようになります。
(欠格条項) 例:社会福祉士及び介護福祉士法
改正前
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改正後
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成年被後見人又は被保佐人
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心身の故障により特定行為の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
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保護司にも同様の規定がありましたが,社会福祉士と同じように変更されています。
このほかにも,成年被後見人又は被保佐人を欠格条項としていた資格は,「心身の故障により特定行為の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」と変更されています。
この改正は,どの科目でも出題される可能性があるので,確実に覚えておきたいです。
それでは,今日の問題です。
このほかにも,成年被後見人又は被保佐人を欠格条項としていた資格は,「心身の故障により特定行為の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」と変更されています。
この改正は,どの科目でも出題される可能性があるので,確実に覚えておきたいです。
それでは,今日の問題です。
第27回・問題148 保護観察官と保護司に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 保護司には,一定の刑に処せられた者のほか,成年被後見人又は被保佐人はなれないなどの欠格条項が定められている。
2 保護観察官同様に保護司にも,国家公務員法が全面的に適用される。
3 保護司の任期は2年であり,対象者との関係が適正に保たれるように,原則として再任はされない。
4 対象者の福祉的支援を含む補導援護については保護司が担い,遵守事項を守らせるための指導監督は保護観察官が担っている。
5 更生保護活動への社会的関心の高まりに伴い,ここ数年,全国の保護司定数は毎年増員されている。
この問題は,出題当時は選択肢1が正解でしたが,現在は,前述のように,制度改正のために,正解がない問題となっています。
それでは,解説します。
1 保護司には,一定の刑に処せられた者のほか,成年被後見人又は被保佐人はなれないなどの欠格条項が定められている。
(欠格条項)
第四条 次の各号のいずれかに該当する者は、保護司になることができない。
一 禁錮以上の刑に処せられた者
二 日本国憲法の施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
三 心身の故障のため職務を適正に行うことができない者として法務省令で定めるもの
以前は,成年被後見人又は被保佐人は保護司になることができなかったものが,制度改正により,第四条三項のように変更されています。
2 保護観察官同様に保護司にも,国家公務員法が全面的に適用される。
保護司は,非常勤の国家公務員という位置づけです。
一部は,国家公務員法が適用されますが,全面的に適用されるわけではありません。
例えば,国家公務員は,採用試験を受験しないと採用されない。給与が支払われる。
等々は,保護司には適用されません。
3 保護司の任期は2年であり,対象者との関係が適正に保たれるように,原則として再任はされない。
(任期)
第七条 保護司の任期は、二年とする。但し、再任を妨げない。
4 対象者の福祉的支援を含む補導援護については保護司が担い,遵守事項を守らせるための指導監督は保護観察官が担っている。
保護観察官と保護司の業務分担はありません。
5 更生保護活動への社会的関心の高まりに伴い,ここ数年,全国の保護司定数は毎年増員されている。
保護司定員は,保護司法で52,500人を超えないものとするとされています。
増員どころか,近年では保護司を務める人材が不足し,定員を大きく下回り,48,000人程度が保護司として活躍するにとどまります。
<今日の一言>
保護司の委嘱は,保護観察所の長が推薦した者について,法務大臣が委嘱します。
民生委員の委嘱は,都道府県知事が推薦した者について,厚生労働大臣が委嘱します。
民生委員は,都道府県知事が推薦するのに対して,保護司は保護観察所の長が推薦するというところが異なります。