2020年5月5日火曜日

保護観察官と保護司~その7~保護司の委嘱要件


今回が,保護観察官と保護司の最終回です。

かなり実力がついてきたことでしょう。

保護司は,保護司法に規定されています。

それほどボリュームのある法律ではないので,一度目を通しておくのもよいかもしれません。

保護司は,保護観察所の長の推薦により,法務大臣が委嘱します。

委嘱要件は,以下の通りです。


(推薦及び委嘱)
第三条 保護司は、左の各号に掲げるすべての条件を具備する者のうちから、法務大臣が、委嘱する。
一 人格及び行動について、社会的信望を有すること。
二 職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。
三 生活が安定していること。
四 健康で活動力を有すること。


それでは,今日の問題です。


25回・問題148 保護司に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 保護司に委嘱する条件として社会的信望,時間的余裕,活動力などが挙げられているが,生活の安定については,法律上特に定めは置かれていない。

2 保護司は,地域住民という立場から更生保護に貢献することが求められるので,市町村長の推薦によって都道府県知事がこれを委嘱する。

3 保護観察官で十分でないところを補い,保護観察所長等の指揮監督を受けて,保護観察所等の所掌事務に従事するものとされている。

4 保護観察所から保護観察事件を全面的に付託されて保護観察を実施しており,自らの権限で保護観察の終了や延長等法の執行場面での判断を行っている。

5 保護司は民間人であるので,その職務を行うに当たって知り得た関係者の身上に関する情報の取扱いについては,公務員としての法的責任は課されない。


25回のボーダーラインは,過去最低の72点になりました。

今と違って,問題の文字数が多いですね。

文字数が多いからと言っても,国試の時間は同じなので,その当時受験した人はとても過酷なものだったと思います。

31回以降,また少しずつ長くなってきましたが,第25回から比べると格段に短いです。

今は,おそらく問題の文字数には制限がかけられていると思うので,もうこのように長い問題は作成されないと考えています。

それでは,解説です。



1 保護司に委嘱する条件として社会的信望,時間的余裕,活動力などが挙げられているが,生活の安定については,法律上特に定めは置かれていない。

生活の安定も保護司に委嘱する条件に含まれます。

この選択肢のように,先に要件を挙げて,その後に除外するようなタイプのものは,間違い選択肢をつくるときの常とう手段です。



2 保護司は,地域住民という立場から更生保護に貢献することが求められるので,市町村長の推薦によって都道府県知事がこれを委嘱する。

保護司は,保護観察所の長の推薦によって,法務大臣が委嘱します。

更生保護制度には,都道府県の役割はほとんどありません。



3 保護観察官で十分でないところを補い,保護観察所長等の指揮監督を受けて,保護観察所等の所掌事務に従事するものとされている。

これが正解です。

保護観察所長等の「等」とは,地方更生保護委員会のことです。



4 保護観察所から保護観察事件を全面的に付託されて保護観察を実施しており,自らの権限で保護観察の終了や延長等法の執行場面での判断を行っている。

現場レベルには,権限を持たされることはまずないでしょう。
保護司のみならず,保護観察官もそのような権限はありません。



5 保護司は民間人であるので,その職務を行うに当たって知り得た関係者の身上に関する情報の取扱いについては,公務員としての法的責任は課されない。

保護司は,民間人ですが,身分上は,非常勤の国家公務員です。
守秘義務はもちろん課せられます。


<今日の一言>

25回ほどには,問題文は長くなることはないと思いますが,第31回以降少しずつ長くなっているので,今後も少しは長くなることもあるかもしれません。

その時の注意ポイントです。

長くなれば,文章の言い回しが自由になります。

例えばこのような文章です。

保護司は民間人であるので,その職務を行うに当たって知り得た関係者の身上に関する情報の取扱いについては,公務員としての法的責任は課されない。

この文章では,「民間人であるのに」というところがその部分となります。

それを外してみると

保護司は,その職務を行うに当たって知り得た関係者の身上に関する情報の取扱いについては,公務員としての法的責任は課されない。

となります。

かえって難しくなります。

つまり,長くなれば逆に判別しやすくなることもあるということです。

長くなれば,読むのは大変ですが,逆にチャンスも生まれると言えます。

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