保護観察官は,保護観察所と地方更生保護委員会に配置されています。
保護司は,保護観察官と異なり,どこかの機関に配置されているものではないので,誰の指揮監督を受けるのかが,見えにくいかもしれません。
更生保護法では,以下のように規定されています。
(保護司)
第三十二条 保護司は、保護観察官で十分でないところを補い、地方委員会又は保護観察所の長の指揮監督を受けて、保護司法の定めるところに従い、それぞれ地方委員会又は保護観察所の所掌事務に従事するものとする。
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保護司が指揮監督を受けるのは,地方更生保護委員会,または保護観察所の長です。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題149 保護司に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保護司の職務に,犯罪予防を図るための啓発及び宣伝の活動は含まれない。
2 保護司には給与は支給されないが,職務に要した費用は実費弁償の形で支給される。
3 保護司は,検察官の指揮監督を受けて職務に当たる。
4 保護司は,保護観察対象者の居住先を訪問することは禁じられている。
5 保護司は,「平成30年版犯罪白書」(法務省)によると,40~49歳までの年齢層が最も多く,過半数を超えている。
保護司の近年の動向が含まれているので,これからはそういったものも押さえておかなければないのかもしれません。
それでは解説です。
1 保護司の職務に,犯罪予防を図るための啓発及び宣伝の活動は含まれない。
(職務の遂行)
第八条の二 保護司は、地方更生保護委員会又は保護観察所の長から指定を受けて当該地方更生保護委員会又は保護観察所の所掌に属する事務に従事するほか、保護観察所の長の承認を得た保護司会の計画の定めるところに従い、次に掲げる事務であつて当該保護観察所の所掌に属するものに従事するものとする。
一 犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助け又は犯罪の予防を図るための啓発及び宣伝の活動
二 犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助け又は犯罪の予防を図るための民間団体の活動への協力
三 犯罪の予防に寄与する地方公共団体の施策への協力
四 その他犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生を助け又は犯罪の予防を図ることに資する活動で法務省令で定めるもの
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保護司の活動は幅が広いのです。
2 保護司には給与は支給されないが,職務に要した費用は実費弁償の形で支給される。
またまたの出題です。
(費用の支給)
第十一条 保護司には、給与を支給しない。
2 保護司は、法務省令の定めるところにより、予算の範囲内において、その職務を行うために要する費用の全部又は一部の支給を受けることができる。
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3 保護司は,検察官の指揮監督を受けて職務に当たる。
保護司は,保護観察所の長,または地方更生保護委員会の指揮監督を受けて職務に当たります。
4 保護司は,保護観察対象者の居住先を訪問することは禁じられている。
保護観察の指導監督及び補導援護は,保護観察対象者の呼び出し,あるいは保護観察対象者の居宅に訪問することで実施されます。
これは,一般遵守事項に含まれるので,保護観察対象者は,正当な理由なく,訪問を拒むことはできません。
正当な理由なく,訪問を拒むと,最悪の場合は,不良措置がとられることもあります。
5 保護司は,「平成30年版犯罪白書」(法務省)によると,40~49歳までの年齢層が最も多く,過半数を超えている。
保護司が最も多い年齢層は,65~69歳です。
<今日の一言>
今回までに,保護観察官と保護司に関する問題を6問紹介してきました。
同じような問題の繰り返しですが,まったく同じ内容を繰り返しているわけではありません。
しかし,珍しいことが第32回の問題にあります。
それは,第28回国試と同じ文章の選択肢が正解になっていることです。
第28回
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保護司には給与は支給されないが,職務に要した費用は実費弁償の形で支給されている。
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第32回
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保護司には給与は支給されないが,職務に要した費用は実費弁償の形で支給される。
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試験委員は,過去に出題された問題も参考にして問題をつくると思われるので,同じようなものになるのは,決して珍しくはないことです。
しかし,文章がほぼ一緒というのは,本当に珍しいことです。
そうなった理由の一つには,試験委員が不慣れだったことがあるのではないかと考えています。
第33回国家試験は,何かの理由がない限り,第32回国家試験の試験委員のメンバーはそのまま留任するでしょう。
そうすると,問題づくりに慣れるので,第33回国家試験は,手ごわくなりそうです。