2020年5月6日水曜日

少年司法の整理~検察への送致



これまでも何度か少年司法を取り上げてきましたが,整理していきたいと思います。

まずは,非行少年の類型を確認します。


 非行少年 
犯罪少年
14歳以上で,罪を犯した少年。
触法少年
14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年
虞犯少年
その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞(おそれ)のある少年


この3類型のうち,刑事罰を受けることがあるのは,犯罪少年のみです。


犯罪少年の場合

14歳以上の犯罪を犯した少年は,検察の取り調べを受けて,すべて家庭裁判所に送致されます。

家庭裁判所は,刑事罰が適切だと審判すると,検察に送致します。

検察から家庭裁判所に送致されたものを検察に戻すため,逆送致と呼ばれます。
検察が起訴すると,地方裁判所で裁判を受けることになります。

家庭裁判所が保護処分が適切だと審判した場合の保護処分には,以下の3種類があります。

保護観察処分(1号観察)
児童自立支援施設・児童養護施設送致
少年院送致

このうち,最も重い処分は,少年院送致です。

少年院から仮退院しても,保護観察に付されます。この保護観察の種類は,「2号観察」です。


触法少年と虞犯少年の場合

児童福祉法が優先されるので,送致されるのは,児童相談所です。

都道府県知事あるいは児童相談所長が,保護処分が適切だと判断すると,家庭裁判所に送致されます。

家庭裁判所が審判する保護処分の内容は,犯罪少年と同じです。

それでは今日の問題です。


29回・問題150 非行少年の取扱いに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 触法少年に対して,家庭裁判所は少年院送致の保護処分をすることができる。

2 触法少年に対して,検察官は起訴猶予処分を行うことができる。

3 犯罪少年に対して,警察は児童相談所に送致することができる。

4 少年院在院者に対して,少年院長は仮退院の許可決定を行うことができる。

5 虞犯少年に対して,児童相談所長は検察官に送致することができる。



この問題は,まず非行少年の類型を正しく押さえておくことが大切です。

ポイントは

犯罪少年
刑事罰を受ける可能性がある。
触法少年
刑事罰を受けることはない。
虞犯少年



刑事罰を受ける可能性があるという意味は,検察が起訴する可能性があることを指しています。


触法少年と虞犯少年は,刑事罰を受けることがないので,検察に逆送致されることがありません。


検察に逆送致されることがあるのは,犯罪少年のみです。

この視点で,解説していきます。


1 触法少年に対して,家庭裁判所は少年院送致の保護処分をすることができる。

これが正解です。

家庭裁判所の保護処分
保護観察処分(1号観察)
児童自立支援施設・児童養護施設送致
少年院送致

このうち,最も重い処分は,少年院送致です。

虞犯少年は,犯罪行為を行った者ではありません。それにもかかわらず,少年院に送致されるのは,よっぽど危険な少年なのでしょう。



2 触法少年に対して,検察官は起訴猶予処分を行うことができる。

触法少年は,検察に逆送致されることはありません。
逆送致される可能性があるのは,犯罪少年のみです。



3 犯罪少年に対して,警察は児童相談所に送致することができる。

警察が児童相談所に送致するのは,触法少年あるいは虞犯少年です。
触法少年と虞犯少年の場合は,児童福祉法が優先されるからです。

警察が送致するのは,検察です。

ただし,罰金刑の場合は,検察を経由せず,家庭裁判所に直接送致されます。
ここまで詳しく覚える必要はありません。

単純化して,「警察が送致するのは,検察」で良いです。

検察は,家庭裁判所に送致します。



4 少年院在院者に対して,少年院長は仮退院の許可決定を行うことができる。


仮退院の許可を決定するのは,地方更生保護委員会です。




5 虞犯少年に対して,児童相談所長は検察官に送致することができる。

児童相談所長が送致するのは,家庭裁判所です。

検察に送致されるのは,犯罪少年のみです。
 ただし,その場合であっても,児童相談所はかかわりません。


検察官に送致するのは,警察あるいは家庭裁判所(逆送致)です。




<今日の一言>


検察に送致されるのは,犯罪少年のみ!


非行少年のうち,検察に送致されるのは,犯罪少年のみです。

触法少年と虞犯少年が検察に送致されることはありません。

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