なぜなら,多くの人が手にすると思われる過去問題集には,第29回国試の解説はついていないからです。
つまり,多くの受験生は取り組むことのないものとなります。
1問目は難しい
ここで覚えておきたいのは,1問目は,勉強してこなかった内容が含まれる問題が出題されるされることが多いことです。
それでは,早速今日の問題です。
第29回・問題1 身体の標準的な成長・発達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 器官が形成され始めるのは,受精後24週以降である。
2 体重が出生時の約2倍になるのは,出生後3~4か月である。
3 身長が出生時の約2倍になるのは,2歳前後である。
4 乳歯は,生えそろうと32本になる。
5 リンパ系組織が成長のピークとなるのは,乳幼児期である。
このような問題があると,子育て経験のある人が有利だと思う人もいるかもしれません。
しかし,子育て中は,毎日が必死で,細かいことは覚えていないのが現実です。
この問題は「人体の構造と機能及び疾病」で出題されたものです。
この科目は,実は医療職であっても,簡単には正解できない問題も含まれます。
逆に,勉強しなくても点数が取れる問題もあります。
この問題は,前者です。
それでは解説です。
1 器官が形成され始めるのは,受精後24週以降である。
気管が形成され始めるのは,受精後4週以降です。
2 体重が出生時の約2倍になるのは,出生後3~4か月である。
これが正解です。
自分の子どもが生まれたときの身長,体重は覚えていたとしても,その後の成長は明確に覚えていないのが現実でしょう。
3 身長が出生時の約2倍になるのは,2歳前後である。
身長が出生時の約2倍になるのは,3歳以降です。
4 乳歯は,生えそろうと32本になる。
乳歯は20本,永久歯が32本です。
5 リンパ系組織が成長のピークとなるのは,乳幼児期である。
勉強してきた人が,確実に消去できるのは,おそらくこの選択肢のみでしょう。
スキャモン(スカモン)の発達曲線によれば,免疫にかかわるリンパ系型が最も成長するのは,思春期の頃です。
<今日の一言>
多くの人が手にする過去問は,3~4年分のものです。
これらを完璧に覚えても正解するのに必要な知識にはなりません。
この中で繰り返し出題されるのは,5分の1程度です。
5分の3は,それよりももっと前に出題されたものです。
あとの5分の1が新しい問題です。
今日の問題のベースとなった問題
第22回・問題1 身体の正常な成長・発達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 大泉門は,生後6か月までに自然に閉鎖する。
2 すべての原始反射は,生下から認められ幼児期には消失する。
3 受精後8週目を過ぎると,人としての基本的生理機能を担う器官の形成期に入る。
4 学童期から青年期における顕著な身長の伸びには,成長ホルモンが関与している。
5 脳や感覚器官は,生後から成人まで穏やかなS字カーブを描いて成長する。
第25回・問題1 身体の標準的な成長・発達に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 成人の身長は,出生時の約5倍になる。
2 成人の体重は,出生時の約10倍になる。
3 脳の重量は,4~6歳で成人のおよそ90%を超える。
4 リンパ系の器官は,成人期に最も発達する。
5 生殖器系の器官は,出生時と思春期の2回急激に発育する。
第22回の正解は,選択肢4です。
第25回の正解は,選択肢3です。
これらを解いていても,国試で正解できるかは不安です。
そのため,国試の最初の科目の「人体の構造と機能及び疾病」は,難しくなるのです。
特に1問目は,簡単ではない問題が出題されることが多い傾向にあります。
第32回国試の1問目は比較的難易度が高くはない問題が出題されましたが,例年はそうではない,と考えておいた方がよいと思います。
国試当日は,問題1は正解できなくてもよい,くらいに思う気持ちの余裕が必要です。