今回は,資源の配分における「貢献原則」と「ニーズ原則(必要原則)」を取り上げたいと思います。
貢献原則は,多く貢献した人に多くの資源を配分する原則です。
ニーズ原則(必要原則)は,必要としている人に資源を配分する原則です。
貢献原則は,社会保険,特に厚生年金がその代表です。
多く拠出した(つまり多く貢献した)人は,多く給付されます。
ニーズ原則(必要原則)は,社会扶助,特に公的扶助がその代表です。
拠出せずとも困窮の事実に基づいて(つまりニーズに応じて)給付されます。
どちらが優れていて,どちらが劣っているというものではありません。制度に応じてより適切な配分の方法を考えます。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題25 福祉サービス利用者のニーズに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 政府による資源配分では,ニーズ原則が貫かれている。
2 ニーズの質や水準にかかわりなく,サービスに定額の負担を課すことを,普遍主義という。
3 ニーズ充足の評価には,主観的評価も含まれる。
4 サービス情報が公開されていれば,ニーズが潜在化することはない。
5 その人の主観的な欲求が表現されたもの以外は,ニーズとはみなせない。
内容がわからなくても,正解するのは,それほど難しくない問題かもしれません。
正解は,選択肢3です。
3 ニーズ充足の評価には,主観的評価も含まれる。
主観的評価とは,「満足した」「良かった」というようなものです。
たとえば,身体の清潔が保てないというニーズがある場合,清潔になればそれだけで良いわけでありません。
清潔になっても,乱暴に扱われては良くないですね?
サービスには,どのようにサービスが提供されたのか,というプロセス評価が求められます。
その時の評価軸に「主観的評価」が必要です。
それでは,そのほかの解説です。
1 政府による資源配分では,ニーズ原則が貫かれている。
早速今日のテーマが登場しました。
資源配分には,ニーズ原則(必要原則)のほかに,貢献原則があります。
2 ニーズの質や水準にかかわりなく,サービスに定額の負担を課すことを,普遍主義という。
普遍主義とは,資力調査(ミーンズテスト)を行わずにサービスを提供することをいいます。
普遍主義の対義語は選別主義です。
ニーズの質や水準にかかわりなく,サービスに定額の負担を課すことは,応益負担だと言えます。
応益負担は,サービスを利用するとそれに応じた対価を負担するものです。
応益負担の対義語は応能負担です。応能負担は所得に応じて対価を負担します。
4 サービス情報が公開されていれば,ニーズが潜在化することはない。
サービス情報が公開されていても,サービスがあることが周知されていないとニーズがあることに気がつかないかもしれません。
5 その人の主観的な欲求が表現されたもの以外は,ニーズとはみなせない。
ブラッドショーが論じたニーズでは,その人の主観的な欲求が表現されたものとして,感得されたニードと表出されたニードがあります。
それだけではなく,他者からの視点である「比較ニード」と「規範的ニード」もあります。
「比較ニード」と「規範的ニード」もニードです。