ケイパビリティ・アプローチとは,アマルティア・センが論じたもので,福祉的自由の集合体だと考えるものです。
それでは,今日の問題です。
第23回・問題22 福祉の原理に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)とは,移民に対する社会的排除の是正を求めて,アメリカの公民権運動の中で生まれた福祉政策の理念である。
2 ロールズ(Rawls,J.)の提唱した格差原理によれば,出身家庭の相違による格差は正義として認められないが,本人の能力や努力の結果として生まれる格差は積極的に認められなければならない。
3 エンパワメントとは,パワーの欠如した子どもたちが健全な発達を遂げることを目的として,ヨーロッパの児童福祉の実践の中で生まれた福祉政策の理念である。
4 ノーマライゼーションは,障害をもっていても普通の生活が送れるようにすることを意味し,スウェーデンのニィリエ(Nirje,B.)が提唱した身体障害者の福祉の理念に由来する。
5 セン(Sen,A.)の提唱したケイパビリティ・アプローチによれば,人間の福祉は,どのような財を持っているかではなくて,何をすることができるかという人間の機能の集合によって決まる。
古い問題ですが,今でも十分使える過去問です。
正解は,選択肢5です。
5 セン(Sen,A.)の提唱したケイパビリティ・アプローチによれば,人間の福祉は,どのような財を持っているかではなくて,何をすることができるかという人間の機能の集合によって決まる。
ケイパビリティ・アプローチでは,物があってもそれを使えない場合は,貧困状態であると考えます。
それではそのほかの解説です。
1 社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)とは,移民に対する社会的排除の是正を求めて,アメリカの公民権運動の中で生まれた福祉政策の理念である。
社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)が誕生したのは,1980年代の西ヨーロッパです。
2 ロールズ(Rawls,J.)の提唱した格差原理によれば,出身家庭の相違による格差は正義として認められないが,本人の能力や努力の結果として生まれる格差は積極的に認められなければならない。
ロールズが提唱した格差原理は,,「格差はあっても良いが,その格差は,最も不遇な人を恩恵があるように使われる場合に認められる」と考えるものです。
3 エンパワメントとは,パワーの欠如した子どもたちが健全な発達を遂げることを目的として,ヨーロッパの児童福祉の実践の中で生まれた福祉政策の理念である。
エンパワメントが生まれたのは,ブラジルの児童福祉の実践の中で生まれたものらしいです。
しかし,エンパワメントについて重要なのはそこではなく,アメリカのソロモンが,1970年代にソーシャルワークにエンパワメントの考え方を取り入れたことです。
4 ノーマライゼーションは,障害をもっていても普通の生活が送れるようにすることを意味し,スウェーデンのニィリエ(Nirje,B.)が提唱した身体障害者の福祉の理念に由来する。
ノーマライゼーションは,デンマークのバンク-ミケルセンが,知的障害者の福祉の理念に由来するものです。
スウェーデンのニィリエは,「ノーマライゼーションの8つの原理」を著し,ノーマライゼーションを定義づけた人です。
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