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2025年1月25日土曜日

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義について

  ソーシャルワークの定義は,2000年に採択されたものを用いてきましたが,2014年に新しく,「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」が採択されています。

 

28回国試以降毎年出されています。


旧・定義

ソーシャルワーク専門職は,人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して,社会の変革を進め,人間関係における問題解決を図り,人びとのエンパワーメントと解放を促していく。

ソーシャルワークは,人間の行動と社会システムに関する理論を利用して,人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。

人権と社会正義の原理は,ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。

 

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義

ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。

社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。

ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。

この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。

 

「エンパワメントと解放」は,旧・定義とグローバル定義が共通する部分です。

 

原理は,旧・定義では「人権と社会正義」でしたが,グローバル定義では,それに「集団的責任」と「多様性の尊重」が加わっています。

 

大きく変わっているのは「地域・民族固有の知」を基盤とするところです。

そして,「各国および世界の各地域で展開してもよい」とされました。

 

それでは今日の問題です。

 

29回・問題92 

「ソーシャルワークのグローバル定義」(2014年)におけるソーシャルワークの中核をなす原理として,正しいものを1つ選びなさい。

1 個人的正義

2 集団主義

3 自民族中心主義

4 自己責任

5 多様性尊重 

(注) 「ソーシャルワークのグローバル定義」とは,2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。

 

正解は,選択肢5の「多様性尊重」です。

 

グローバル定義を知らずとも正解できそうな問題です。

まだグローバル定義が浸透していなかったからでしょう。

 

28回・問題92 

2014年の「ソーシャルワークのグローバル定義」に関する次の記述のうち適切なものを1つ選びなさい。

1 ウェルビーイングの増進を目指して,人間関係の問題解決を図ることが新たに加えられた。

2 ソーシャルワークは,専門職であるとともに政策目標であることが明示された。

3 これまで過小評価されてきた地域・民族固有の知を認めるものとなっている。

4 先進国の意見や実情を尊重し,マクロレベルの社会政策と社会開発を重視している。

5 西洋における集団主義重視への懸念が示された。

(注) 「ソーシャルワークのグローバル定義」とは,20147月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。

 

この問題は,グローバル定義が初めて出題された記念すべきものです。

これ以降,続けて出題されています。

 

さて,正解です。

 

3 これまで過小評価されてきた地域・民族固有の知を認めるものとなっている。

 

グローバル定義を一度でも目にした人なら,「地域・民族固有の知」はとてもインパクトがあって,印象に残るものでしょう。

 

さすが初めての出題だなぁ,と思います。実に受験生にやさしいものを正解にしたと思います。

 

皆さんもそう思いませんか?

 

それでは,ほかの選択肢も確認しましょう。

 

1 ウェルビーイングの増進を目指して,人間関係の問題解決を図ることが新たに加えられた。

 

ウェルビーイングの増進を目指して,人間関係の問題解決を図ることは,旧・定義にあったものです。

 

2 ソーシャルワークは,専門職であるとともに政策目標であることが明示された。

 

ソーシャルワークは専門職であるとは明記されていますが,政策目標ということばは使われていません。

 

4 先進国の意見や実情を尊重し,マクロレベルの社会政策と社会開発を重視している。

 

マクロレベルの社会政策と社会開発を重視していることは適切ですが,先進国ではなく,開発途上国の意見が重視されたものです。

 

開発途上国でクライエントの権利擁護を行おうと思うと,社会が変わること自体が必要なことが多いのです。

 

5 西洋における集団主義重視への懸念が示された。

 

懸念が示されたのは,西洋における個人主義への偏重です。

 

これは,ソーシャルワークが欧米生まれであることに関係しています。特にCOSの活動を通して発展したケースワーク(個別援助技術)は,リッチモンドの功績によって科学化されていきますが,今はSDGsの時代です。

ソーシャルワークも地球規模の広い視点が必要だということなのでしょう。

ソーシャルワークは,誇り高いものです。


30回・問題92 

「ソーシャルワークのグローバル定義」(2014年)におけるソーシャルワーク専門職の中核となる任務として,正しいものを1つ選びなさい。

1 人々のエバリュエーション

2 技術開発の促進

3 自民族中心主義の促進

4 自己変革の促進

5 人々のエンパワメントと解放

(注) 「ソーシャルワークのグローバル定義」とは,2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。

 

グローバル定義は,暗唱できるくらいには覚えておきたいです。


ソーシャルワーク専門職の中核となる任務

 

社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する

 

ということで,正解は,

 

5 人々のエンパワメントと解放

 

ということになります。


2024年10月24日木曜日

倫理的ジレンマの事例問題(2)

 

倫理的ジレンマは,2つの状況の中で板挟みになることです。


2つの状況が示され,その組み合わせによって答えを探すことができますが,正解を2つ選ぶタイプでも出題されます。


今日の問題は,オーソドックスである2つの状況の組み合わせです。


精神保健福祉士

第22回・問題21

U精神科病院に勤めるA精神保健福祉士は,担当患者のBさんへの支援が思うように展開できないでいた。Bさんは,障害年金と親の多額の遺産金で暮らしているが,「お金がない。生活保護を受けられないか」と何度も訴えていた。A精神保健福祉士は,Bさんが他の患者にお金を貸したり,欲しいものをすぐに買ったりして無駄遣いをしているのに生活保護を受けたいと主張することを好ましく思っていなかった。そのため,どうしてBさんが同じ主張を繰り返すのかについて,その背景に何かあるかもしれないということは気になっていたが,いつも一方的な態度をとるBさんを受け入れられず,「遺産金があるので,生活保護を申請することは難しい」と繰り返し説明していた。

 次のうち,A精神保健福祉士が抱く倫理的ジレンマとして,適切なものを1つ選びなさい。

1 自己決定とパターナリズム

2 専門職的価値と個人的価値

3 バウンダリーとクライエントの利益

4 クライエントの利益と所属機関の利益

5 秘密保持とプライバシー


5つの選択肢の内容は,第19回の問題と全く同じです。


どうしてBさんが同じ主張を繰り返すのかについて,その背景に何かあるかもしれないということは気になっていた。


いつも一方的な態度をとるBさんを受け入れられず,「遺産金があるので,生活保護を申請することは難しい」と繰り返し説明していた。


この2つによって,A精神保健福祉士は揺れ動いています。


どうしてBさんが同じ主張を繰り返すのかについて,その背景に何かあるかもしれないということは気になっていた。


 → ソーシャルワーカーとして専門的なアセスメントが必要な場面です。これは専門職的価値だと言えるでしょう。


いつも一方的な態度をとるBさんを受け入れられず,「遺産金があるので,生活保護を申請することは難しい」と繰り返し説明していた。


 → 「受け入れられない」というのは,ケースワークの原則に「非審判的態度」に反する「審判的態度」となっています。つまり,個人的価値だと言えます。


正解は,選択肢2です。


2 専門職的価値と個人的価値


またまたバウンダリーが出題されています。


バウンダリー(boundary)は,「境界」を意味し,心理学では,自分と他人の境界線を意味しています。


バウンダリーがあいまいになると,


NOと言わなければならない場面でNOと言えない。

YESと言わなければならない場面でYESと言えない

私が思っていることは相手も同じことを思っている

自分の価値観を相手に押し付ける


など,人間関係や対人援助に弊害を生じます。


バウンダリーを明確にすることは簡単なことではありませんが,対人援助職としては大切なことでしょう。


今のところ,バウンダリーはまだ正解になったことはありませんが,注意すべきダークホース的な用語です。


それでは,正解以外を解説します。


1 自己決定とパターナリズム


〈例〉

クライエントは「デイケアに行きたくない」と考えているのに対して,ソーシャルワーカーは「デイケアに行かないと生活が乱れる」と考えている。


3 バウンダリーとクライエントの利益


〈例〉

クライエントの強い態度に威圧され,クライエントの言いなりになってしまう。しかし,それはクライエントにとって本当は良いことではない。



4 クライエントの利益と所属機関の利益


〈例〉

クライエントは入院継続を望んでいるのに対して,病院は診療報酬の面から早期退院を望んでいる。


5 秘密保持とプライバシー


秘密保持とプライバシーは,同じベクトルなので,倫理的ジレンマを生じることはありません。


倫理的ジレンマを生じるとすると・・・


クライエントから「誰にも言わないで」と言われて,プライバシーに関係する話を聞く場合です。


その話の内容に,生命の危機に関係する場合は,関係機関と連携しなければなりません。


そのために,クライエントに「誰にも言わないで」と言われたら,「ここで聞いた話は,〇〇さんの許可がない限り,誰にも話しません」と秘密保持を保証したうえで,「ただし,〇〇さんを含めて生命に危険があるような場合は,関係機関に連絡させていだたくことがあります」と明確に示すことが必要です。


そのために,倫理的ジレンマを生じることになります。


この背景には,タラソフ事件があります。


アメリカで起きたこの事件は,精神科医が患者から「タラソフを殺すつもりだ」という話を聞いて,通報したものの釈放されて,その後に本当に殺人事件が発生してしまったものです。


この事件は秘密保持義務と生命の安全を考える場合に,よく引き合いに出される事件です。


守秘義務を理由に患者が殺すつもりだと宣言したタラソフさんに警告を促さなかったことで発生した事件です。


このようなことは,下手をすれば刑事的責任を問われることにもなりかねません。

2024年10月23日水曜日

倫理的ジレンマの事例問題(1)

 

今回から数回にわたって,倫理的ジレンマの事例問題を解いてみたいと思います。


それでは,前説なしに今日の問題です。


精神保健福祉士

第19回・問題21

精神科病院を退院したAさんは,次第に昼夜逆転した生活となり,バランスの取れた食事もできていない状況にあった。精神科病院のB精神保健福祉士は,受診時にAさんと相談室で面接を行い,生活のリズムを整えることがAさんのために必要だと考え,デイケアの利用を勧めた。しかし,Aさんは,「デイケアには行きたくない。自分は退院しているし,やりたいことがある」と語った。B精神保健福祉士はAさんの思いを聞きつつも,Aさんの生活に不安を感じ,これからどのように関わっていけばよいか悩んだ。

 次のうち,B精神保健福祉士が抱く倫理的ジレンマとして,適切なものを1つ選びなさい。

1 クライエントの利益と所属機関の利益

2 秘密保持とプライバシー

3 自己決定とパターナリズム

4 バウンダリーとクライエントの利益

5 専門職的価値と個人的価値


倫理的ジレンマは,このようなスタイルで出題されます。


しっかり考えないと正解できません。


この事例の場合のポイント


Aさんは,「デイケアには行きたくない。自分は退院しているし,やりたいことがある」と語った。


B精神保健福祉士はAさんの思いを聞きつつも,Aさんの生活に不安を感じ,これからどのように関わっていけばよいか悩んだ。


正解は,選択肢3です。


自己決定によれば,デイケアには行かないということになります。しかし,B精神保健福祉士は,それでは生活に不安を感じています。


パターナリズムは,専門的立場でこのようにした方が良い,と考えることです。自己覚知ができていないと知らず知らずにパターナリズム的なかかわりになりがちなので注意が必要です。


なお,バウンダリーとは,自分と人の境界線のことをいいます。


バウンダリーがあいまいになると,こうしてくれるだろうといったように,人に過剰な期待を寄せてしまうので,これも注意が必要です。

2024年10月22日火曜日

精神保健福祉士と医師の関係

 

今回は,精神保健福祉士と医師の関係を学びます。

 

精神保健福祉士は,その業務を行うに当たって精神障害者に主治の医師があるときは,その指導を受けなければならない。

 

この規定は,社会福祉士にはありません。

 

社会福祉士と医師との関係は,連携です。

 

社会福祉士は,その業務を行うに当たつては,その担当する者に,福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービスが総合的かつ適切に提供されるよう,地域に即した創意と工夫を行いつつ,福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。

 

※福祉サービス関係者等

医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者

 

それでは今日の問題です。

 

精神保健福祉士

16回・問題23

福祉専門職の国家資格に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 精神保健福祉士と社会福祉士は,基盤となるソーシャルワークの理念,倫理,価値において異なる。

2 精神保健福祉士,社会福祉士,介護福祉士は,それぞれが福祉の相談援助専門職として異なる法律によって規定された国家資格である。

3 社会福祉士は,身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者を相談援助の対象としている。

4 社会福祉士は,精神保健福祉士と同様に,対象者に主治医がいる場合には,その指導を受けると規定されている。

5 社会福祉士は,精神保健福祉士と同様に,日常生活への適応のために必要な訓練を行う,リハビリテーションの専門職としても位置づけられている。

 

社会福祉士と精神保健福祉士を並べて出題したものです。

今後は,こういった出題が多くなるのではないかと思います。

 

それでは,解説です。

 

1 精神保健福祉士と社会福祉士は,基盤となるソーシャルワークの理念,倫理,価値において異なる。

 

社会福祉士と精神保健福祉士の基盤は,共通です。

 

いずれもソーシャルワーカーだからです。

 

バートレットの「ソーシャルワーク実践の共通基盤」もありますし,ソーシャルワーク専門職のグローバル定義もあります。

 

2 精神保健福祉士,社会福祉士,介護福祉士は,それぞれが福祉の相談援助専門職として異なる法律によって規定された国家資格である。

 

社会福祉士と介護福祉士は,同じ法律「社会福祉士及び介護福祉士法」が根拠法です。

 

3 社会福祉士は,身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者を相談援助の対象としている。

 

これが正解です。

 

社会福祉士の定義

社会福祉士の名称を用いて,専門的知識及び技術をもつて,身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ,助言,指導,福祉サービスを提供する者又は福祉サービス関係者等との連絡及び調整その他の援助を行うことを業とする者をいう。

 

4 社会福祉士は,精神保健福祉士と同様に,対象者に主治医がいる場合には,その指導を受けると規定されている。

 

ようやく今日のテーマの登場です。

 

この規定があるのは,精神保健福祉士です。

 

社会福祉士にはこの規定はありません。医師との関係は,連携です。

 

 

5 社会福祉士は,精神保健福祉士と同様に,日常生活への適応のために必要な訓練を行う,リハビリテーションの専門職としても位置づけられている。

 

精神保健福祉士の定義

精神保健福祉士の名称を用いて,精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって,精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け,若しくは精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の地域相談支援の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談又は精神障害者及び精神保健に関する課題を抱える者の精神保健に関する相談に応じ,助言,指導,日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うことを業とする者をいう。


精神保健福祉士は,日常生活への適応のために必要な訓練を行います。

 

しかし,社会福祉士は,リハビリテーション専門職ではありません。

2024年10月21日月曜日

精神保健福祉士法の改正

 

精神保健福祉士法は,2010年に改正され,義務等が変わっています。

 

この時に加わったのは,「資質向上の責務」と「誠実義務」です。

 

これを聞いて,「あれっ」と思った人もいるでしょう。

 

社会福祉士及び介護福祉士法の2007年改正でも,同じようにこれらが加わっています。

 

つまり,先に社会福祉士及び介護福祉士法が改正されて,そのあとに精神保健福祉士法が同じように改正されたということです。

 

どちらも義務等は,共通しているので覚えやすいと思います。

 

義務等

・誠実義務

・信用失墜行為の禁止

・秘密保持義務

・連携等

・資質向上の責務

 

赤字の部分が,改正によって加わったものです。

 

それでは,今日の問題です。

 

精神保健福祉士

25回・問題21

次のうち,2010年(平成22年)の精神保健福祉法改正で精神保健福祉士の義務等に,新たに設けられたものとして,正しいものを2つ選びなさい。

1 信用失墜行為の禁止

2 資質向上の責務

3 名称の使用制限

4 秘密保持義務

5 誠実義務

 

正解はすぐわかると思います

 

前説のとおり,正解は,選択肢2と5です。

 

2 資質向上の責務

5 誠実義務

 

 

1 信用失墜行為の禁止

3 名称の使用制限

4 秘密保持義務

 

これらは,法の成立時から規定されているものです。

 

〈今日の一言〉

 

ソーシャルワークの基盤と専門職は,精神保健福祉士との共通科目です。

 

精神保健福祉士法は,旧カリ時代の出題基準にも含まれていましたが,出題されたことはありませんでした。

 

しかし,新カリで共通科目になったことで,精神保健福祉士法は高い確率で出題されるようになるでしょう。

2024年10月20日日曜日

社会福祉士と精神保健福祉士

 

社会福祉士と精神保健福祉士は,それぞれ別の法律に基づいた国家資格ですが,義務等は共通です。

 

義務等

・誠実義務

・信用失墜行為の禁止

・秘密保持義務

・連携等

・資質向上の責務

 

それでは,今日の問題です。

 

34回・問題91

社会福祉士及び介護福祉士法における社会福祉士と,精神保健福祉士法における精神保健福祉士に関する次の記述のうち,これらの法律に明記されている共通する責務として,正しいものを1つ選びなさい。

1 集団的責任の保持

2 権利擁護の促進

3 多様性の尊重

4 資質向上

5 倫理綱領の遵守

 

この問題が出題されたとき,精神保健福祉士法を知らないので困ったと思う人もいたと思います。

 

しかし,社会福祉士及び介護福祉士法を知っていれば,正解できる問題です。

 

まずは,社会福祉士の義務等を考えると良いからです。

 

正解は,選択肢4です。

4 資質向上

 

資質向上の責務は,両資格の根拠法に規定されています。


社会福祉士

社会福祉を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため,相談援助等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。


精神保健福祉士

精神保健及び精神障害者の福祉を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため,相談援助に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

 

1 集団的責任の保持

3 多様性の尊重

 

この2つは,ソーシャルワーク専門職のグローバル定義に書かれているものです。

2024年10月19日土曜日

精神保健福祉士法

 

今回は,精神保健福祉士法です。

 

精神保健福祉士の定義

精神保健福祉士の名称を用いて,精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって,精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け,若しくは精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の地域相談支援の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談又は精神障害者及び精神保健に関する課題を抱える者の精神保健に関する相談に応じ,助言,指導,日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うことを業とする者をいう。

 

この中の「又は精神障害者及び精神保健に関する課題を抱える者の精神保健に関する相談」の部分は,2024年4月に加わったものです。

 

それでは,今日の問題です。


精神保健福祉士

26回・問題37

次のうち,2022年(令和4年)の精神保健福祉士法改正により,新たに規定された精神保健福祉士の業として,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会復帰に関する相談

2 地域相談支援の利用に関する相談

3 精神保健に関する課題を抱える者の精神保健に関する相談

4 医師その他の保健医療サービスを提供する者との連絡及び調整

5 応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るための作業活動

 

「ソーシャルワークの基盤と専門職」は共通科目なので,社会福祉士を受験する人も精神保健福祉士法は学ぶ必要があります。


選択肢3が正解です。

3 精神保健に関する課題を抱える者の精神保健に関する相談

2024年10月18日金曜日

ソーシャルワークの統合化

 ソーシャルワークの統合化とは,ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワーク,それぞれ発展してきたものを統合することをいいます。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題94 

アメリカにおけるソーシャルワークの統合化に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 統合化の背景には,専門分化されたソーシャルワーク実践が多様化する社会問題に対応できていたことがある。

2 統合化とは,ケースマネジメントとカウンセリングに共通する新しい知識や方法を明らかにする動きのことである。

3 ミルフォード会議の報告書(1929年)において,「ソーシャルケースワーク」という概念が初めて示され,統合化への先駆けとなった。

4 ジェネラリスト・アプローチは,ソーシャルワークの統合化の一形態である。

5 精神分析学は,ソーシャルワークの統合化に大きな影響を与えた。


かなりの難問です。

知識不足の人は,跳ね飛ばされそうな問題だと思います。


それでは,解説です。


1 統合化の背景には,専門分化されたソーシャルワーク実践が多様化する社会問題に対応できていたことがある。


これは文章的にも変な問題です。


専門分化したものが社会問題に対応できなかったために,統合化が図られていきます。


その時代には,マイルスが「リッチモンドに返れ」,パールマンが「ケースワークが死んだ」と述べています。


これらを思い出すことができれば,消去できるでしょう。


2 統合化とは,ケースマネジメントとカウンセリングに共通する新しい知識や方法を明らかにする動きのことである。


統合化は,前説に書いたように,ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワーク,それぞれ発展したきたものを統合することです。


3 ミルフォード会議の報告書(1929年)において,「ソーシャルケースワーク」という概念が初めて示され,統合化への先駆けとなった。


ソーシャルケースワークという概念は,リッチモンドが『ソーシャル・ケース・ワークとは何か』を1922年に既に出版しています。


ミルフォード会議報告書で初めて示された概念は「ジェネリック」です。


「ジェネリック」は,「スペシフィック」の対義語で,「一般的」「共通的」という意味をもちます。


4 ジェネラリスト・アプローチは,ソーシャルワークの統合化の一形態である。


これが正解です。


ジェネラリストは,スペシャリストの対義語で,「万能的」という意味を持ちます。


つまり,ジェネラリスト・アプローチは,さまざまな問題に対処できるアプローチ法ということになります。


今日の複雑化した社会的問題の解説には欠かせないアプローチ法だと言えるでしょう。


5 精神分析学は,ソーシャルワークの統合化に大きな影響を与えた。


精神分析学が影響を与えたのは,「診断主義ケースワーク」です。診断主義ケースワークは,今日は,心理社会的アプローチとして発展しています。

2024年10月17日木曜日

社会福祉士の登録について

 

社会福祉士は,社会福祉士登録簿に,氏名,生年月日その他厚生労働省令で定める事項の登録をすることで,社会福祉士になることができます。

 

これまでは,郵送によって登録申請していましたが,マイナンバー法の改正によって,オンライン申請が可能となりました。

 

https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/f5541d61-9839-408d-babb-bd40c8dead71/2a1ef6ea/20240802_policies_government-certification_outline_03.pdf

 

これでわかるように,社会福祉士は,介護福祉士,精神保健福祉士,公認心理師とともにトップを切って,変更申請などができるようになりました。

 

37回国家試験の合格者から,いよいよ新規もオンライン申請が行えるようになります。

 

そういった意味で,今年度の国家試験は,歴史の転換点になるものです。

 

デジタル登録証をゲットしましょう。

 

それでは,今日の問題です。

 

29回・問題-91

社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている社会福祉士に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会福祉士の名称使用は,登録後でなければならない。

2 業務を行うに当たっては,クライエントの主治医の指導を受けなければならない。

3 専門性の維持・向上を目的として,資格更新研修を受けなければならない。

4 所属する勤務先の立場を優先して業務を行わなければならない。

5 資質向上の責務として,相談援助に関わる後継者の教育指導に努めなければならない。

 

社会福祉士を目指しているのですから,社会福祉士及び介護福祉士法に関する問題は確実に正解したいです。

 

それでは,解説です。

 

1 社会福祉士の名称使用は,登録後でなければならない。

 

合格するだけではなく,社会福祉士登録簿に登録することで,社会福祉士になります。

ということで,これが正解です。

 

2 業務を行うに当たっては,クライエントの主治医の指導を受けなければならない。

 

クライエントの主治医の指導を受けなければならないのは,精神保健福祉士です。

 

社会福祉士と主治医との関係は,連携及び調整その他です。

 

3 専門性の維持・向上を目的として,資格更新研修を受けなければならない。

 

更新制はありません。

 

4 所属する勤務先の立場を優先して業務を行わなければならない。

 

これを選んだ人は,合格基準点を超えていても不合格にしても良いような問題だと思います。

 

医師の国家試験にはそういった問題があるそうです。

 

5 資質向上の責務として,相談援助に関わる後継者の教育指導に努めなければならない。

 

資質向上の責務

社会福祉士又は介護福祉士は,社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため,相談援助又は介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

 

後継者の教育指導も必要ですが,法にはそのような規定はありません。

2024年10月16日水曜日

ソーシャルワークの中核をなす原理

 

今回は,ソーシャルワーク専門職のグローバル定義を学びたいと思います。

 

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義

ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。

社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。

ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。

この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。

 

ソーシャルワークの中核をなす原理 

・社会正義

・人権

・集団的責任

・多様性尊重

 

 

それでは,今日の問題です。

 

29回・問題92

「ソーシャルワークのグローバル定義」(2014年)におけるソーシャルワークの中核をなす原理として,正しいものを1つ選びなさい。

1 個人的正義

2 集団主義

3 自民族中心主義

4 自己責任

5 多様性尊重 

(注) 「ソーシャルワークのグローバル定義」とは,2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。

 

この時は,ソーシャルワーク専門職のグローバル定義とは出題されていません。

 

グローバル定義が初めて出題されたのは第28回です。それから毎回出題されてきました。「専門職」が加わったのは,第33回からです。

 

さて,正解は,選択肢5です。

 

5 多様性尊重 

 

ほかは解説しません。

2024年10月15日火曜日

欧米と日本のセツルメント活動

 

今回は,欧米のセツルメント活動を学びます。

 

イギリス

トインビーホール

世界で最初のセツルメント。

創設者は,バーネット夫妻。

アメリカ

ネイバーフッド・ギルド

アメリカ最初のセツルメント。

創設者は,コイツ。

ハル・ハウス

世界で最も有名なセツルメント。

創設者は,J.アダムス。

日本

岡山博愛会

創設者は,A.アダムス。

キングスレー館

創設者は,片山潜。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題94

19世紀末から20世紀初頭のセツルメント活動に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 バーネット(Barnett,S.)が創設したトインビーホールは,イギリスにおけるセツルメント活動の拠点となった。

2 コイト(Colt,S.)が創設したハル・ハウスは,アメリカにおけるセツルメント活動に大きな影響を及ぼした。

3 石井十次が創設した東京神田のキングスレー館は,日本におけるセツルメント活動の萌芽となった。

4 アダムス(Addams,J.)が創設したネイバーフッド・ギルドは,アメリカにおける最初のセツルメントであった。

5 片山潜が創設した岡山孤児院は,日本におけるセツルメント活動に大きな影響を及ぼした。

 

とてもシンプルな問題です。

 

それでは,解説です。

 

1 バーネット(Barnett,S.)が創設したトインビーホールは,イギリスにおけるセツルメント活動の拠点となった。

 

これが正解です。

 

バーネット夫妻は,ロンドンでトインビーホールを創設しました。

 

2 コイト(Colt,S.)が創設したハル・ハウスは,アメリカにおけるセツルメント活動に大きな影響を及ぼした。

 

コイトは,ネイバーフッド・ギルドを創設しました。

 

3 石井十次が創設した東京神田のキングスレー館は,日本におけるセツルメント活動の萌芽となった。

 

石井十次は,孤児院である岡山孤児院を創設しました。

 

 

4 アダムス(Addams,J.)が創設したネイバーフッド・ギルドは,アメリカにおける最初のセツルメントであった。

 

J.アダムスは,ハル・ハウスを創設しました。

 

5 片山潜が創設した岡山孤児院は,日本におけるセツルメント活動に大きな影響を及ぼした。

 

片山潜は,キングスレー館を創設しました。

2024年10月14日月曜日

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義

 

今回は,「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」を学びます。

 

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義 

ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。

 

社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。

 

ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知*1を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。

 

この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。

 

注釈

注釈は,定義に用いられる中核概念を説明し,ソーシャルワーク専門職の中核となる任務・原則・知・実践について詳述するものである。


中核となる任務

ソーシャルワーク専門職の中核となる任務には,社会変革・社会開発・社会的結束の促進,および人々のエンパワメントと解放がある。

ソーシャルワークは,相互に結び付いた歴史的・社会経済的・文化的・空間的・政治的・個人的要素が人々のウェルビーイングと発展にとってチャンスにも障壁にもなることを認識している,実践に基づいた専門職であり学問である。構造的障壁は,不平等・差別・搾取・抑圧の永続につながる。人種・階級・言語・宗教・ジェンダー・障害・文化・性的指向などに基づく抑圧や,特権の構造的原因の探求を通して批判的意識を養うこと,そして構造的・個人的障壁の問題に取り組む行動戦略を立てることは,人々のエンパワメントと解放をめざす実践の中核をなす。不利な立場にある人々と連帯しつつ,この専門職は,貧困を軽減し,脆弱で抑圧された人々を解放し,社会的包摂と社会的結束を促進すべく努力する。

*1 「地域・民族固有の知(indigenous knowledge)」とは,世界各地に根ざし,人々が集団レベルで長期間受け継いできた知を指している。中でも,本文注釈の「知」の節を見ればわかるように,いわゆる「先住民」の知が特に重視されている。

*2 この文の後半部分は,英語と日本語の言語的構造の違いから,簡潔で適切な訳出が非常に困難である。本文注釈の「実践」の節で,ここは人々の参加や主体性を重視する姿勢を表現していると説明がある。これを加味すると,「ソーシャルワークは,人々が主体的に生活課題に取り組みウェルビーイングを高められるよう人々に関わるとともに,ウェルビーイングを高めるための変革に向けて人々とともにさまざまな構造に働きかける」という意味合いで理解すべきであろう。

*3 今回,各国および世界の各地域(IFSW/IASSWは,世界をアジア太平洋,アフリカ,北アメリカ,南アメリカ,ヨーロッパという5つの地域=リージョンに分けている)は,このグローバル定義を基に,それに反しない範囲で,それぞれの置かれた社会的・政治的・文化的状況に応じた独自の定義を作ることができることとなった。これによって,ソーシャルワークの定義は,グローバル(世界)・リージョナル(地域)・ナショナル(国)という3つのレベルをもつ重層的なものとなる。

 

社会変革の任務は,個人・家族・小集団・共同体・社会のどのレベルであれ,現状が変革と開発を必要とするとみなされる時,ソーシャルワークが介入することを前提としている。それは,周縁化・社会的排除・抑圧の原因となる構造的条件に挑戦し変革する必要によって突き動かされる。社会変革のイニシアチブは,人権および経済的・環境的・社会的正義の増進において人々の主体性が果たす役割を認識する。また,ソーシャルワーク専門職は,それがいかなる特定の集団の周縁化・排除・抑圧にも利用されない限りにおいて,社会的安定の維持にも等しく関与する。

社会開発という概念は,介入のための戦略,最終的にめざす状態,および(通常の残余的および制度的枠組に加えて)政策的枠組などを意味する。それは,(持続可能な発展をめざし,ミクロ-マクロの区分を超えて,複数のシステムレベルおよびセクター間・専門職間の協働を統合するような)全体的,生物―心理―社会的,およびスピリチュアルなアセスメントと介入に基づいている。それは社会構造的かつ経済的な開発に優先権を与えるものであり,経済成長こそが社会開発の前提条件であるという従来の考え方には賛同しない。


原則

ソーシャルワークの大原則は,人間の内在的価値と尊厳の尊重,危害を加えないこと,多様性の尊重,人権と社会正義の支持である。

人権と社会正義を擁護し支持することは,ソーシャルワークを動機づけ,正当化するものである。ソーシャルワーク専門職は,人権と集団的責任の共存が必要であることを認識する。集団的責任という考えは,一つには,人々がお互い同士,そして環境に対して責任をもつ限りにおいて,はじめて個人の権利が日常レベルで実現されるという現実,もう一つには,共同体の中で互恵的な関係を確立することの重要性を強調する。したがって,ソーシャルワークの主な焦点は,あらゆるレベルにおいて人々の権利を主張すること,および,人々が互いのウェルビーイングに責任をもち,人と人の間,そして人々と環境の間の相互依存を認識し尊重するように促すことにある。

ソーシャルワークは,第一・第二・第三世代の権利を尊重する。第一世代の権利とは,言論や良心の自由,拷問や恣意的拘束からの自由など,市民的・政治的権利を指す。第二世代の権利とは,合理的なレベルの教育・保健医療・住居・少数言語の権利など,社会経済的・文化的権利を指す。第三世代の権利は自然界,生物多様性や世代間平等の権利に焦点を当てる。これらの権利は,互いに補強し依存しあうものであり,個人の権利と集団的権利の両方を含んでいる。

「危害を加えないこと」と「多様性の尊重」は,状況によっては,対立し,競合する価値観となることがある。たとえば,女性や同性愛者などのマイノリティの権利(生存権さえも)が文化の名において侵害される場合などである。『ソーシャルワークの教育・養成に関する世界基準』は,ソーシャルワーカーの教育は基本的人権アプローチに基づくべきと主張することによって,この複雑な問題に対処しようとしている。そこには以下の注が付されている。

文化的信念,価値,および伝統が人々の基本的人権を侵害するところでは,そのようなアプローチ(基本的人権アプローチ)が建設的な対決と変化を促すかもしれない。そもそも文化とは社会的に構成されるダイナミックなものであり,解体され変化しうるものである。そのような建設的な対決,解体,および変化は,特定の文化的価値・信念・伝統を深く理解した上で,人権という(特定の文化よりも)広範な問題に関して,その文化的集団のメンバーと批判的で思慮深い対話を行うことを通して促進されうる。


ソーシャルワークは,複数の学問分野をまたぎ,その境界を超えていくものであり,広範な科学的諸理論および研究を利用する。ここでは,「科学」を「知」というそのもっとも基本的な意味で理解したい。ソーシャルワークは,常に発展し続ける自らの理論的基盤および研究はもちろん,コミュニティ開発・全人的教育学・行政学・人類学・生態学・経済学・教育学・運営管理学・看護学・精神医学・心理学・保健学・社会学など,他の人間諸科学の理論をも利用する。ソーシャルワークの研究と理論の独自性は,その応用性と解放志向性にある。多くのソーシャルワーク研究と理論は,サービス利用者との双方向性のある対話的過程を通して共同で作り上げられてきたものであり,それゆえに特定の実践環境に特徴づけられる。

この定義は,ソーシャルワークは特定の実践環境や西洋の諸理論だけでなく,先住民を含めた地域・民族固有の知にも拠っていることを認識している。植民地主義の結果,西洋の理論や知識のみが評価され,地域・民族固有の知は,西洋の理論や知識によって過小評価され,軽視され,支配された。この定義は,世界のどの地域・国・区域の先住民たちも,その独自の価値観および知を作り出し,それらを伝達する様式によって,科学に対して計り知れない貢献をしてきたことを認めるとともに,そうすることによって西洋の支配の過程を止め,反転させようとする。ソーシャルワークは,世界中の先住民たちの声に耳を傾け学ぶことによって,西洋の歴史的な科学的植民地主義と覇権を是正しようとする。こうして,ソーシャルワークの知は,先住民の人々と共同で作り出され,ローカルにも国際的にも,より適切に実践されることになるだろう。国連の資料に拠りつつ,IFSWは先住民を以下のように定義している。

 

地理的に明確な先祖伝来の領域に居住している(あるいはその土地への愛着を維持している)。

自らの領域において,明確な社会的・経済的・政治的制度を維持する傾向がある。

彼らは通常,その国の社会に完全に同化するよりも,文化的・地理的・制度的に独自であり続けることを望む。

先住民あるいは部族というアイデンティティをもつ。


実践

ソーシャルワークの正統性と任務は,人々がその環境と相互作用する接点への介入にある。環境は,人々の生活に深い影響を及ぼすものであり,人々がその中にある様々な社会システムおよび自然的・地理的環境を含んでいる。ソーシャルワークの参加重視の方法論は,「生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける」という部分に表現されている。ソーシャルワークは,できる限り,「人々のために」ではなく,「人々とともに」働くという考え方をとる。社会開発パラダイムにしたがって,ソーシャルワーカーは,システムの維持あるいは変革に向けて,さまざまなシステムレベルで一連のスキル・テクニック・戦略・原則・活動を活用する。ソーシャルワークの実践は,さまざまな形のセラピーやカウンセリング・グループワーク・コミュニティワーク,政策立案や分析,アドボカシーや政治的介入など,広範囲に及ぶ。この定義が支持する解放促進的視角からして,ソーシャルワークの戦略は,抑圧的な権力や不正義の構造的原因と対決しそれに挑戦するために,人々の希望・自尊心・創造的力を増大させることをめざすものであり,それゆえ,介入のミクロ-マクロ的,個人的-政治的次元を一貫性のある全体に統合することができる。ソーシャルワークが全体性を指向する性質は普遍的である。しかしその一方で,ソーシャルワークの実践が実際上何を優先するかは,国や時代により,歴史的・文化的・政治的・社会経済的条件により,多様である。

この定義に表現された価値や原則を守り,高め,実現することは,世界中のソーシャルワーカーの責任である。ソーシャルワーカーたちがその価値やビジョンに積極的に関与することによってのみ,ソーシャルワークの定義は意味をもつのである。

 

グローバル定義は,その注釈からも出題されるところが辛いところです。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題92

次のうち,「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年)が「ソーシャルワークの定義」(2000年)と比べて変化した内容として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 人間関係における問題解決を図ることが加えられた。

2 中核をなす原理として,社会の不変性の尊重が容認された。

3 実践の基盤として,社会システムに関する理論の導入が加えられた。

4 定義は,各国及び世界の各地域で展開することが容認された。

5 人々が環境と相互に影響し合う接点に介入することが加えられた。

(注)1 「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」とは,2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。

2 「ソーシャルワークの定義」とは,2000年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)で採択されたものを指す。

 

この問題は,ラッキーなことにグローバル定義そのものの知識で正解できるものでした。

 

正解は,選択肢4です。

4 定義は,各国及び世界の各地域で展開することが容認された。

 

この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい,とされたのは,注釈の「知」にあるように,西洋の理論や知識のみが評価されてきたという歴史があったためです。

 

それ以外のものも一応解説します。

 

1 人間関係における問題解決を図ることが加えられた。

3 実践の基盤として,社会システムに関する理論の導入が加えられた。

5 人々が環境と相互に影響し合う接点に介入することが加えられた。

 

これらは,2000年の旧定義にあったものです。

 

旧定義

ソーシャルワーク専門職は,人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して,社会の変革を進め,人間関係における問題解決を図り,人びとのエンパワーメントと解放を促していく。

ソーシャルワークは,人間の行動と社会システムに関する理論を利用して,人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理はソーシャルワークの拠り所とする基盤である。

 

2 中核をなす原理として,社会の不変性の尊重が容認された。

 

グローバル定義に示されている中核をなす原理

・社会正義

・人権

・集団的責任

・多様性尊重


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