今回は,ロールズが提唱した「格差原理」を学びましょう。
格差原理とは,格差(社会的や経済的に不平等があること)は,最も恵まれない人に用いられる場合にのみ認められること。
格差があることを認めないのではなく,格差があっても,それがその社会の中で最も恵まれない人の利益になるような仕組みをつくることが,ロールズが提唱した「正義」です。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題23 ロールズ(Rawls,J.)が『正義論』で主張した格差原理に関する記述として,適切なものを1つ選びなさい。
1 機会の平等が保障されれば,自由市場経済による資源配分は,正義にかなう。
2 個人の満足の総和を社会全体で最大化させるような資源配分は,正義にかなう。
3 消費税は資源配分を歪めないため,正義にかなう。
4 最も恵まれない人が有利となるような資源配分は,正義にかなう。
5 公共財の提供に政府が介入することは,正義にかなう。
勉強不足の人は,5分の1の確率でしか正解できない問題です。
しかし,勉強した人なら,正解がすぐわかる問題でしょう。
こういった問題が,理想的な国家試験問題の一つの形です。
勉強した人でも解けない問題もありますが,そういった問題がなければ,合格基準点がおそろしく上がってしまいます。
さて,正解は選択肢4です。
4 最も恵まれない人が有利となるような資源配分は,正義にかなう。
例としては,所得税の累進課税などは,所得の高い人から多く取って,それを所得再分配するのであれば,正義にかなうことになります。
企業のために用いられるのでは,正義にかないません。
ほかの選択肢です。
1 機会の平等が保障されれば,自由市場経済による資源配分は,正義にかなう。
自由経済は,イギリスがかつて経験したように,規制がなければ資本家の搾取が起きます。
その結果,資本家階級と労働者階級に大きな格差が生じます。
現在の資本主義は,この弊害をなくして,運用されています。
2 個人の満足の総和を社会全体で最大化させるような資源配分は,正義にかなう。
これは,功利主義です。ロールズは功利主義を批判して,格差原理を提唱しました。
3 消費税は資源配分を歪めないため,正義にかなう。
消費税は,逆累進性の税制です。
所得の低い人も高い人も同じ税率だからです。
5 公共財の提供に政府が介入することは,正義にかなう。
公共財とは,水道,道路,街頭,ダムなどです。
1929年の世界大恐慌の際には,アメリカでは完全雇用を目指して,ニューディール政策をとりました。その時に用いたのがダムなどの建設です。
企業が潤い,それが労働者に流れていきますが,直接的に恵まれない人には用いられていないので,正義にかなうとは言えません。