今回は,社会的ジレンマを取り上げます。
社会的ジレンマとは,個々人の行動の結果が社会に不利益をもたらすことをいいます。
国家試験では,社会的ジレンマの例として
・フリーライダー
・囚人のジレンマ
・共有地の悲劇
が出題されています。
それぞれは,極めて印象深いものなので,一度勉強すると,しっかり頭に残るものです。
しかし,国試は選択肢の組み合わせによって,そんなに簡単に正解させてくれるものではありません。
フリーライダーは,負担なしに公共財などを利用することをいいます。
囚人のジレンマは,二人の囚人が相棒を信じて黙秘すれば二人の利益になるものを,相棒を信じて良いものか,相棒が裏切るかもしれないので,先に裏切った方が良いのか,といった場面で悩むことをいいます。
共有地の悲劇は,みんなが利益を得ようとした結果,みんなの利益が低下してしまうことをいいます。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題20 社会的ジレンマに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 企業などで生産された財やサービスが貨幣換算されないために,国家のGDPに含まれないことを「外部不経済」という。
2 犯罪容疑者である共犯者が,逮捕されていない主犯者の利益を考えて黙秘する結果,自分が罪をかぶることを「囚人のジレンマ」という。
3 社会にとって有用な資源へのアクセスが特定の人に限られていることを「共有地の悲劇」という。
4 ある財やサービスの対価を払うことなく,利益のみを享受する人のことを「フリーライダー」という。
5 協力的行動の妨害に与える報酬のことを「選択的誘因」という。
このうち,初めて出題されたものは,「外部不経済」と「選択的誘因」です。
こういったものは,国試ではあまり正解になりません。
あわてて選ぶことのないように気を付けることが大切です。
外部不経済とは,企業活動などの結果,社会に不利益をもたらすことをいいます。例としては,公害が挙げられます。
選択的誘因は,非協力的な行動よりも協力的な行動のほうが良いと思わせるように報酬を与えることです。
妨害行為に報酬を与えることが正しいとすれば,そんなものを出題する意図が見えないものになってしまいます。
協力行動を促進させるための方法を学んでもらうほうが適切だと思いませんか?
ほかの選択肢です。
2 犯罪容疑者である共犯者が,逮捕されていない主犯者の利益を考えて黙秘する結果,自分が罪をかぶることを「囚人のジレンマ」という。
囚人のジレンマは,相棒を信じるのか裏切るのかで迷うようなジレンマです。
3 社会にとって有用な資源へのアクセスが特定の人に限られていることを「共有地の悲劇」という。
これはまったくかすってもいないものですね。
共有地の悲劇は,共有地で羊を飼っていて,もっと利益を上げようと羊をたくさん飼ったら,えさとなる牧草がなくなり,結果として前よりも利益が得られなくなってしまったというたとえです。
4 ある財やサービスの対価を払うことなく,利益のみを享受する人のことを「フリーライダー」という。
これが正解です。
国家試験では,社会的ジレンマのうち,フリーライダーを最も重視しているみたいです。
<今日の一言>
「社会理論と社会システム」が苦手な人は,点数が取りにくいように思うかもしれません。
しかし,今日の問題のように鉄板的問題も出題されます。
こういった問題を確実に正解できる確かな知識をつけるためには,丸暗記ではなく,必ず自分なりに理解して覚えることが大切です。
意味を理解することなく,丸暗記するような学習では得点することはできないので注意が必要です。