2020年11月21日土曜日

ジニ係数

これをジニ係数に合わせて説明すると,所得再分配が行われる前のジニ係数は大きかった(つまり1に近い状態)は,所得再分配の結果,ジニ係数は小さくなります(つまり0に小さい状態)。


今回は,「ジニ係数」を取り上げます。


ジニ係数とは所得格差を表わす指数です。範囲は0~1,所得格差のない状況は0,所得格差が大きいのは,1です。


所得再分配が行われる前の所得格差は,所得再分配の結果,所得格差は小さくなります。


これをジニ係数に合わせて説明すると,所得再分配が行われる前のジニ係数は大きかった(つまり1に近い状態)は,所得再分配の結果,ジニ係数は小さくなります(つまり0に小さい状態)。


「ジニ係数」はものすごく難しく説明されることが多いですが,国試で必要な知識は,これで十分です。


それでは,今日の問題です。


第28回・問題26 貧困・所得格差に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 OECDにおける相対的貧困率は,等価可処分所得の平均値の50%未満の所得層が全人口に占める比率を指す。

2 ジニ係数の値が1に近いほど,所得格差は小さい。

3 平均所得の実質額が低下しジニ係数の値が上昇すれば,社会の構成員の満足の総和は上がる。

4 「平成25年国民生活基礎調査」(厚生労働省)によると,「子どもがいる現役世帯」のうち,「大人が一人」の世帯員では,相対的貧困率は50%を超える。

5 「平成25年国民生活基礎調査」(厚生労働省)によると,1997年(平成9年)以降,相対的貧困線の実質値は一貫して上昇している。


勉強不足の人を跳ね返すような出題です。


おそらく,消去できる選択肢をできなければ,正解できないようなタイプの問題だと言えるかもしれません。


つまり,ジニ係数を正しく理解していることが必要です。


それでは解説です。


1 OECDにおける相対的貧困率は,等価可処分所得の平均値の50%未満の所得層が全人口に占める比率を指す。


うまくつくったなぁ,と思います。


相対的貧困率は,等価可処分所得の「平均値」の50%未満の所得層が全人口に占める比率ではありません。

中央値でなければなりません。


平均値は「社会調査の基礎」で学ぶ代表値の一つですが,いわゆる外れ値があると,中央値よりも高い方や低い方にずれます。

その点,中央値は,外れ値の影響を受けにくいものです。


2 ジニ係数の値が1に近いほど,所得格差は小さい。


所得格差の小さいのは,0に近い方です。


ジニ係数が出題される時は,所得格差の大きいのは0なのか,1なのかの知識が必要です。


1に近い方が,所得格差の大きい状態を示します。


3 平均所得の実質額が低下しジニ係数の値が上昇すれば,社会の構成員の満足の総和は上がる。


これがこの問題で正解できるかどうかの最大のカギを握っているものだと思います。


所得格差の大きい状態では,人々の満足が高まるということはありえないでしょう。


しかし,冷静に考えると,これは消去できます。


というのは,


2 ジニ係数の値が1に近いほど,所得格差は小さい。

3 平均所得の実質額が低下しジニ係数の値が上昇すれば,社会の構成員の満足の総和は上がる。


の2つが出題されているからです。

よくよく読んでみると,どちらも同じロジックで成り立っているものです。


正解は一つしかないので,どちらの消去できます。


4 「平成25年国民生活基礎調査」(厚生労働省)によると,「子どもがいる現役世帯」のうち,「大人が一人」の世帯員では,相対的貧困率は50%を超える。


これが正解です。これを知っているかどうかも重要かもしれませんが,試験委員はこれを知っていることを前提にこの問題を作っていません。


なぜなら,ほかの選択肢を消去することで,この選択肢が残るように問題が設計されていることがわかるからです。


国家試験問題の多くは,正解に続くと道筋があります。脇道に逸れることなく,その道筋に従っていけば,正解できるように作られています。


道筋をしっかりたどれるのは,地道に勉強を続けた人だけです。


5 「平成25年国民生活基礎調査」(厚生労働省)によると,1997年(平成9年)以降,相対的貧困線の実質値は一貫して上昇している。


「一貫して」というのは,多くの場合,正解になりにくいものです。


「一貫して」というのは,世の中にそんなにあるものではありません。


チームfukufuku21のメンバーで,一貫しているものを考えても,「保護の廃止理由」などいくつかしか思い当たりません。


<今日の一言>


今日の問題は,正解できましたか?


正解できたのは,参考書などに書かれた知識があったからかもしれません。

国試では,知識ゼロで解かなければならない問題も出題されます。


そういった問題もなければ,いわゆるボーダーラインが大きく上がってしまうからです。

しかし,ちょっと視点を変えることで,正解できる確率が上がります。


そのコツは,意外と単純だったりします。

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