DSM(ディーエスエム)は,アメリカ精神医学会が作成した「精神疾患の診断・統計マニュアル」です。
現在は,第5版であるDSM-5(ファイブ)が採用されています。
DSM-ⅢとⅣは,多軸診断が用いられていたのに対し,DSM-5は,多元的診断が用いられています。
日本の臨床現場では,WHO(世界保健機関)が作成した「ICD」(国際障害分類)を多く使用しています。
理由は,診療報酬の請求では,ICDの診断名をコード化したものを採用しているからです。
しかし,社会福祉士の出題基準は,ICDではなく,DSMのみ掲載されているので,覚えるのはDSMだけで良いということになります。
ただし,精神保健福祉士は,ICDも出題されるので,両方を覚えることが必要です。
因みに,ICDは現在では第11版である,ICD-11が採用されていますが,日本では翻訳が進まず,ICD-11を学ぶには,英語版しかありません。
そのため,精神保健福祉士で出題されるのは,従来のICD-11ということになります。
さて,精神疾患で最も多く出題されているのは,統合失調症です。
その次は,気分障害です。気分障害は,うつ病と双極性障害(いわゆる躁うつ病)があります。
ただし,DSM-5では,気分障害という分類はなくなり,うつ病と双極性障害は別に分類されています。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題7 精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)の「躁病エピソード」に記載されている症状はどれか。正しいものを1つ選びなさい。
1 易怒的
2 睡眠過多
3 幻覚
4 疲労感
5 強迫行為
躁病エピソードとは,躁状態のことをいいます。
双極性障害は,躁病エピソードとうつ病エピソードを繰り返します。
うつ病だと診断されていたものが,よくよく見てみると,軽躁病エピソードがみられ,双極性障害と診断され直すこともあります。
このようなタイプは,双極性Ⅱ型障害といいます。
さて,この問題は,躁病エピソードにあたるものはどれかという問題です。
いわゆるハイになっている状態を思い起こすと良いです。
正解は,「1 易怒的」です。
易怒的とは,ちょっとした刺激に怒りっぽくなることをいいます。
その他の躁病エピソードとしては,睡眠障害があります。
睡眠障害は,うつ病エピソードではないか,と思う人もいるでしょう。
うつ病エピソードの場合は,不眠や過眠です。
躁病エピソードは,過活動になることから眠くならないという症状があります。
それも睡眠障害です。
選択肢の中で特に解説しておきたいのは,強迫行為です。
強迫行為とは,むだなことだとわかっていない行為を繰り返してしまうことです。
強迫性障害にみられます。
よく使われる例として,手を洗い続ける,カギをかけたのか何度も確認する,といったものがあります。
本人はムダだとわかっていながら,その行為を続けてしまうところにこの障害をもつ本人の苦悩が発生します。