2020年11月12日木曜日

ウェーバーの支配システム

ウェーバーについて,国試でよく出題されているのは,次の2点です。

 

(1)支配システム

(2)社会的行為


これらについて,簡単にでも説明できるくらいにしておきたいです。丸暗記は表現を変えられると対応ができないので,必ず自分のことばで置き換えて理解するようにしましょう。

 

今回は,そのうち支配システムを取り上げたいと思います。

 

もう一つの社会的行為に関する記事

https://fukufuku21.blogspot.com/2017/05/blog-post_17.html

https://fukufuku21.blogspot.com/2020/06/blog-post_13.html


支配システムとは

 

誰かが命令した場合,それを人々が受け入れることを言います。

 

ウェーバーには,支配システムには,3つの類型があると述べています。

 

①伝統的支配 

神聖なもの,慣習によるもの,などによるものです。

日本では昔の天皇制,家父長制(親の言うことは絶対的)などが伝統的支配の類型になります。

②カリスマ的支配 

特別な能力(カリスマ)を持った人による支配です。

「ちょっと極端だけれど,この人の言うことなら従える」と思えるようなものです。

戦国武将の織田信長や豊臣秀吉などがカリスマ的支配と言えるでしょう。

③合法的支配

規則(法)による支配です。

近代民主国家は,合法的支配です。

伝統的支配やカリスマ的支配と違い,規則により命令し,人々は規則によって従います。

 

合法的支配をより進めたものが「官僚制」です。

 

官僚制の特徴は,

 

文書主義

規則による権限の明確化

規則による上下関係の明確化

 

などがあります。

 

ウェーバーは,伝統的支配やカリスマ的支配から離脱する脱魔術化によって近代化すると考えました。その過程は世俗化といいます。

 

それでは今日の問題です。

 

28回・問題15 ウェーバー(WeberM.)の支配の諸類型に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 合法的支配とは,ある私的な関係に限って認められたルールに基づく支配体制である。

2 官僚制による支配とは,権力者の恣意的な判断や決定による支配体制である。

3 カリスマ的支配とは,非日常的な資質の持ち主によって成立する支配体制である。

4 家父長制的支配とは,家業を遂行する経営的な能力に基づく支配体制である。

5 伝統的支配とは,過去に制定された法に基づく支配体制である。

 

今,改めてこの問題を見てみると,何も難しくはないように思うかもしれません。

 

しかし,この問題を初めて見た時は,とてつもなく難しく見えるはずです。

これが国試の怖いところです。

 

正解は,選択肢3です。

 

3 カリスマ的支配とは,非日常的な資質の持ち主によって成立する支配体制である。

 

一般的に使われる「カリスマ」とほぼ同じ使い方なので,ウェーバーの支配システムを知らなくとも,正解できる可能性はあるのですが,この選択肢をほかの選択肢でうまく隠しているので,難易度が高くなるのです。

 

ほかの選択肢もみてみます。

 

1 合法的支配とは,ある私的な関係に限って認められたルールに基づく支配体制である。

 

私的な関係ではなく,公のルールに基づくものです。

 

2 官僚制による支配とは,権力者の恣意的な判断や決定による支配体制である。

 

恣意的とは,「勝手気まま」という意味です。

勝手気ままは許されません。

 

4 家父長制的支配とは,家業を遂行する経営的な能力に基づく支配体制である。

 

家父長制的支配とは,伝統的支配に含まれるもので,経営能力の有無ではなく,長子が家督を継いでいくものです。

 

日本では,江戸時代に定着したものです。

 

5 伝統的支配とは,過去に制定された法に基づく支配体制である。

 

伝統的支配は,神聖なもの,慣習によるもの,などによる支配です。

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