エスピン-アンデルセンは,福祉国家を形成する「福祉レジーム」が福祉国家の相違だと考え,次の指標を使って,福祉国家を類型化しています。
脱商品化 |
個人又は家族が(労働)市場参加の有無にかかわらず,一定水準の生活を維持することができること。 |
社会階層化 |
職種や社会的階層に応じて給付やサービスに差があること。 |
脱家族化 |
家族による福祉負担を軽減すること。 |
これらの度合いによって,福祉国家を「自由主義レジーム」「保守主義レジーム」「社会民主主義レジーム」に類型化しました。
自由主義レジームは,市場の役割が大きい国々で,アメリカ,イギリスなどが属します。
保守主義レジームは,家族や職域の役割が大きい国々で,ドイツ,フランスなどが属します。
社会民主主義レジームは,国家の役割が大きい国々で,スウェーデン,デンマークなどが即します。
日本は,どこにも分類されていません。
社会支出を比較すると,社会民主主義レジーム>保守主義レジーム>自由主義レジームとなります。
しかし,現在では,フランスの社会支出は,高福祉高負担で知られる社会民主主義レジームのスウェーデンよりも多くなっています。
しかし,社会支出の国際比較では,基本的に
社会民主主義レジーム>保守主義レジーム>自由主義レジーム
と覚えておくとよいと思います。日本は,アメリカとイギリスの間です。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題22 エスピン-アンデルセン(Esping-Andersen,G.)の「レジーム」理論に関する記述として,正しいものを1つ選びなさい。
1 福祉国家は,社会的階層化のパターン形成に重要な役割を演じる。
2 脱商品化とは,労働者が労働能力を喪失することである。
3 脱家族化とは,単身世帯の増加のことである。
4 福祉レジーム概念は,福祉国家の否定から生まれた。
5 雇用・労働市場は,福祉レジームの在り方に影響しない。
この問題は,かなり高度な問題でしょう。
しかし,正解以外の選択肢は消去できるので,結果として正解が残ります。
1 福祉国家は,社会的階層化のパターン形成に重要な役割を演じる。
これが正解です。
社会的階層化のパターン形成とは,何を言っているのか分かりにくいですが,福祉国家を形成する国のあり方や考え方が国それぞれによって異なり,社会連帯になるのか,国家によるのか,市場が担うのか,によって人々の生活は大きく変わることでしょう。
2 脱商品化とは,労働者が労働能力を喪失することである。
3 脱家族化とは,単身世帯の増加のことである。
4 福祉レジーム概念は,福祉国家の否定から生まれた。
5 雇用・労働市場は,福祉レジームの在り方に影響しない。
これらのうち,勉強不足の人は,「脱商品化」「脱家族化」がわからないことでしょう。
今日の問題のようなタイプは,一つでも消去できない選択肢があると正解できなくなってしまいます。
こういった問題は,とても難易度が高くなりますが,勉強した人だけが正解できる特権のような問題だと言えるでしょう。