2017年11月30日木曜日

国試に合格する勉強法~過去問は使える? 使えない?

このブログを読んでいる皆さんは,今,この時点でどんな勉強をしているのでしょうか?

今までどれだけ勉強してきたかによって,勉強法は変わります。

ただし,これだけは言えます。

過去3年間の過去問の知識だけでは合格できない!!



もし,3年間の過去問だけの知識で合格できるのであれば,もっと多くの人が合格できているはずです。

試験センターから発表されている出題基準に照らし合わせると,3年間の過去問では,その全部を埋めることができません。

ものすごくスカスカです。

そのスカスカのものを勉強して合格したのなら,その人は,過去問以外の知識を実生活の中で持っていたことに他なりません。

これは,すべての人が等しく持っているものではないです。

しかし,すべての科目が3年間の過去問が役立たないか,と言えば決してそんなことはありません。

過去3年間の過去問の内容が生きる科目はこれだ!!


社会保障(数値の部分)
低所得者
更生保護


これらの過去問は使えます。

特に低所得者と更生保護は,出題基準に含まれる法制度はとても少ないので,出題されるポイントも少ないためです。

さて,それでは,今日の問題です。

前回から,引き続いての内容なので,前情報なしでいきます。

第29回・問題50

「平成25年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会保障給付費の対国内総生産比は20%を超えている。

2 政策分野別社会支出の構成割合が最も高いのは,「家族」に対する支出である。

3 政策分野別社会支出のうち,「住宅」支出の構成割合は10%を超えている。

4 部門別社会保障給付費の対国内総生産比をみると,「医療」が最も高い。

5 社会保障財源をみると,公費負担の割合が最も高い。


前回の問題と区別がつかないくらいにそっくりな出題です。

それでは,解説していきましょう!

1 社会保障給付費の対国内総生産比は20%を超えている。

対国内総生産比 ➡ 約20% (約100兆円/約500兆円)
対国民所得比  ➡ 約30% (約100兆円/約400兆円)

対国民所得比の方が大きい数値になっている理由は,分母である国民所得が小さいからです。

これが正解です。


2 政策分野別社会支出の構成割合が最も高いのは,「家族」に対する支出である。


さて,次は「社会支出」からの出題です。

社会保障給付費(ILO基準)と社会支出(OECD基準)を比べると社会支出の方が若干多いです。


社会保障給付費 ➡ 約110兆円

社会支出    ➡ 約115兆円


なぜ社会支出の方が大きい値になるかと言えば,社会保障給付費は個人に給付される金額であるのに対し,社会支出はそれに加えて,施設整備などを加えたものだからです。

前回から再掲

近年の国試では,ILO基準の「社会保障給付費」とOECD基準の「社会支出」の2つが出題されます。
それらは,勘定項目が違うので,数値が若干違います。しかし,若干であり,大枠で見るとどちらもほとんど変わりません。
共通なのは,どちらも
「高齢」「医療」に関連するものに80%以上使っている
ここをしっかり押さえましょう。
そうすると,高齢・医療に関連する項目の他には,遺族,家族,失業などたくさんありますが,それぞれの数値を覚える必要は一切必要なくなります。

<覚える必要がない理由>

10%を超える項目はないだろうと推測できるため。


それでは,問題に戻ります。

最も大きいのは「高齢」です。よって間違いです。

3 政策分野別社会支出のうち,「住宅」支出の構成割合は10%を超えている。


高齢者・医療で8割を超えています。

その他の項目で10%を超えるものはありません。
よって間違いです。

4 部門別社会保障給付費の対国内総生産比をみると,「医療」が最も高い。


ここで,部門別社会保障給付費の割合


年金:医療:福祉その他=5:3:2


これを知っていても,対国内総生産比は知らないと思ってはだめです。

数学的に考えると


 5:3:2(年金:医療:福祉その他
───────────────────────────
国内総生産(約500兆円)


となります。

分子のそれぞれの割合は,何ら変わるものではありません。

最も高いのは,年金ということになります。
よって間違いです。

対国民所得比も同じです。


 5:3:2(年金:医療:福祉その他
────────────────────────────
   国民所得(約400兆円)


5 社会保障財源をみると,公費負担の割合が最も高い。


公費が多いのか
社会保険料が多いのか

今まで何度出題されてきたのか,数える気にもならないほどの超頻出の定番問題です。

前回は「社会保障財源の構成としては,社会保険料が最も多い」ということで正解でした。

今日の問題は出題をひっくり返して

「社会保障財源をみると,公費負担の割合が最も高い」と出題されています。

もちろん間違いです。


1962年勧告による社会保障施策
社会保障を「貧困階層に対する施策」「低所得階層に対する施策」「一般所得階層に対する施策」に区分。
貧困階層に対する施策   ➡ 生活保護制度(税負担)
低所得階層に対する施策  ➡ 社会福祉制度(税負担)
一般所得階層に対する施策 ⇒ 社会保険制度(社会保険料+税負担)

日本の社会保障の中心は,社会保険です。対象となる一般所得階層は大多数です。
この点で,社会保険料を公費負担が上回るような社会保障制度にはならないのです。

<今日のポイント>


社会保障財源は

社会保険料 > 公費負担

理由は,日本の社会保障制度は,社会保険が中心だからです。


2017年11月29日水曜日

国試に合格する勉強法~確実に数値を覚えるコツとポイント

各社の模試の開催が続いています。
自宅受験をされた人もいることでしょう。

覚えたつもりで,あいまいになっているものに気づくことができるのは,模試受験のメリットの一つです。


これから国試までの約2か月は,不安材料を一つひとつ解消していく期間だといっても良いでしょう。

さて,「あいまい」になりやすいものには,数値があります。

「社会保障」の科目は苦手だと思っている人が多いようですが,絶対に押さえておきたいポイントは存在します。

その中の一つは「社会保障給付費」(あるいは「社会支出」)です。

現行カリキュラムになってから出題されなかったのは,第24回のみです。


社会保障給付費の出題確率は・・・

実に87.5%です。

この科目の中では,絶対に外せないものの筆頭でしょう。

社会保障給付費

 約110兆円。 ※面倒なので100兆円と覚える。国家予算額より大きい。


対国内総生産比 ➡ 約20
対国民所得比  ➡ 約30


参考書には,最新の細かい数値が書かれていると思います。
しかし,国試では・・・

細かい数値は出題されません。

それにもかかわらず細かい数値を記載しているのは,参考書を発行している出版社の陰謀です。丁寧につくられている参考書なら,最新のものではなくても十分使えます。

最新のデータを掲載して,年度版のものを発行しないと,学生は後輩に譲ってしまうので,本が売れなくなってしまうのです。

ここに気がつかないと,数値のマジックに陥れられますので,要注意です。

つまり・・・

数値はざっくり覚えることが大切!!

その時に,なぜその数値になっているのか,を合わせて覚えておくと絶対に忘れません。

さて,ここで紛らわしい数値があります。

対国内総生産比と対国民所得比の2つです。

分母となるそれぞれの数値を調べてみます。

国内総生産 ➡ 約500兆円
国民所得  ➡ 約400兆円

国民所得の方が小さいです。

分子が同じわけですから,分母が小さい対国民所得比の方が,大きい数字となり,約30%となります。

さて次です。

社会保障給付費の部門別構成比

年金    ➡ 約50
医療    ➡ 約30
福祉その他 ➡ 約20

これらの割合は

年金:医療:福祉その他=5:3:2

となっています。超々頻出です。

これは,「21世紀福祉ビジョン」(1994)の提言に沿ったものなのです。

さて次です。


ILO基準の「社会保障給付費」
OECD基準の「社会支出」

2つが出題されます。

それらは,勘定項目が違うので,数値が若干違います。
しかし,若干であり,大枠で見るとどちらもほとんど変わりません。

共通なのは,どちらも

「高齢」「医療」に関連するものに80%以上使っている

ここをしっかり押さえましょう。

そうすると,高齢・医療に関連する項目の他には,遺族,家族,失業などたくさんありますが,それぞれの数値を覚える必要は一切必要なくなります。

<覚える必要がない理由>

10%を超える項目はないだろうと推測できるため。



それでは,今日の問題です。

第28回・問題51

「平成24年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 社会保障給付費が国内総生産に占める割合は,40%を超えている。

2 部門別(「医療」,「年金」,「福祉その他」)の社会保障給付費の構成比では,「医療」が約50%を占めている。

3 機能別(「高齢」,「保健医療」,「家族」,「失業」など)の社会保障給付費の構成比では,「失業」が20%を超えている。

4 年金給付費の中では,国民年金の給付の方が厚生年金保険の給付を上回っている。

5 社会保障財源の構成としては,社会保険料が最も多い。

勉強した人なら,秒殺で答えられる問題かもしれません。

しかし,ここには,他に覚えておきたいポイントがいくつも存在しています。それを確認していきましょう。

1 社会保障給付費が国内総生産に占める割合は,40%を超えている。


対国内総生産比 ➡ 約20% (約100兆円/約500兆円)
対国民所得比  ➡ 約30% (約100兆円/約400兆円)

対国民所得比の方が大きい数値になっている理由は,分母である国民所得が小さいからです。

社会保障給付費は,現在では110兆円を超えていますが,100兆円だと覚えておくと何かと便利です。

問題に戻ると40%は超えていないので間違いです。


2 部門別(「医療」,「年金」,「福祉その他」)の社会保障給付費の構成比では,「医療」が約50%を占めている。


1980代までは医療が一番多かった時代が続きましたが,現在では,年金が一番多くて,約50%を占めています。

よって間違いです。

年金:医療:福祉その他=5:3:2

社会保障給付費を100兆円と覚えておくと,割合ではなく,実際の金額を聞かれた時,とても便利です。

年金 ➡ 50兆円をちょっと超えた数値
医療 ➡ 30兆円をちょっと超えた数値  ※国民医療費は40兆円を超えています。
福祉その他 ➡ 20兆円をちょっと超えた数値

だと計算できます。

因みに福祉その他には,生活保護費が含まれます。

生活保護費は約3兆円です。そのうち半分は医療扶助が占めています。つまり15千億円が医療扶助です。

生活扶助基準を引き下げましたが,そんなのは,社会保障給付費のほんのわずかです。
それよりも薬価を引き下げる,無駄な処方を少なくする,といった方が確実に社会保障給付費の増大を抑制することができます。


3 機能別(「高齢」,「保健医療」,「家族」,「失業」など)の社会保障給付費の構成比では,「失業」が20%を超えている。


「高齢」「保健医療」の2つの項目で80%を超えます。失業が20%を超えることはあり得ません。よって間違いです。

失業は1.5%です。日本の社会保障給付費の特徴は,失業対策にあまりお金をかけていないことです。合わせて覚えておきましょう!!

4 年金給付費の中では,国民年金の給付の方が厚生年金保険の給付を上回っている。


国民年金の被保険者 ➡ 農林水産業者,自営業者,無職の者など。約2,000万人
厚生年金の被保険者 ➡ 被用者,公務員など。約4,000万人。

数値を知らずとも,厚生年金の被保険者の方が多そうだ,と思えるでしょう。もちろん厚生年金の給付の方が多いです。よって間違いです。

5 社会保障財源の構成としては,社会保険料が最も多い。


これが正解です。

先日,紹介したように,日本の社会保障の中心は,社会保険です。

なぜなら社会保険は,一般所得階層に対する施策であり,対象者が最も多いからです。



<今日のまとめ>


社会保障制度は,資本主義を取っている国には絶対に必要なものです。

夜警国家と呼ばれる古典的自由主義だと,さまざまな弊害が出て来ます。
国民生活を守るものが社会保障制度です。
生活が安定することは,国民生活にとって,極めて重要なことです。


「社会保障」はソーシャルワーカーにとって,苦手であってはいけない科目の一つだと考えています。

なぜなら,細かい福祉制度(ミクロ的)は知るのと同時に,社会保障制度全体(マクロ的)を視野に入ておくことで,クライエントの権利擁護につながるからです。

もし,生活保護受給者と比べて最低賃金の方が低いという逆転現象があったのなら,生活扶助基準を引き下げるのではなく,最低賃金をもっと引き上げることが国民全体の福祉向上につながったことでしょう。

2017年11月28日火曜日

国試に合格する学習法~歴史問題を攻略しよう!!

歴史や人名を苦手とする受験生は多いです。

人名は「一見さん」(一度しか出題されたことのもの)が大半です。
ウェーバーやリッチモンド,留岡幸助,石井十次などの超頻出のものを除けば,捨てても良いレベルです。


歴史は,歴史の試験ではないので,年号を覚える必要はありません。
大体の時代を押さえておくだけで十分です。

さて,今回は社会保障の歴史の整理します。


第二次世界大戦終戦前

 1922 健康保険法(日本初の社会保険立法。対象はブルーカラー)
 1938 国民健康保険法(対象は,農林漁業者など)
 1944 厚生年金保険法(戦費調達のため)



第二次世界大戦終戦後

 1947 労働保険(雇用保険法,労災保険法)
 1961 国民年金法施行(皆年金制度)
 2000 介護保険法


医療保険制度と年金保険制度の大枠は第二次世界大戦終戦前に出来上がっていることが分かります。

健康保険法が一番先である理由は,工場や炭鉱などで労働争議が続出し,それを納めるための立法だからです。

因みに今年は,ロシア革命(1917)から100年です。

100年の節目と言えば,内務省救護課設置(厚労省の前身),済世顧問制度(民生委員の源流の一つ)があります。


厚生年金保険法は終戦直前の成立です。

年金制度を作っても実際に給付するのはずっと先のこと。

昔は人生50年と言われた時代,給付はそんなに大きくはない。それで戦費調達のために作られました。

労働保険(雇用・労災)は,戦後の幕開けとなる労働者保護のためのものです。


さて,たったこれだけを覚えて,今日の問題です。

29回・問題49 

日本の社会保障の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 被用者を対象とした社会保険制度として,まず健康保険法が施行され,その後,厚生年金保険法が施行された。


2 最初に実施された公的医療保険制度は,国民健康保険である。


3 後期高齢者医療制度は,介護保険制度と同時に創設された。


4 国民皆年金は,基礎年金制度の導入によって実現した。


5 第二次世界大戦後,社会福祉の制度は,身体障害者福祉法,児童福祉法,生活保護法の順に施行された。

しっかり勉強した人なら,これが答えだとすぐ分かる珍しい問題です。
それでは,解説しましょう。

 1 被用者を対象とした社会保険制度として,まず健康保険法が施行され,その後,厚生年金保険法が施行された。


これが答えです。

日本の社会保険制度は,医療保険が先に出来て,その後に年金保険制度が出来上がりました。

年号は問われていませんね。

2 最初に実施された公的医療保険制度は,国民健康保険である。


日本初の社会保険立法は,健康保険法です。よって間違いです。

「〇〇初」は,出題されやすいものです。

世界初の社会保険は?

といった感じです。

3 後期高齢者医療制度は,介護保険制度と同時に創設された。


こういう問題は,社会人は有利です。リアルタイムで知っているからです。


同時ではないです。よって間違いです。


4 国民皆年金は,基礎年金制度の導入によって実現した。

皆年金制度は,国民年金法施行で実現しています。よって間違いです。


5 第二次世界大戦後,社会福祉の制度は,身体障害者福祉法,児童福祉法,生活保護法の順に施行された。

法律は時代の要請によってできます。それぞれできた時代に思いを馳せてみるというのも良いのかもしれません。

想像力は,ワーカーにはとても重要な力となります。


福祉六法の成立順


昭和20年代
生活保護法(旧) ➡ 児童福祉法 ➡ 身体障害者福祉法

昭和30年代
精神薄弱者福祉法 ➡ 老人福祉法 ➡ 母子福祉法

よって間違いです。


生活保護についてのミニ知識

2011年に,保護実人員が200万人を超え,過去最多を更新したことが話題になりました。
しかし,保護率は過去最高ではありません。1950年代の方が高かったからです。

その理由は,1950年代と2010年代の人口を比べてみると,1950年代は8,000万人,2010年代は1億2,000万人というように,母数がまったく違うからです。

<今日のまとめ>

社会福祉士の試験は,歴史の試験ではない!!

年号を覚えて役立つ問題はかなり少ないことを覚えておこう。



年号より,重要なのはその内容です。

2017年11月27日月曜日

国試に合格する勉強法~社会保障制度の整理

社会保障制度を大別すると「社会保険」と「社会扶助」があります。

社会保険 ➡ 社会保険料を主な財源とする。
社会扶助 ➡ 税を財源とする。


1950年社会保障制度審議会勧告による社会保障の方法


保険的方法(社会保険)又は直接公の負担(社会扶助)。社会保障の中心は社会保険制度。それで救済できない者に対しては社会扶助で補完する。

1962年勧告による社会保障施策


社会保障を「貧困階層に対する施策」「低所得階層に対する施策」「一般所得階層に対する施策」に区分。
貧困階層に対する施策   ➡ 生活保護制度(社会扶助)
低所得階層に対する施策  ➡ 社会福祉制度(社会扶助)
一般所得階層に対する施策 ➡ 社会保険制度(社会保険)

これらで分かることは,国民の大多数は,一般所得階層なので,社会保障の大部分は社会保険が占めることです。

そのため,社会保障制度の割合が高いので,社会保障財源を見たとき,社会保険料が半分を超えます。国試では何度も「税財源の方が大きい」と出題していますが,大きいのは社会保険料なので,間違いです。


それでは,今日の問題です。


27回・問題50 社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 1950年の社会保障制度審議会勧告は,日本の社会保障制度について,租税を財源とした社会扶助制度を中心に充実させるとした。

2 1952年の「ILO102号条約」では,社会保障の給付事由の一つとして,すでに日本の介護保険法にいわれる意味での要介護状態にあることを挙げていた。

3 1962年の社会保障制度審議会勧告は,社会保障制度の体系化を構想し,社会福祉対策を「一般所得階層に対する施策」として位置づけた。

4 1981年の「難民条約」の批准に伴う法整備により,国民年金法,児童手当法,児童扶養手当法,「特別児童扶養手当法」から国籍要件が削除された。

5 1995年の社会保障制度審議会勧告は,後期高齢者医療制度の創設を提言した。


先の解説で分かるものもありますが,分からないものもあるでしょう。

それでは詳しく見ていきましょう。

1 1950年の社会保障制度審議会勧告は,日本の社会保障制度について,租税を財源とした社会扶助制度を中心に充実させるとした。


先述のように,社会保障制度の中心は,社会保険制度です。よって間違いです。


2 1952年の「ILO102号条約」では,社会保障の給付事由の一つとして,すでに日本の介護保険法にいわれる意味での要介護状態にあることを挙げていた。


ILO102号条約の正式名称は「社会保障の最低基準に関する条約」と言います。

社会保障の給付事由は「医療」「疾病」「失業」「老齢」「家族」「出産」「廃疾」です。介護は入っていません。よって間違いです。

ちょっと難しく思うかもしれませんが,こんな時に想像力が必要です。

同じ年には,こんな問題も出題されています。

27回・問題23

社会的リスクに関する次の記述のうち,「ベヴァリッジ報告」で想定されていなかったものを1つ選びなさい。

1 疾病により労働者の収入が途絶えるおそれ
2 勤務先の倒産や解雇により生計の維持が困難になるおそれ
3 老齢による退職のために,稼働収入が途絶えるおそれ
4 保育や介護の社会化が不充分なため,仕事と家庭の両立が困難になるおそれ
5 稼得者の退職や死亡により被扶養者の生活が困窮するおそれ

答えは選択肢4です。

1942(いくよに)伝えられるべヴァリッジ報告」といった覚え方では,まったく歯が立ちません。

歴史の試験ではないので,年号を覚える勉強法はまったく意味を持ちません。

だいたいいつの時代なのか,ということが理解できていれば十分です。

3 1962年の社会保障制度審議会勧告は,社会保障制度の体系化を構想し,社会福祉対策を「一般所得階層に対する施策」として位置づけた。



貧困階層に対する施策   ➡ 生活保護制度(社会扶助)
低所得階層に対する施策  ➡ 社会福祉制度(社会扶助)
一般所得階層に対する施策 ➡ 社会保険制度(社会保険)

よって間違いです。


4 1981年の「難民条約」の批准に伴う法整備により,国民年金法,児童手当法,児童扶養手当法,「特別児童扶養手当法」から国籍要件が削除された。


これが正解です。

5 1995年の社会保障制度審議会勧告は,後期高齢者医療制度の創設を提言した。

95年勧告は,21世紀に向けて「広く国民に健やかで安心できる生活を保障することが社会保障の基本的理念である」としています。

提言したのは,後期高齢者医療制度の創設ではなく,公的介護保険制度です。よって間違いです。時代でわかるでしょう。


社会保障制度審議会は何度も勧告を行いましたが,国家試験に出題されるのは,50年勧告,62年勧告,95年勧告の3つだけです。


それぞれは極めて重要です。しっかり覚えておきましょう。

※PCの調子が悪く,朝一番に更新できなかったことをお許しください。

2017年11月26日日曜日

国試に合格できる勉強法~福祉計画の関連性(図示)

毎日の勉強お疲れさまです。

今週から12月になります。体調にはくれぐれもお気をつけください。
国試合格を確実に決めるのは,確実な知識です。

今日も「福祉行財政と福祉計画」のうちの福祉計画から考えていきたいと思います。


一体のものとして策定されなければならない
 老人福祉計画&介護保険事業計画


整合性の確保が図られたものでなければならない
 市町村介護保険事業計画&市町村計画(医療介護総合確保推進法)

 都道府県介護保険事業支援計画&都道府県計画(医療介護総合確保推進法)&医療計画


調和が保たれたものでなければならない
 その他大勢

これをもとに今日の問題です。

29回・問題47 福祉計画等の策定に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 市町村障害者計画と市町村障害福祉計画は,一体のものとして策定されなければならない。

2 市町村は,市町村障害福祉計画を定めたときは,厚生労働大臣に提出しなければならない。

3 市町村は,市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画のうち,いずれか一つを策定すればよい。

4 市町村子ども・子育て支援事業計画は,都道府県知事の定める基本指針に即して策定される。

5 都道府県介護保険事業支援計画は,医療計画との整合性の確保が図られたものでなければならない。


すぐ答えが分かるかもしれませんが,確認していきます。


1 市町村障害者計画と市町村障害福祉計画は,一体のものとして策定されなければならない。

障害者に関する計画

障害者基本法 ➡ 障害者計画
障害者総合支援法 ➡ 障害福祉計画

というように2つありますが,この2つを比べると障害者計画の方が上位計画にあります。

障害者施策は国の施策であり,そのため障害者政策委員会は厚生労働省ではなく内閣府に設置されます。

また,障害者計画を策定・変更した場合は,議会に報告しなければならない。といったように少し趣きが違います。

問題に戻ると,
一体のものとして策定されなければならない。

のは,老人福祉計画と介護保険事業計画のものです。

よって間違いです。

細かい話ですが,障害者計画は上位計画なので,他の計画との関連性はありません。

障害福祉計画は,障害者計画等と調和が保たれたものでなければならないという関連があります。その逆はないのです。


2 市町村は,市町村障害福祉計画を定めたときは,厚生労働大臣に提出しなければならない。


市町村が都道府県を飛び越えて,厚生労働大臣ということはあり得ません。よって間違いです。正しくは,都道府県です。


3 市町村は,市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画のうち,いずれか一つを策定すればよい。

これは,唯一一体で策定されなければならないものです。よって間違いです。


4 市町村子ども・子育て支援事業計画は,都道府県知事の定める基本指針に即して策定される。


基本指針や基本計画など,基本がつくものは基本的には,国が定めます。都道府県知事ではありません。よって間違いです。


5 都道府県介護保険事業支援計画は,医療計画との整合性の確保が図られたものでなければならない。


これが正解です。



福祉計画の関連性(マッピング)です。



整合性?
一体?
調和?

この図では,地域福祉計画を中心に据えています。

同計画は現在,策定は任意となっていますが,将来的には,各行政計画の上位計画の位置づけとなり,策定の義務化が検討されています。

(2018/11/09追記)

地域福祉計画は,2018年4月から,策定が「任意」から「努力義務」に変更されました。




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