児童の定義には,法律によって違いがあります。
児童手当法は,その中でもちょっと複雑です。
児童手当は,中学生以下だと覚えている人も多いでしょう。
支給期間はそれで正しいですが,児童福祉法における児童の定義は,18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者,となっています。
このような覚えにくいものはねらわれやすいと言えます。
さて,今日の問題は,過去の法律の児童の対象年齢です。
こんなのを覚えて何の意味があるのか?
と思う人もいることでしょう。
しかし,チームfukufuku21は深読みします。
現在は過去の積み重ねでできています。
今後の行方を考えるためには,過去を知らなければならないということだと意味づけしています。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題139
我が国の第二次世界大戦前の各法における児童の対象年齢に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 恤救規則は,無告の窮民であって,かつ13歳以下の孤児を救済することを規定していた。
2 感化法に規定されていた感化院の入院対象年齢は18歳未満であった。
3 工場法では,18歳未満の児童労働を禁止していた。
4 救護法では,貧困であって15歳以下の幼者を救済の対象としていた。
5 第二次世界大戦前の児童虐待防止法の対象年齢は16歳未満であった。
ずいぶんいろいろな法律を並べてきたものです。
知恵を使っても,混乱しそうです。
今なら,参考書に書かれているので,何とかなりそうですが,この時点で正解するのはかなり難しかったといえます。
それでは,詳しく見て行きましょう。
1 恤救規則は,無告の窮民であって,かつ13歳以下の孤児を救済することを規定していた。
これが正解です。
児童は13歳以下,高齢者は70歳以上です。
2 感化法に規定されていた感化院の入院対象年齢は18歳未満であった。
感化院は,現在の児童自立支援施設です。
昔は,15歳はもう立派な大人です。
昭和30年代では,「金の卵」と呼ばれた中卒の子どもたちが集団就職で都会に集められました。
戦後でさえそうです。
対象年齢はいくつであるかは分からなくても,18歳であれば十分な大人とみなされていた時代に,18歳はないだろうと想像できます。
正しくは,8歳以上16歳未満です。
よって間違いです。
3 工場法では,18歳未満の児童労働を禁止していた。
工場法は,日本で初めて労働者を保護した法律です。
明治時代の1911年に成立しています。
この当時は尋常小学校を卒業すると多くの人は労働力となりました。
18歳未満で禁止されたら,会社も困りますが,それ以上に本人の働き口がなくなって困ってしまいます。
正しくは12歳未満です。
よって間違いです。
答えを聞いて納得です。
4 救護法では,貧困であって15歳以下の幼者を救済の対象としていた。
戦前の義務教育の変遷を見ると,当初は4年間でしたが,1900年に6年に延長されています。
9年間に延長されたのは戦後の話です。
戦前は15歳ではないだろうと,クエスチョンマークを付けられれば,この問題は正解に近づきます。
答えは,13歳以下だそうです。
よって間違いです。
5 第二次世界大戦前の児童虐待防止法の対象年齢は16歳未満であった。
現在の児童虐待防止法は,2000年のものですが,1933年にも今とは別の法律が成立しています。
16歳は立派な大人だと見なされていた時代です。
16歳未満ということではないだろうと想像できることでしょう。
正しくは14歳未満でする答えを聞いて納得です。
よって間違いです。
<今日の一言>
社会福祉士の国家試験の勉強は,机に向かったものだけではない!!
3分の1程度は,一般社会で見聞きしたものが役立つ内容です。
そういう意味で,人生経験が豊富な社会人,40歳代,50歳代,そして60歳代の受験生には,学生にはない貴重な知識があるはずです。
その分,知恵もたくさん出せるはずです。
「年だから覚えられない」
逃げ道を作るのは簡単です。
年齢を重ねたからこそ,たくさんのことを知っていることもあるはずです。
記述式の試験なら,記憶力に勝る若者の方が有利かもしれません。
しかし,国試はマークシート。問題文の中に正解は必ずあります。
人生の中で得た知識,経験はかけがえのないものです。
国試にも必ず役立ちます。