社会福祉士の国試は19科目あります。
そのうち就労支援サービスと更生保護制度は問題数が少ないので,2科目で1群とされています。
2科目8問のうち,1点取れれば良いことになります。
人によって捉え方は違うかもしれませんが,この2科目では,更生保護制度の方が得点しやすい科目です。なぜなら覚えるべき項目が少ないからです。
もしかするとすべての科目の中で最も点数が取りやすい科目であるかもしれません。
つまり「相談援助の理論と方法」よりも点数が取りやすいと言えるわけです。
それにも関わらず,ここに気がつかず,歴史や人名を覚えることに躍起になるのは,戦略的に適切ではありません。
特に最後の科目ですし,なじみのない領域であることが,あまり勉強しないことにつながるのではないでしょうか。
この科目は4問もあります。しっかり勉強して,3~4問をねらいたいところです。
歴史や人名は,合格する人であっても,なかなか覚えられないものです。
合格する人は,法制度をかっちり覚えます。
合格できない人は,法制度をあいまいに覚えます。
何かには,歴史や人名も得意で,法制度も得意だ,という人もいるかもしれません。
しかし,国試は,90点あれば合格できます。
すべての領域が得意でなくても何とかなります。圧倒的な分量を占める法制度が合否を分けるのです。
さて,今日の問題です。
第25回・問題149
少年司法制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 少年法では少年を20歳に満たないものと規定しており,少年の社会内処遇及び指導について,18歳未満の者は児童相談所,18歳以上20歳未満の者は保護観察所が所管する。
2 家庭裁判所で決定する保護処分のうち,保護観察に付する決定の場合は保護観察官が,少年院送致の場合は家庭裁判所調査官が,その少年の処分終了まで継続して担当する。
3 家庭裁判所の審判に付すべき少年について,家庭裁判所は保護観察官に命じて,少年,保護者又は参考人の取調その他の必要な調査を行わせることができる。
4 家庭裁判所は,事件に関する調査及び観察のために,警察官・保護観察官,保護司,児童福祉司又は児童委員に対して,必要な援助をさせることができる。
5 少年法の基本理念に少年の健全育成があるが,これは児童自立支援施設又は児童養護施設に送致された少年に適用され,保護観察に付された少年には適用されない。
前回は,嘘をつく時,人は饒舌になる,というテーマを取り上げました。
実は法制度は,うまい人が作問すれば,余計な形容詞を使わなくても,間違い選択肢を選ばせることができます。
試験委員は苦労して作問するので,せっかく作った選択肢を選んでほしいと思います。
ほとんどの人が正解選択肢を選ぶような問題であれば,正解選択肢以外の選択肢は,明らかに間違いだと分かってしまうような問題,あるいは正解選択肢にひねりがなされていないことを意味します。
試験センターは,意図していないと思いますが,チームfukufuku21は,正解選択肢を選ぶ確率が50~60%程度なのが理想のように思います。
これによって,勉強をしっかりして国試に臨んだ人なら解けるし,そうでない人は解けない,という難易度になります。
さて,そんな視点で今日の問題を詳しく見て行きましょう。
1 少年法では少年を20歳に満たないものと規定しており,少年の社会内処遇及び指導について,18歳未満の者は児童相談所,18歳以上20歳未満の者は保護観察所が所管する。
ちょっと難しいですが,こんな時こそ,冷静に問題を読みましょう。
座り方を正して深呼吸する,などを行って,自分のペースを崩さないことが肝要です。
さて,社会内処遇と言えば,保護観察のことですね。
保護観察を所管しているのは保護観察所です。
児童相談所は,虞犯少年,触法少年について保護処分とならない少年を所管します。
年齢によって,分けられているものではないです。
よって間違いです。
「社会内処遇は保護観察」
この基本を押さえておくことが大切です。
これはいろいろなパターンで出題されます。
2 家庭裁判所で決定する保護処分のうち,保護観察に付する決定の場合は保護観察官が,少年院送致の場合は家庭裁判所調査官が,その少年の処分終了まで継続して担当する。
この時,初めて家庭裁判所調査官が出題されました。
家庭裁判所調査官は,家庭裁判所の審判に付すべき少年について,家庭裁判所の命令に従って,少年,保護者又は参考人の取調その他の必要な調査を実施しています。
少年院送致となった少年の面倒まで見ることはしません。
よって間違いです。
3 家庭裁判所の審判に付すべき少年について,家庭裁判所は保護観察官に命じて,少年,保護者又は参考人の取調その他の必要な調査を行わせることができる。
先述のように,少年,保護者又は参考人の取調その他の必要な調査を行うのは,家庭裁判所調査官です。よって間違いです。
4 家庭裁判所は,事件に関する調査及び観察のために,警察官・保護観察官,保護司,児童福祉司又は児童委員に対して,必要な援助をさせることができる。
これはかなり難しいです。
なぜならこれは参考書などなに書かれていなかったためです。
こんな時は,冷静に▲を付けましょう。焦って答えを出すと,間違う要因となるので注意しましょう。
5 少年法の基本理念に少年の健全育成があるが,これは児童自立支援施設又は児童養護施設に送致された少年に適用され,保護観察に付された少年には適用されない。
これは,間違い選択肢をつくる時の常とう手段です。
「〇〇は■■であるが,▲▲は■■ではない」といった文章校正になっています。
もちろん,保護観察に付された少年にも少年法の基本理念は適用されます。
よって間違いです。
さて,この問題のキーとなる部分を解説します。
必ず適用されるものではないですが,見たことがないものが出題される時は,間違い選択肢であることが多いものです。
この時点では,家庭裁判所調査官です。
しかも2つも選択肢を使って出題してきています。
見たことがないものが国試で出題されると,「勉強が足りなかった」と思うことでしょう。しかし,多くの場合は,そういったところには,正解は少ないものです。
そう割り切ることができれば,選択肢2と選択肢3は消去できて,選択肢4は残ります。
正解は4ということになります。
正解は4ということになります。
<今日のまとめ>
国試では,この判断を平均1分30秒で行うことになります。
「それは難しい」と思う人もあるでしょう。
しかし,かなり以前に紹介しましたが,平均1分30秒であり,すぐ答えが見つかる問題もあります。
普段,あまり文章を読むことがない人は,必ず読む訓練をして国試に臨んでください。
この訓練なしに合格をつかむのは,かなり難しいです。
問題を読む訓練は,問題を解くことでできます。
過去問を解く意味は,そこにあります。内容をしっかり覚えて行くことだけにとらわれていると,せっかくの訓練の機会を逸することになってしまうので,要注意です!!