平成元年度の改正カリキュラムでは,当初はあったものの,平成19年度のカリキュラム改正でなくなったものがいくつか復活しています。
その1つがコミュニティワーク(地域援助技術)です。
地域共生社会の実現に求められる社会福祉士を養成するためには,コミュニティワークが必要だからでしょう。
さて,今日のテーマは「地域アセスメントとは」です。
地域アセスメント(地域診断)とは,地域の福祉課題を明らかにするとともに地域の社会資源の把握,分析,開発や調整などを行うことで,コミュニティワークのプロセスの一つです。
今日の問題は,地域アセスメントという用語は使われていませんが,地域アセスメントに関連する問題です。
第32回・問題40
社会福祉協議会が地域において行う福祉調査や分析活動に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 災害時要援護者のニーズを視覚的に把握するために,デジタル地図の上に様々な情報を表示するGIS(地理情報システム)を用いた。
2 実際に虐待のおそれのある個別事例の検討会を,当該小地域における住民懇談会で実施した。
3 高齢者の訪問介護サービスに関するニーズの総量を具体的に推計するために,福祉総合相談窓口の担当者に聞き取り調査を行った。
4 障害のある当事者のニーズを把握するため,フォーカスグループインタビューを行った。
5 在宅で暮らす後期高齢者のニーズの全体像を把握するために,高齢者個人へのアンケート調査の回答フォームを社会福祉協議会のホームページ上に設置し,調査を実施した。
地域アセスメントの方法について問われています。
それでは解説です。
1 災害時要援護者のニーズを視覚的に把握するために,デジタル地図の上に様々な情報を表示するGIS(地理情報システム)を用いた。
これが1つめの正解です。
国土交通省のホームページによると,GIS(地理情報システム)は,コンピュータ上で様々な地理空間情報を重ね合わせて表示するためのシステムのことをいいます。
国土交通省ホームページ「GISとは」
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk1_000041.html
2 実際に虐待のおそれのある個別事例の検討会を,当該小地域における住民懇談会で実施した。
住民懇談会は専門職の事例検討会ではありません。
住民座談会では,一般的な例を用いるのが適切です。
3 高齢者の訪問介護サービスに関するニーズの総量を具体的に推計するために,福祉総合相談窓口の担当者に聞き取り調査を行った。
ニーズの総量を具体的に推計するのが目的なら,住民全体を対象として,全数調査を行うか,標本調査をすることが必要です。
標本調査を行う場合は,無作為抽出が欠かせません。
4 障害のある当事者のニーズを把握するため,フォーカスグループインタビューを行った。
これが2つめの正解です。
フォーカスグループインタビューは,共通の課題のあるグループに対して行う面接法です。
フォーカスグループインタビューを出題する時は,「グループでの合意を目指す」といった出題が多くみられます。
しかし,フォーカスグループインタビューはあくまでも面接法の一つです。参加者同士の合意を目指すようなことはありません。
5 在宅で暮らす後期高齢者のニーズの全体像を把握するために,高齢者個人へのアンケート調査の回答フォームを社会福祉協議会のホームページ上に設置し,調査を実施した。
高齢者だからといってインターネットを使えないということは決してありません。
しかし,ニーズの全体像を把握することは困難です。
後期高齢者を対象にしたものに限らず,インターネット調査は,母集団の縮図にはなりません。
答えられるのは,ネット環境があること,その問題に興味のある人などに限られるからです。