2023年10月24日火曜日

公的年金制度

日本の公的年金制度は,戦時中に被用者を対象とする厚生年金制度が誕生し,戦後に自営業者などを対象とする国民年金制度が誕生して,国民皆年金制度を形成しています。


それぞれに老齢年金,障害年金,遺族年金があり,制度がとても複雑です。


しかも,国民年金の被保険者は,第一号,第二号,第三号まであります。


第二号被保険者は,厚生年金の被保険者,第三号被保険者は,第二号被保険者の被扶養配偶者,第一号被保険者は,第二号,第三号被保険者ではないものです。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題55

 事例を読んで,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 Fさん(65歳女性)は,22歳からアパレル関係の大企業で正社員として働き,厚生年金にも加入していた。その後会社員の夫と結婚し,35歳の時に退職して専業主婦になった。48歳の時に個人事業主として手芸店を開き,現在ではかなりの事業収入を得ている。

1 Fさんが大企業で働いて厚生年金に加入していた時には,給与の額にかかわらず毎月定額の保険料を支払っていた。

2 Fさんは通算して10年以上年金制度に加入しているので,老齢基礎年金を受給できる。

3 Fさんが専業主婦であった期間は,Fさん自身が国民年金の保険料を納付する必要はない。

4 Fさんは,事業収入に応じた年金保険料を支払わなければならない。

5 Fさんは65歳なので老齢厚生年金を受給できるが,事業収入が基準を超える場合は年金額が減額される。


社会保障の事例問題の場合,年齢に着目する必要があります。


この場合は,Fさんは,65歳であることを押さえておきます。


それでは,解説です。


1 Fさんが大企業で働いて厚生年金に加入していた時には,給与の額にかかわらず毎月定額の保険料を支払っていた。


年金保険の保険料は,国民年金と厚生年金では異なります。


国民年金 定額制

厚生年金 報酬比例制(報酬によって保険料率が変わる)


2 Fさんは通算して10年以上年金制度に加入しているので,老齢基礎年金を受給できる。


これが1つめの正解です。


老齢基礎年金は,10年以上加入していることで受給権が生じます。


3 Fさんが専業主婦であった期間は,Fさん自身が国民年金の保険料を納付する必要はない。


これが2つめの正解です。


Fさんの夫は,会社員だったということ,Fさんが専業主婦になれるほどの給与を得ていたということから,Fさんの夫は,厚生年金の被保険者だったと考えられます。


そうすると,Fさんは国民年金の第三号被保険者だったと考えられます。


国民年金の第三号被保険者は,保険料を納付しません。


4 Fさんは,事業収入に応じた年金保険料を支払わなければならない。


収入に応じて,保険料が変わるのは,厚生年金です。


被用者であれば,70歳までは厚生年金に加入します。


しかし,Fさんは,厚生年金の加入者ではありません。


また,国民年金は,20歳から60歳未満の者が加入しますが,60歳以上64歳未満の者は,任意加入することができます。


しかし,Fさんは,65歳なので,国民年金の被保険者でもありません。


65歳の自営業者は,公的年金制度の保険料を払うことはありません。


5 Fさんは65歳なので老齢厚生年金を受給できるが,事業収入が基準を超える場合は年金額が減額される。


厚生年金には,厚生年金加入者の事業収入が基準を超える場合は年金額が減額,あるいは支給停止になる「在職老齢年金」という制度があります。


しかし,Fさんは,厚生年金の被保険者ではありません。



〈今日の注意ポイント〉


国民年金が出題される場合は,第三号被保険者に関連する知識が問われることがよくあります。


第三号被保険者は,第二号被保険者の被扶養配偶者です。保険料の支払いはありません。


近年の改正によって,第三号被保険者の要件に「日本国内に住所を有する者」が加わったことを合わせて覚えておきたいです。

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