今回のテーマは,出産育児一時金です。
医療保険の被保険者が出産した場合の出産費用と出産後にかかる育児費用を給付するものです。
実際に給付される金額は,出産費用を賄う程度しかないですが,本来は哺乳瓶,被服費,おむつなどを購入する費用も含んでいるらしいです。そのために「出産一時金」ではなく「出産育児一時金」という名称になっています。
おむつは,今は紙おむつになっているのでずっと購入しなければならないですが,布おむつの時代は,一度購入するとずっと使えたので「一時金」で良かったのでしょう。
健康保険の場合は,被保険者の被扶養配偶者が出産した場合にも給付され,その場合は「家族出産育児一時金」となります。
似たようなものに「出産手当金」があります。
出産手当金は,健康保険の被保険者が出産育児のために仕事を休み,その間に給与の支払いがなかった場合に給付されるものです。
健康保険の被保険者が出産した場合,出産育児一時金と出産手当金は,併給できる場合があります。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題54
事例を読んで,子育て支援などに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
会社員のDさん(32歳男性)と自営業を営むEさん(30歳女性)の夫婦は,間もなく第1子の出産予定日を迎えようとしている。Dさんは,厚生年金と健康保険の被保険者で,Eさんは国民年金と国民健康保険の被保険者である。
1 Eさんは,「産前産後期間」の間も国民年金の保険料を支払わなければならない。
2 Eさんが出産したときは,国民健康保険から出産育児一時金が支払われる。
3 Dさんが育児休業を取得する場合,健康保険から育児休業給付金が支給される。
4 Dさん夫妻の第1子の医療保険給付の一部負担は,義務教育就学前までは3割である。
5 Dさん夫妻の第1子が3歳に満たない期間については,月額2万円の児童手当が給付される。
(注) 「産前産後期間」とは,出産予定日又は出産日が属する月の前月から4か月間を指す。
この問題は「社会保障」で出題されたものです。
この科目を苦手としている人は,こういった問題が解けないからでしょう。
正解するためには,確実な知識が必要です。
しかし,制度に関する問題は,勉強次第で得点できるので,実力を高めるには見方につけたいです。
それでは,解説です。
1 Eさんは,「産前産後期間」の間も国民年金の保険料を支払わなければならない。
厚生年金も国民年金も産前産後期間は,保険料の納付は免除されます。
免除された期間は,納付したものとみなされ,将来,受け取る年金額に反映されます。
2 Eさんが出産したときは,国民健康保険から出産育児一時金が支払われる。
これが正解です。
Eさんは,国民健康保険の被保険者なので,国民健康保険から出産育児一時金が給付されます。
Eさんが,Dさんの被扶養者だった場合は,Dさんが加入する健康保険から家族出産育児一時金が給付されます。
3 Dさんが育児休業を取得する場合,健康保険から育児休業給付金が支給される。
育児休業給付は,雇用保険の制度です。
Dさんが受け取る育児休業給付金は,雇用保険から給付されます。
4 Dさん夫妻の第1子の医療保険給付の一部負担は,義務教育就学前までは3割である。
医療保険の一部負担は,義務教育就学前までは2割です。
5 Dさん夫妻の第1子が3歳に満たない期間については,月額2万円の児童手当が給付される。
児童手当の支給額が出題されるのはとても珍しいです。
児童手当の現時点(2023年10月)の支給額(月額)は,以下のとおりです。
0~3歳未満 |
一律15,000円 |
3歳~小学校就学前 |
第1子・第2子 10,000円 第3子以降 15,000円 |
中学生 |
一律10,000円 |
児童手当は,以上のように,法で金額が定められています。
なお,児童扶養手当は,物価スライド制を取り入れているので,法で金額は定められていません。
〈今日の注意ポイント〉
この問題では出産手当金は出題されていませんが,出産手当金と出産育児一時金は,名称が似ているために混同しないようにしてください。
また,医療保険制度は,「療養の給付」に加えて,現金給付されるものがあります。
出産手当と出産育児一時金のほかには,傷病手当金があります。
傷病手当金は,労災保険の休業補償給付と合わせて押さえておくことが必要です。