2023年10月18日水曜日

日本の社会保障の中心の制度とは?

 社会保障制度を分類すると


社会保険制度

社会福祉制度

生活保護制度


の3つとなります。


日本は,社会保険制度が中心です。社会保険制度は,一般所得者層(国民の大部分)を対象とする制度だからです。


社会保険制度は,一般所得者層を対象としたもの

社会福祉制度は,低所得者層を対象にしたもの

生活保護制度は,生活困窮者層を対象としたもの


社会福祉制度と生活保護制度は,社会扶助方式としてまとめることができます。


現在の介護サービスは,介護保険制度によって提供されています。

社会保険制度を取り入れたことの意味は,高齢者施策は,低所得者層を対象としたものから一般所得者層を対象にしたものに移行したことです。


社会保険制度は,事前に保険料を納付することによって,保険事故が生じた際に保険給付するものです。


社会福祉制度と比べると,サービスを利用することにスティグマを感じにくいと言えます。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題49

日本の社会保障制度の歴史的展開に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。

2 1961年(昭和36年)に国民皆保険が実施され,全国民共通の医療保険制度への加入が義務づけられた。

3 1972年(昭和47年)に児童手当法が施行され,事前の保険料の拠出が受給要件とされた。

4 1983年(昭和58年)に老人保健制度が施行され,後期高齢者医療制度が導入された。

5 1995年(平成7年)の社会保障制度審議会の勧告で,介護サービスの供給制度の運用に要する財源は,公的介護保険を基盤にすべきと提言された。


選択肢3は制度的におかしいです。


それでは解説です。


1 1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。


この選択肢はもちろんあやまりですが,まったく同じ文章やほぼ同じ文章で,このほかに2回出題されています。


・1950年(昭和25 年)の社会保障制度審議会の勧告では,日本の社会保障制度は租税を財源とする社会扶助制度を中心に充実すべきとされた。  

・1950年の社会保障制度審議会勧告は,日本の社会保障制度について,租税を財源とした社会扶助制度を中心に充実させるとした。   


ほぼ同じ表現で複数回に出題されることは,めったにありません。法制度以外ではないかもしれません。


2 1961年(昭和36年)に国民皆保険が実施され,全国民共通の医療保険制度への加入が義務づけられた。


1961年に国民皆保険が実施されたのは正しいですが,医療保険は,全国民共通ではありません。

現在と同じです。


3 1972年(昭和47年)に児童手当法が施行され,事前の保険料の拠出が受給要件とされた。


児童手当は,社会扶助方式によるものです。事前の保険料の拠出が受給要件なのは社会保険方式です。


4 1983年(昭和58年)に老人保健制度が施行され,後期高齢者医療制度が導入された。


後期高齢者医療制度が導入されたのは,老人保健法が「高齢者の医療の確保に関する法律」に変わった,2008年(平成20年)のことです。


5 1995年(平成7年)の社会保障制度審議会の勧告で,介護サービスの供給制度の運用に要する財源は,公的介護保険を基盤にすべきと提言された。


これが正解です。


1995年の社会保障制度審議会の勧告の内容をよく知らなくても,その時期を考えると正解そうだと推測することが可能です。


〈今日の注意ポイント〉


日本の社会保障制度は,社会保険制度が中心です。社会保険制度は,一般所得者層(国民の大部分)を対象とする制度だからです。

これを押さえておくと,財源も迷うことはありません。

日本の社会保障制度の中心は,社会保険制度なのですから,財源内訳で,公費(税)が社会保険料を上回ることはありません。


公費(税)は社会保険料よりも多い


と出題された場合は,すぐに消去することができます。かなり重要です。

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