2023年10月8日日曜日

ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)

 ソーシャル・インパクト・ボンドとは,社会的問題を解決するために,官民が共同協働して目標を設定し,民間事業者が資金を調達して,設定した目標を達成した場合,行政が資金提供者に事業費を支払うものです。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題39 

地域福祉推進のための財源に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 厚生労働省の「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書(2008年(平成20年))では,住民の地域福祉活動の資金は原則として公的財源によるとされている。

2 厚生労働省の「地域力強化検討会最終とりまとめ」(2017年(平成29年))では,地域の課題を地域で解決していく財源として,クラウドファンディングやSIB(Social Impact Bond)等を取り入れていくことも有効であるとされている。

3 社会福祉法の改正(2016年(平成28年))では,社会福祉法人は,収入の一定割合を地域における公益的な取組の実施に充てなければならないとされた。

4 「平成29年度特定非営利活動法人に関する実態調査」(内閣府)によれば,NPO法人の収入は,「会費」,「寄附金」が大半を占めている。

5 共同募金実績額の推移をみると,年間の募金総額(一般募金と歳末助けあい募金の合計)は,1995年(平成7年)から2017年(平成29年)までの約20年間,一貫して増加している。


この問題は,知識そのものを問うタクソノミーⅠ型ではなく,知識があることを前提にして,一度思考することで答えるタイプのタクソノミーⅡ型です。


もしかすると,2度思考して答えを出すタイプのタクソノミーⅢ型かもしれません。


いずれにせよ,思考しなければ正解できないタイプの問題であることには間違いありません。


過去問を解くのは,思考する訓練でもあることを覚えておきたいです。


それでは解説です。


1 厚生労働省の「これからの地域福祉のあり方に関する研究会」報告書(2008年(平成20年))では,住民の地域福祉活動の資金は原則として公的財源によるとされている。


まずはこの問題のテーマは,ファンドレイジング(資金調達)となっていることに気がつくことが必要です。


そうすると,今の時代に公的財源に頼ることを厚生労働省が提言するとは考えられないだろうと推測することができます。


2 厚生労働省の「地域力強化検討会最終とりまとめ」(2017年(平成29年))では,地域の課題を地域で解決していく財源として,クラウドファンディングやSIB(Social Impact Bond)等を取り入れていくことも有効であるとされている。


これが正解です。


ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)は知らなくても,クラウドファンディングは知っていることが必要です。


選択肢1と比べると,民間資金を活用するこの選択肢のほうが今の時代に適切だと推測することができます。


知らない用語があるとそこで思考が止まってしまう傾向がある人は要注意です。


この問題は,ソーシャル・インパクト・ボンド等とは出題していないところがポイントです。


これだと知識自体も持たない人が多くいたはずです。

そうすると,知識を問う単なるタクソノミーⅠ型となってしまいます。


クラウドファンディングやSIB(Social Impact Bond)等と出題することで,タクソノミーⅡ型,あるいはⅢ型の問題として成り立たせています。


国家試験は決して意地悪ではありません。


3 社会福祉法の改正(2016年(平成28年))では,社会福祉法人は,収入の一定割合を地域における公益的な取組の実施に充てなければならないとされた。


社会福祉法では公益的な取組については,以下のように規定されるものです。


社会福祉法人は,社会福祉事業及び公益事業を行うに当たっては,日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して,無料又は低額な料金で,福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。


この規定は覚えておいてほしいものです。


この選択肢で思考したいのは,「収入の一定割合」という部分です。


「収益の一定割合」ならまだ理解可能ですが,「収入の一定割合」であれば,赤字となった場合でも,無料又は低額な料金で公益的な取組を実施しなければならなくなってしまいます。


近世の年貢でもあるまいし,こんなことを強要する規定するわけがないでしょう。


4 「平成29年度特定非営利活動法人に関する実態調査」(内閣府)によれば,NPO法人の収入は,「会費」,「寄附金」が大半を占めている。


NPO法人の収入は,参考書などにも書かれているので知識として持っていた人も多かったと思います。


これは,知識で答えられるタクソノミーⅠ型です。


NPO法人制度を創設した時の目的の一つには,寄附金などを資金として活動することがありました。


しかし,国が思うほど日本には欧米のような寄附文化は根付いていなかったようです。


NPO法人の主な収入は,事業収入となっています。


5 共同募金実績額の推移をみると,年間の募金総額(一般募金と歳末助けあい募金の合計)は,1995年(平成7年)から2017年(平成29年)までの約20年間,一貫して増加している。


1995年(平成7年)は,保護率が最も低かった年です。

その知識があると,逆に引っ掛けられてしまうかもしれません。


しかし,多くの場合,一貫して増加するには,明確に説明できるほどの背景が存在します。


共同募金の総額は,1995年(平成7年)を境に,一貫して減少しています。


いわゆるバブル景気が崩壊して,収入が減り,共働き世帯が増加していく時代に重なります。


募金方法別では,戸別募金が7割を占めますが,その戸別募金の減少が特に目につきます。


戸別募金は,自治体役員などが各家庭を訪問して募金依頼するタイプですが,日中,不在にしている家庭が多いことも募金額の減少に関連しているように思います。


だからといって,共同募金会も手をこまねいているわけではありません。


近年増加しているのは,イベント会場で募金依頼するタイプのイベント募金です。

なお,イベント募金の募金額は,令和元年度までは順調に増加していましたが,令和2年度は,イベントの激減とともに募金額も激減しています。

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