医療観察法の目的は,心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り,社会復帰を促進することです。
医療観察法は社会復帰の促進を目的としているのは,一般的なイメージと少し違うと思うので,注意が必要です。
それでは今日の問題です。
第32回・問題62
医療観察制度に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 対象者は,起訴された者に限られており,起訴されていない者は含まれない。
2 保護観察所には,対象者の社会復帰を支援する,精神保健福祉士等の専門家である社会復帰調整官が配置されている。
3 「医療観察法」の目的は,精神障害者の医療及び保護を行い,その自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い,精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることである。
4 入院による医療の決定を受けた者に対しては,指定入院医療機関で,専門的な医療の提供が行われるとともに保健所による退院後の生活環境の調整が実施される。
5 通院による医療の決定を受けた者及び退院を許可された者は,処遇の実施計画に基づいて,期間の定めなく,地域の指定医療機関による医療を受ける。
(注) 「医療観察法」とは,「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。
なかなかの難問です。
それでは解説です。
1 対象者は,起訴された者に限られており,起訴されていない者は含まれない。
起訴されていないものも対象です。
明らかに心身喪失等である場合は,起訴されません。
2 保護観察所には,対象者の社会復帰を支援する,精神保健福祉士等の専門家である社会復帰調整官が配置されている。
これが正解です。
精神保健観察などを実施する社会復帰調整官は,保護観察所に配置されています。
3 「医療観察法」の目的は,精神障害者の医療及び保護を行い,その自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い,精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることである。
「国民の」という用語が入っているので医療観察法ではないと判断できます。
この内容は,精神保健福祉法の目的です。
4 入院による医療の決定を受けた者に対しては,指定入院医療機関で,専門的な医療の提供が行われるとともに保健所による退院後の生活環境の調整が実施される。
生活環境の調整は,保護観察所が行います。
5 通院による医療の決定を受けた者及び退院を許可された者は,処遇の実施計画に基づいて,期間の定めなく,地域の指定医療機関による医療を受ける。
地域の指定医療機関による医療を受ける期間は,最長3年間,必要な場合は2年を超えない範囲で延長できます。
〈今日の注意ポイント〉
入院によらない医療を受ける場合,精神保健観察に付されます。
精神保健観察は,保護観察所が実施します。
精神保健観察にかかわるのは,保護観察所に配置される社会復帰調整官です。
保護観察所には,保護観察官も配置されていますが,精神保健観察(つまり医療観察法)には,保護観察官及び保護司はかかわりません。