今回は,発達障害者支援法を取り上げます。
国家試験では,出題頻度はあまり高くないですが,重要なダークホース的な法制度です。
発達障害者の定義
発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの。 |
社会的障壁は,2016年(平成28年)の改正によって,加わったものです。
障害者に関する権利条約を受けて改正されたことがよくわかります。
社会的障壁に関する関連情報
https://fukufuku21.blogspot.com/2023/10/blog-post_26.html
社会的障壁については,基本理念にも記載があります。
〈基本理念〉
・発達障害者の支援は、全ての発達障害者が社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないことを旨として、行われなければならない。 ・発達障害者の支援は、社会的障壁の除去に資することを旨として、行われなければならない。 ・発達障害者の支援は、個々の発達障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、切れ目なく行われなければならない。 |
社会的障壁とは,
日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のもの
をいいます。
物のバリアだけではなく,こころのバリアなども含む広い概念です。
なお,発達障害者支援法に規定されている社会資源は,発達障害者支援センターのみです。
〈発達障害者支援センターの業務〉
・発達障害者及びその家族その他の関係者に対する相談,情報の提供,助言。 ・専門的な発達支援・就労支援。 ・関係機関及び民間団体,並びにこれに従事する者にする情報提供,研修。 ・関係機関及び民間団体との連絡調整。 |
それでは,今日の問題です。
第32回・問題60
発達障害者支援法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 市町村は,個々の発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保,就労定着のための支援に努めなければならない。
2 都道府県は,支援体制の課題を共有するとともに,関係者の連携の緊密化を図るため,発達障害者支援地域協議会を設置しなければならない。
3 発達障害者とは,発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいう。
4 都道府県知事は,発達障害者に対する専門的な就労の支援等を障害者就業・生活支援センターに行わせることができる。
5 都道府県知事は,該当する者に精神障害者保健福祉手帳を交付する。
この問題の答えは,すぐわかると思いますが,解説します。
汚い引っ掛けがあります。
1 市町村は,個々の発達障害者の特性に応じた適切な就労の機会の確保,就労定着のための支援に努めなければならない。
就労の機会の確保,就労定着のための支援に努めなければならないのは,国及び都道府県です。
市町村が発達障害者の就労の機会の確保などを行うのは,かなり困難です。
2 都道府県は,支援体制の課題を共有するとともに,関係者の連携の緊密化を図るため,発達障害者支援地域協議会を設置しなければならない。
発達障害者支援地域協議会の設置は任意です(都道府県)。
●●協議会の設置が義務である法制度があるのかわからないほど,●●協議会の設置は,任意です。
3 発達障害者とは,発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいう。
これが正解です。
4 都道府県知事は,発達障害者に対する専門的な就労の支援等を障害者就業・生活支援センターに行わせることができる。
発達障害者に対する専門的な就労の支援等を行うのは,発達障害者支援センターです。
5 都道府県知事は,該当する者に精神障害者保健福祉手帳を交付する。
精神障害者保健福祉手帳を交付するのは,都道府県知事です。
しかし,精神障害者保健福祉手帳の根拠法は,精神保健福祉法なので,誤りです。
〈今日の注意ポイント〉
根拠法に注意!
社会福祉士の国家試験では,どの法制度に規定されているのかを問う問題はかなりの頻度で出題されます。
問われると意外とわからなくなるので注意が必要です。整理して覚えておきたいです。