今回は,災害対策基本法を取り上げます。
災害対策基本法は,1959年(昭和34年)に発生した伊勢湾台風をきっかけとして,1961年(昭和36年)に成立しています。
災害対策基本法に限らず「〇〇〇〇基本法」は,理念法に位置づけられ,国,地方公共団体,国民に何かの取り組みを促す役割を果たします。
具体的な対策等は,個別法が定めるのが一般的です。
しかし,災害対策基本法は,最初からそうだったのか,改正を重ねるうちにボリュームが増えたのか,現時点では,117条もあります。
それだけ日本は災害が多いということなのでしょう。
近年ではかなりの頻度で出題されています。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題35
ボランティア活動について各法律で規定されている事項に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 災害対策基本法では,ボランティアによる防災活動が災害時において果たす役割が重要であることから,国及び地方公共団体は,その自主性を尊重しつつ,ボランティアとの連携に努めなければならないとされている。
2 社会福祉法では,市町村社会福祉協議会が,ボランティアコーディネーターを配置しなければならないとされている。
3 学校教育法では,全ての小中学校でボランティア活動など社会奉仕体験活動を実施しなければならないとされている。
4 特定非営利活動促進法では,特定非営利活動法人の役員は,無償のボランティアでなければ就任できないとされている。
5 社会福祉法では,災害救助法が適用される災害が発生した場合,都道府県共同募金会は,当該都道府県の区域内に限って災害ボランティアセンターの経費に準備金を拠出しなければならないとされている。
こういった問題を目の当たりにすると心臓がバクバクしてしまうかもしれません。
それでは解説です。
1 災害対策基本法では,ボランティアによる防災活動が災害時において果たす役割が重要であることから,国及び地方公共団体は,その自主性を尊重しつつ,ボランティアとの連携に努めなければならないとされている。
これが正解です。
災害対策基本法では,ボランティアとの連携が規定されています。
国及び地方公共団体は、ボランティアによる防災活動が災害時において果たす役割の重要性に鑑み、その自主性を尊重しつつ、ボランティアとの連携に努めなければならない。
ボランティアが法に登場するのは極めて珍しいことです。
この規定は,おそらく阪神・淡路大震災後の改正によって加わったのではないかと思います。
なぜなら,阪神・淡路大震災のあった1995年(平成7年)はボランティアの重要性が認識されたために「ボランティア元年」と呼ばれているからです。
阪神・淡路大震災では,ボランティアが全国から大勢駆け付けたものの十分に機能することができませんでした。
その教訓を生かして,ボランティアコーディネーターが配置されるようになり,2011年(平成23年)の東日本大震災では,ボランティアが機能したことを覚えている人もいるでしょう。
それでは,正解以外も確認します。
2 社会福祉法では,市町村社会福祉協議会が,ボランティアコーディネーターを配置しなければならないとされている。
ボランティアコーディネーターは,法的根拠がありません。
3 学校教育法では,全ての小中学校でボランティア活動など社会奉仕体験活動を実施しなければならないとされている。
社会奉仕体験活動の実施は,努力義務です。
「全て」は正解になりにくいものです。
4 特定非営利活動促進法では,特定非営利活動法人の役員は,無償のボランティアでなければ就任できないとされている。
NPO法人の役員は,役員総数の3分の1以内なら報酬を受け取ることができます。
5 社会福祉法では,災害救助法が適用される災害が発生した場合,都道府県共同募金会は,当該都道府県の区域内に限って災害ボランティアセンターの経費に準備金を拠出しなければならないとされている。
共同募金は,その区域内で配分しますが,阪神・淡路大震災を受けて,2000年(平成12年)の改正で,準備金を積み立てて,他の共同募金会に拠出することができるようになっています。
今日の問題の中では,一番重要なものです。つまり覚えておきたいです。
〈今日の注意ポイント〉
このような問題を見ると,今までの勉強は何だったのだろうと無力感にさいなまれることもあるでしょう。
しかし,試験後に自己採点してみると意外と正解できているものです。
今後の国家試験では突飛な問題が出題されることが少なくなるかもしれませんが,勉強したことがない問題が出題されても動じない強い気持ちが必要です。