公的年金制度はかなり複雑なので覚えるのが大変ですが,しっかり覚えると自分の生活にも役立ちます。
さて,今日のテーマは,遺族年金です。国家試験ではめったに出題されませんが,押さえていきたいと思います。
〈遺族の範囲〉
遺族基礎年金 |
子のいる配偶者,子。 |
遺族厚生年金 |
配偶者,子,父母,孫又は祖父母。 |
遺族厚生年金のほうが範囲が広くなっています。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題52
遺族年金に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は,生計を同じくするその子の父または母がある間は支給停止される。
2 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は,その子が婚姻した場合でも引き続き受給できる。
3 遺族基礎年金は,死亡した被保険者の孫にも支給される。
4 受給権を取得した時に,30歳未満で子のいない妻には当該遺族厚生年金が10年間支給される。
5 遺族厚生年金の額は,死亡した者の老齢基礎年金の額の2分の1である。
この問題が出題された時に受験した人は,とても難しく感じたのではないかと思います。
しっかり勉強して国家試験に臨んだ人が難しいと感じる問題は,ほかの受験生も難しいと感じているものです。
それを覚えておきたいです。
それでは解説です。
1 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は,生計を同じくするその子の父または母がある間は支給停止される。
これが正解です。
この問題が難しいのは,この選択肢が正解だったからです。
ほかの選択肢を消去できないと正解できないタイプの問題です。
2 死亡した被保険者の子が受給権を取得した遺族基礎年金は,その子が婚姻した場合でも引き続き受給できる。
遺族基礎年金を受給できる子の年齢は,
18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか,又は20歳未満であって障害等級に該当する障害の状態にあり,かつ,現に婚姻をしていないこと。
となっています。
民法の改正によって,婚姻できる年齢は男女ともに18歳以上に引き上げられています。
そのため,「婚姻していないこと」という支給条件に当てはまるのは,18歳以上20歳未満の障害者ということになります。
いずれにせよ,婚姻している者は支給対象とはなりません。
3 遺族基礎年金は,死亡した被保険者の孫にも支給される。
遺族基礎年金の支給対象となる遺族は,子あるいは子のある配偶者です。
孫が支給対象となるのは,遺族厚生年金です。
4 受給権を取得した時に,30歳未満で子のいない妻には当該遺族厚生年金が10年間支給される。
遺族厚生年金は,遺族基礎年金と異なり,子のいない配偶者にも支給されます。
ただし,受給権を取得した時点で30歳未満だった場合は,5年間の有期支給となります。
5 遺族厚生年金の額は,死亡した者の老齢基礎年金の額の2分の1である。
遺族厚生年金の額は,死亡した者の「老齢厚生年金」の額の4分の3です。
〈今日の注意ポイント〉
過去問は,正解するために解くのではありません。出題されているものを覚えるためです。
正解することも大切なことですが,正解することを目的に問題を解くのはやめましょう。