2023年10月22日日曜日

都道府県が保険者となる社会保険制度

日本の社会保険制度は5つありますが,そのうち,都道府県が保険者なのは国民健康保険だけです。

 

国民健康保険は,2018年(平成30年)改正によって市町村とともに都道府県が保険者となりました。

 

この改正以前には,都道府県が保険者の社会保険制度はありませんでした。

 

国民健康保険は,以前は市町村国保と呼ばれていましたが,現在では,都道府県等が実施する国民健康保険と呼ばれます。

 

国民健康保険には,都道府県等が実施する国民健康保険のほかに,国民健康保険組合(国保組合)があるので,それと区別するからです。

 

医療保険制度は,大きく分けると,健康保険制度と国民健康保険制度がありますが,それぞれに組合が保険者になるものを忘れないようにしておきたいです。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題53 

医療保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 後期高齢者医療制度には,75歳以上の全国民が加入する。

2 後期高齢者の医療費は,後期高齢者の保険料と公費で折半して負担する。

3 都道府県は,当該都道府県内の市町村とともに国民健康保険を行う。

4 健康保険組合の保険料は,都道府県ごとに一律となっている。

5 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の給付費に対し,国は補助を行っていない。

 

答えはすぐ分かると思いますが,解説します。

 

1 後期高齢者医療制度には,75歳以上の全国民が加入する。

 

これは,一読すると正解だと思う人もいると思います。

しかし,大切なことを忘れています。

 

生活保護受給者は,後期高齢者医療制度の対象にはなりません。

生活保護受給者の医療ニーズには,医療扶助が対応するからです。

 

2 後期高齢者の医療費は,後期高齢者の保険料と公費で折半して負担する。

 

〈後期高齢者医療制度の財源割合〉

保険料:1割

後期高齢者支援金:4割

公費:5割

 

後期高齢者医療制度の特徴は,後期高齢者支援金という,現役世代の医療保険者からの拠出金があることです。

 

後期高齢者支援金は忘れがちなので,要注意です。

 

3 都道府県は,当該都道府県内の市町村とともに国民健康保険を行う。

 

これが正解です。

 

4 健康保険組合の保険料は,都道府県ごとに一律となっている。

 

健康保険組合の保険料は,各保険者がそれぞれ独自に定めます。

 

5 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の給付費に対し,国は補助を行っていない。

 

医療保険に対しては,国庫補助と国庫負担があります。

ここでは,国庫補助と国庫負担の違いは問われないので,簡単に以下のように整理してみます。

保険者

療養の給付の費用

事務費用

協会けんぽ

あり

あり

健康保険組合

なし

あり

都道府県等が行う国民健康保険

あり

あり

国民健康保険組合

なし

あり

 

 

注意すべき点は,いずれの保険者に対しても事務費用に対する国の負担がありますが,健康保険組合と国民健康保険組合の療養の給付には,国の補助はないことです。

 

 

〈今日の注意ポイント〉

 

日本の社会保険制度は,5つあります。

 

そのうち,都道府県が保険者であるのは,国民健康保険制度のみです。

 

保険者は,意外と抜け落ちがちなので,必ず押さえておきたいです。

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