社会福祉士の国家試験に出題される多くの法制度は,厚生労働省が所管しています。
厚生労働省が所管していない主な法律
・障害者基本法(内閣府)
・子ども・子育て支援法(内閣府)
・こども基本法(こども家庭庁)
・更生保護法(法務省)
注意したいのは,児童福祉法です。
児童福祉法は厚生労働省の所管ですが,児童福祉法の障害児に関する部分は内閣府がかかわります。内閣府が管轄しているこども施策の一環だからでしょう。
こども家庭庁は,内閣総理大臣直属の外局です。
障害者総合支援法では,障害児に関する事項を含むものとして政令で定める事項については,内閣総理大臣及び厚生労働大臣とすると規定されています。
児童福祉法を所管しているのは,厚生労働省ですが,障害児に関するものは内閣総理大臣と厚生労働大臣が主務を担います。
例えば,「障害児通所支援等の提供体制を整備し,障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(基本指針)を定めるのは,内閣総理大臣です。
都道府県は,都道府県障害児福祉計画を定め,又は変更したときは,遅滞なく,これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
といったように規定されます。
話は戻って,障害者基本法です。
障害者基本法は,障害者に関する権利条約を批准するために2011年(平成23年)に改正されました。
そのために,障害者基本法は,障害者に関する権利条約の理念が色濃く反映されています。
この時の改正では,障害者の定義に「社会的障壁」が加わり,「合理的配慮」が規定されています。
障害者に関する権利条約の理念には,
私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)
があることも合わせて覚えておきたいです。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題61
障害者基本法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 法の目的では,障害者本人の自立への努力について規定されている。
2 都道府県は,都道府県障害者計画の策定に努めなければならないと規定されている。
3 国及び地方公共団体は,重度の障害者について,終生にわたり必要な保護等を行うよう努めなければならないと規定されている。
4 社会的障壁の定義において,社会における慣行や観念は除外されている。
5 障害者政策委員会の委員に任命される者として,障害者が明記されている。
障害者基本法は,36条で構成されます。
●●基本法は,このように細かい規定はされません。細かいことは,個別法で規定します。
それでは解説です。
1 法の目的では,障害者本人の自立への努力について規定されている。
かつては,この規定がありましたが,2004年(平成16年)の改正で,削除されています。
この時の改正では,障害者差別の禁止が規定されたことも覚えておきたいです。
2 都道府県は,都道府県障害者計画の策定に努めなければならないと規定されている。
障害者計画の策定は義務です。
3 国及び地方公共団体は,重度の障害者について,終生にわたり必要な保護等を行うよう努めなければならないと規定されている。
この規定も2004年(平成16年)の改正で,削除されています。
4 社会的障壁の定義において,社会における慣行や観念は除外されている。
社会的障壁
日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの
5 障害者政策委員会の委員に任命される者として,障害者が明記されている。
これが正解です。
障害者政策委員会は,内閣府に設置されます。
障害者基本計画の実施状況を監視し,必要があると認めるときは,内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告すること。
などを行います。
〈政策委員会の委員〉
障害者,障害者の自立及び社会参加に関する事業に従事する者並びに学識経験のある者のうちから,内閣総理大臣が任命する。
障害者が含まれるのは,障害者に関する権利条約の理念である
「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」
がベースにあるためです。
〈今日の注意ポイント〉
障害者基本法は,障害者施策の方向性を定める理念法です。
障害者基本法を所管しているのは,内閣府です。
また,障害児に関するものは,内閣総理大臣が主務を担います。
障害者に関する施策は「障害者に関する権利条約」,障害児に関する施策は「児童に関する権利条約」が関連します。多くの省庁の連携が必要なので,内閣総理大臣が司令塔となります。