2020年9月30日水曜日

リーダーシップのコンティンジェンシー理論

今回は,リーダーシップ理論を取り上げます。


現代のリーダーシップ理論は,特性論を経て行動理論が主流です。


特性論は,優れたリーダーシップを発揮できるのは,優れた素養を生まれ持ったリーダーである,という考え方です。


ところが,研究を進めても,優れた素養について,共通するものを見出すことができず,衰退します。


現代は,優れたリーダーシップは,行動によって決まるとされる行動理論に移ってきています。


行動理論には2種類あります。


一つは,優れたリーダーシップ行動はこういったタイプであると示すものです。

PM理論がこのタイプです。


もう一つは,優れたリーダーシップ行動は,状況によって変わるとする「コンティンジェンシー理論」です。


当然ながら,コンティンジェンシー理論は,「最も優れたリーダーシップ行動は〇〇である」といったことは言いません。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題123 リーダーシップに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 コンティンジェンシー理論では,特定のリーダーシップ行動の普遍的有効性を重視する。

2 行動アプローチでは,リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉える。

3 変革型リーダーシップ論では,メンバー個々の動機づけや知的刺激を排除するリーダーの行動を重視する。

4 リーダーシップの特性論では,課題志向型と人間関係志向型の二つの行動を重視する。

5 フォロワーシップ理論では,フォロワーの自律性を引き出すリーダーの役割を重視する。


リーダーシップ理論の知識がないと,いやになってしまうような問題かもしれません。


正解は,

5 フォロワーシップ理論では,フォロワーの自律性を引き出すリーダーの役割を重視する。


改めて読むと「なるほど」と思うかもしれませんが,これわ正解だと思うのはなかなか難しい問題です。


その理由は,

4 リーダーシップの特性論では,課題志向型と人間関係志向型の二つの行動を重視する。


特性論は,リーダーシップ行動を重視するものではなく,優れたリーダーは優れた素養を生まれ持っていると考えるものです。


つまり,リーダーシップは学ぶものではなく,リーダーになるべき人がリーダーになると考えて良いでしょう。特性論は,あまりに前時代的だと思いませんか。


特性論を述べたものは,


リーダーシップという影響力の実体をリーダー個人の身体的・精神的資質として捉える。


よほどひねくれた試験委員でない限り,特性論を正解にする問題はないように思います。

特性論では,リーダーシップは学ぶことができないと考えます。


それよりは,コンティンジェンシー理論を学んでもらった方が良いです。


コンティンジェンシー理論には,

フィードラー理論

SL理論

パス・ゴール理論

などがあります。


コンティンジェンシー理論を押さえるポイントは,適切なリーダーシップは,状況によって変わるものであるというところです。


コンティンジェンシー理論にもかかわらず,唯一の方法がある,といったものは,すべて間違いとなります。


最低でもこれだけは押さえておきたいです。

2020年9月29日火曜日

集団思考の危険性

今回は,集団について学んでいきたいと思います。

 

集団については,「社会理論と社会システム」でも出題されますが,「福祉サービスの組織と経営」っぽいものとして,「集団思考」があります。

 

みんなで考えて導き出したことは,適切になりそうですが,実はそうでもないことを覚えておきたいです。

 

一人で意思決定するよりも危険な結論を導きだすことは,リスキーシフトといいます。

一人で意思決定するよりも無難な結論を導きだすことは,コーシャスシフトといいます。

 

なお,集団思考は,集団浅慮ともいいます。

 

それでは,今日の問題です。

 

29回・問題122 集団のパフォーマンスに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 リーダーを中心にまとまりの良い集団では,集団浅慮は起きない。

2 社会的手抜きは,集団の作業では発生しない。

3 社会的促進は,複雑で不慣れな課題遂行時に起きる。

4 グループ間のコンフリクトは,あるグループが他のグループに対して優位に立とうとするときに生じる。

5 チームでメンタルモデルが共有されていると,チームのパフォーマンスが減退する。

 

正解は,選択肢4です。

4 グループ間のコンフリクトは,あるグループが他のグループに対して優位に立とうとするときに生じる。

 

改めて読んでみると,そうだな,と思えるでしょう。

 

しかし,そんなに簡単に正解できないのが国試の怖いところです。

 

この中で,知識不足の人が間違いそうなのは,

 

3 社会的促進は,複雑で不慣れな課題遂行時に起きる。

 

社会的促進は,国試で何度も出題されてきたものです。

 

周りの人に影響されて,作業が促進することが社会的促進です。

 

単純で慣れた作業の方がより促進するとされています。

徒競走で,速いグループに入るとタイムが上がるのは,社会的促進で説明することができます。


<今日の一言>


対義語のあるものに注意!


今日の問題では


複雑 ⇔ 単純

不慣れ ⇔ 慣れ

減退 ⇔ 増進

です。

国家試験ではこれらを入れ替えて出題すれば,それっぽい間違い選択肢をつくることができます。

内容によほど自信がないかぎり,慎重に選ぶのが適切でしょう。

右と左,上と下なども同様です。

そのほかに注意したいのは,具体的な数値が出題されている選択肢です。

社会保障給付費や国民医療費のように,何度も出題されているものは,具体的な数値を入れて出題しますが,初めて出題されたようなもので,具体的な数値が入っているものが正解になることは少ない,ということも覚えておきたいです。

2020年9月28日月曜日

ナレッジマネジメントについて

ナレッジマネジメントとは,個人の知識を組織の知識に変える管理手法のことをいいます。


個人の知識のことは,暗黙知といいます。

組織の知識のことは,形式知といいます。


昔は,先輩の背中を見て学ぶ,といったように知識・技術は人から教わるものではなく,自分で身につけるものでした。


しかし,個々の知識・経験を組織で共有してみんなで学んだ方が,質管理の面で有効です。


それでは今日の問題です。


第29回・問題121 次の記述のうち,個人が暗黙的に行ってきた仕事の仕方(暗黙知)を形式知化する方法に当たるものとして,正しいものを1つ選びなさい。

1 OJTを通して,先輩職員の仕事の仕方を模倣する。

2 各担当係が紙媒体で管理していた業務記録を電子データベース化する。

3 熟練の職員が行う仕事の仕方を文章化し,マニュアルを作る。

4 法人の理念と行動規範を毎日唱和し,職員に周知させる。

5 新人教育でマニュアルの読み合わせを徹底し,マニュアルがなくても仕事ができるようにする。


この年の国家試験を受験した人は,この問題を見てさぞかしびっくりしたのではないでしょうか。


国家試験では,どれだけ勉強しても,勉強したことがない問題は出題されます。


そういった問題は,知識が不足する中,知っていることをつなぎ合わせて工夫して答えを考え出すことが必要です。


決してひるむことなく考えることで,正解できる可能性が高まります。


さて,この問題の正解は,選択肢3です。


3 熟練の職員が行う仕事の仕方を文章化し,マニュアルを作る。


形式知は,知識を形のあるものとして表わすものです。


マニュアル化することが,形式知の代表です。


迷うのは,


5 新人教育でマニュアルの読み合わせを徹底し,マニュアルがなくても仕事ができるようにする。


かもしれません。


マニュアルが作っているのは形式知ですが,そのあとマニュアルを使わなくなるのでは,また暗黙知となります。


仕事の中で新しく学んだことや経験したものをマニュアルに反映すると,形式知となります。


1 OJTを通して,先輩職員の仕事の仕方を模倣する。

4 法人の理念と行動規範を毎日唱和し,職員に周知させる。


どちらも,形になっていないので,形式知ではありません。


2 各担当係が紙媒体で管理していた業務記録を電子データベース化する。


電子データベース化するのは,適切でしょう。


しかし,それを分析して,リスクマネジメントや質管理(クオリティコントロール)に役立てないと,何の意味もありません。


<今日の一言>


難しい問題だと思っても,決してひるまないこと


国家試験は,社会福祉士のあるべき姿を追い求めて出題します。

知識があっても,自分で考えることができない人は,現場では求められていないのです。

また,「時間をかけて考えれば解ける」でもだめです。時間はすべての受験生に平等です。

決められた時間で正解できるようになるためには,訓練が必要です。

2020年9月27日日曜日

社会医療法人とは

医療法人のうち,一定の条件を満たすと「社会医療法人」となることができます。


へき地医療などは,かつて公的病院が担っていましたが,財政的な問題のために閉鎖する自治体が増加し,その受け皿として創設されたのが社会医療法人です。


へき地医療など採算性の低い医療を担う代わりに,一部の社会福祉事業,収益事業など一般の医療法人が実施することができない事業を行うことが認められます。


アメとムチといったところでしょうか。


それでは今日の問題です。


第29回・問題120 医療法人及び特定非営利活動法人に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 医療法人は剰余金の配当が可能である。

2 第5次医療法改正の施行後に設立される医療法人には出資持分が認められている。

3 社会医療法人は,収益業務を行うことができない。

4 特定非営利活動法人の解散時の残余財産は,定款で定めた他の特定非営利活動法人等に帰属する。

5 特定非営利活動法人における各社員の表決権は平等ではない。


問題の難易度としては,かなり高い問題だと言えるでしょう。


今なら正解したい問題ですが,この試験が実施された当時では,正解できなくても構わない範囲の問題だったと言えます。


国家試験には,一定程度そういったタイプの問題が出題されています。


さて,この問題の正解は,選択肢4です。


4 特定非営利活動法人の解散時の残余財産は,定款で定めた他の特定非営利活動法人等に帰属する。


解散時の残余財産の処理については,NPO法人も社会福祉法人も同じです。


社会福祉法人については,過去に何度か出題されたことがあるので,それを知っていれば正解できた可能性はあります。


処理については,この続きがあります。


特定非営利活動法人の解散時の残余財産は,定款で定めた他の特定非営利活動法人等に帰属しますが,それでも残った財産は国庫に帰属することとなります。


せっかくなら,ここまで覚えておきたいところです。


それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。


1 医療法人は剰余金の配当が可能である。


医療法人も社会福祉法人もNPO法人も剰余金の配当は認められていません。


剰余金の配当を認められるのは,株式会社などの営利企業です。


2 第5次医療法改正の施行後に設立される医療法人には出資持分が認められている。


出資持分とは,出資者がその法人に対して持つ一定の責任です。


医療法人には,社団と財団があり,そのうち,医療法人社団の中には,出資持分を定款に定めている法人があります。


しかし,今後はそのような定款は認められないことになります。


3 社会医療法人は,収益業務を行うことができない。


社会福祉法人は,収益事業を行うことができます。


5 特定非営利活動法人における各社員の表決権は平等ではない。


表決権の平等とは,議決する時の一票の重みが平等である,という意味です。


株式会社の場合は,出資額が大きい株主と小さい株主では,表決権は平等ではありませんが,NPO法人は平等です。

2020年9月26日土曜日

社会福祉法人制度について

今回からの科目は,「福祉サービスの組織と経営」です。


この科目は,現場実戦でなじみのない人が多いため,あまり得意ではない傾向があります。


しかし,そんなに難解に出題されているわけではありません。



そのため,しっかりした知識をもって受験する人とそうでない人の差は大きくつきやすい科目です。


つまり,しっかり勉強した人は得点できて,そうでない人は得点できないということです。


確実な知識を持つ人が合格できる国試として理想的です。

勉強不足の人が合格できる試験は最悪です。


今回は,社会福祉法人制度を取り上げます。


この科目で出題されているのは,社会福祉法人,NPO法人,医療法人の3つです。


その中でも,社会福祉法人は社会福祉事業を主な事業とするだけに社会福祉士としては,必ず覚えておかなければなりません。


さて,社会福祉法人制度は,1951(昭和26)年の社会福祉事業法(現在の社会福祉法)に規定された特別法人です。


社会福祉士になりたいのなら,少なくとも一度は社会福祉法を通読してほしいと思います。


それでは,今日の問題です。



第29回・問題119 社会福祉法人に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 第二種社会福祉事業の経営主体は,社会福祉法人に限られる。

2 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手である。

3 社会福祉法人は,他の社会福祉法人と合併することはできない。

4 社会福祉法人の非営利性とは,収益を出してはならないという意味である。

5 社会福祉法人には,株式会社の法人税率と同じ税率が適用される。


先に正解をいうと


2 社会福祉法人は,社会福祉事業の主たる担い手である。


何たる問題でしょうか。


しかし,こういったものをおろそかにすると,社会福祉法人の本質がわからなくなってしまいますので,注意が必要です。


別な言い方をすれば,社会福祉事業を行わないと社会福祉法人として認可されることはないということです。


社会福祉事業には,第一種と第二種があります。


参考書などを見ると,丁寧な覚え方を書いてあることもありますが,国家試験で種別を問われるのは,共同募金くらいです。


第一種社会福祉事業は,主に入所系サービスが規定されています。

第二種社会福祉事業は,主に通所系サービスが規定されています。


第一種社会福祉事業は,入所系サービスなので,外部の目が届きにくいため,実施主体には高い倫理性が求められます。


共同募金は,入所系サービスではないですが,第一種社会福祉事業です。


ここが引っ掛けられるポイントです。


第一種社会福祉事業と第二種社会福祉事業の細かいものは覚える必要はありません。

この程度の知識で十分戦えます。


それでは,ほかの選択肢も確認します。


1 第二種社会福祉事業の経営主体は,社会福祉法人に限られる。


第一種社会福祉事業は,社会福祉法人などに限定されますが,第二種社会福祉事業は,広い実施主体が行うことができます。


第二種は,通所系サービスなので,外部の目が届きやすいのです。

もちろん高い倫理性は求められますが,第一種よりも外部の目が届きやすいので,それ以外の実施主体でも認可されます。


3 社会福祉法人は,他の社会福祉法人と合併することはできない。


社会福祉法人は,社会福祉法人同士で合併することができます。


4 社会福祉法人の非営利性とは,収益を出してはならないという意味である。


社会福祉法人の非営利性とは,収益を分配してはならないという意味です。


5 社会福祉法人には,株式会社の法人税率と同じ税率が適用される。


社会福祉法人は,税制面で優遇されています。

優遇されている理由には歴史的背景がありますが,ここでは説明を省略します。


<今日の一言>


今日の問題の正解は,拍子抜けするようなものでしたね。

しかし,正解するのはそれほど簡単ではありません。

確実な知識があってこそ,正解できます。

こういった問題を見ると勉強せずとも正解できると思うかもしれませんが,確実に正解できる知識がなければ,合格することは難しいです。

それをしっかりかみしめて,国試まで頑張りましょう。

2020年9月25日金曜日

スーパービジョンの出題確率は,ほぼ100%!

社会福祉士の国家試験の特徴は,出題範囲が広いことです。


その割に1科目の問題数は少ないため,1回に出題されるものは極めて限られます。

そのため,2年連続,3年連続といったように連続して出題されるものは,ほとんどありません。

3年間の過去問を完璧に覚えても,合格できる知識量に達することができない理由はここにあります。

ヤマをはって,合格できるような試験では決してありません。

たとえヤマをはったところが得点できたとしても,それ以外の問題が正解できないのであれば,合格基準点に到達するのは難しいでしょう。


そういった意味で,丁寧に参考書で知識をつけるという地道な勉強を避けて通ることはできないでしょう。


さて,その中でもほぼ毎回出題されているものがわずかながらあります。


その一つが,スーパービジョンです。


現在のカリキュラムでの国試となった第22回以降では,たった1回だけが出題されなかっただけで,それ以外は必ず出題されています。


その1回でさえ,スーパービジョンの近接であるコンサルテーションが出題されています。


必ず出題されると言ってもよいレベルでしょう。


正解できないのは,あまりにもったいないことです。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題117 スーパービジョンに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 ピア・スーパービジョンは,スーパーバイザーとスーパーバイジーが同席して行う。

2 グループ・スーパービジョンは,一人のスーパーバイザーが複数のスーパーバイジーに対して行う。

3 個人スーパービジョンは,スーパーバイザーとスーパーバイジーが相互に交代しながら行う。

4 セルフ・スーパービジョンは,スーパーバイザーとスーパーバイジーが1対1で行う。

5 ライブ・スーパービジョンは,スーパーバイザーを置かずに,スーパーバイジーが集団で行う。



スーパービジョンの出題には,スーパービジョンの機能とスーパービジョンの種類があります。


この問題は,そのうち,スーパービジョンの種類の出題です。


何のひねりのない問題ですが,これが意外と正解するのが難しいのです。


なぜなら,表意文字の漢字と異なり,カタカナは表音文字のため,読み間違える危険性があるからです。


今日の問題を改めて見てみてください。カタカナが並んでいます。

読み間違えないように,普通の問題よりさらに慎重に読む必要があります。


さて,この問題の正解は,選択肢2です。


2 グループ・スーパービジョンは,一人のスーパーバイザーが複数のスーパーバイジーに対して行う。


もし,今日の問題を慎重に読んでも答えが分からないという人は,明らかに勉強不足です。


ほかの選択肢は解説しませんので,自分で調べてみてください。


<今日の一言>


カタカナは,いつもより慎重に読むこと


カタカナは,目で見ただけでは意味がつかめないので,読み間違える可能性があります。

つまらないミスはもったいないです。


2020年9月24日木曜日

自助グループ(セルフヘルプグループ)について

自助グループ(セルフヘルプグループ)は,当事者のグループです。

専門職が主導的にかかわるグループワークと異なり,当事者が主体的に参加して活動しているところに特徴があります。


自助グループには,「ヘルパーセラピー原則」という効果があります。

人を援助することで,自分も援助されるという原則です。


認知症の人の家族の会といった当事者の家族や周りの人が参加している会もありますが,これも自助グループです。


それでは今日の問題です。


第29回・問題116 自助グループの特性に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 専門職がリーダーとして問題や課題を専有している。

2 メンバーが受動的である。

3 メンバー間に明確な上下関係がある。

4 異なる悩みや問題,課題を持つ者の集まりである。

5 本人や家族が参加している。


シンプルな言い回しの選択肢で構成されている問題ですが,正解するのはそんなに簡単ではありません。


おそらく自助グループのことを知らない人は,引っ掛けられるからです。


引っ掛けポイントは


4 異なる悩みや問題,課題を持つ者の集まりである。


よくよく考えると異なる課題などを持つ者の集まりではなく,同じ課題などを持つ者の集まりなのですが,自助グループのことをよく知らないとこれも正解に思えてしまうのです。


正解は,

5 本人や家族が参加している。


何のひねりもないシンプルな文章ですが,自助グループを当事者の集まりだ,という単純な理解だと「家族は含まないのでは?」と思ってしまい,正解にすることができないのです。


国試は,それほど難しいものではありませんが,国試の怖さを教えてくれる問題です。


<今日の一言>


自助グループの詳細は,社会福祉士の国試には出題されませんが,精神保健福祉士では多くの種類が出題されています。


例えば

アラノン アルコール依存症者の家族などの自助グループ

ナラノン 薬物依存症者の家族などの自助グループ

これらは,家族が参加するものですが,もちろん自助グループです。


なお,アルコールに関する自助グループには,断酒会とAAがあります。

AAの2つめのAは,アニノマス(匿名の)という意味です。

つまり,AAは名前を名乗らず匿名で参加するところに特徴があります。

断酒会はAAを参考にして日本で開発されたもので。匿名性という特徴は持っていません。いかにも日本的だと思いませんか?

2020年9月23日水曜日

グループワークのポイント

 今回は,グループワークを取り上げます。

 グループワークは,集団力学を活用した集団援助技術です。

 グループワークのプロセスは,以下の通りです。

 

プロセス

段階

注意点

準備期

ワーカーがグループワークを行う準備を行う段階

この段階には「波長合わせ」と呼ばれるクライエントの抱える問題,環境,行動特性をワーカーが事前に把握する段階が含まれます。

波長合わせは,準備期に行うので注意が必要です。

開始期

メンバーが集まって,グループワークを始める前までの段階

この段階には「契約」と呼ばれるワーカーの役割などをメンバーに説明する段階が含まれます。

グループワークでの約束事などを確認し,援助関係をつくります。

作業期

ワーカーとメンバーが課題解決に向けて,活動を行う段階

この段階では,グルーブの仲間意識が生じたり,対立したりすることもあります。

しかし,これらはグルーブダイナミクス(集団力学)を活用したグループワークでは重要な意味を持ちます。

終結期

グループワークを終える段階

振り返りや反省などを行い,次の段階へつなげます。そのため,移行期とも言われます。

 

それでは,今日の問題です。

 

 

29回・問題115 グループワークに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 波長合わせとは,メンバー間の親しい対面や接触を通して,お互いに刺激し,影響し合うことである。

2 グループの発達過程とは,グループの誕生から終結に至る,力動的関係の過程を示すものである。

3 グループの凝集性とは,メンバーがどのような思いや感情を持ってグループの場面にやってくるのかを,援助者があらかじめ理解しておくことである。

4 メンバー間の相互作用とは,メンバーがグループの構成員として認められるため,グループが持つルールのことである。

5 プログラム活動とは,メンバーと機関・施設側との間で目標達成に向けての取組について合意を形成し,双方の責任を明確にすることである。

 

知識なしでは,期待値である5分の1の確率でしかおそらく正解できない問題でしょう。

 

この問題は,消去法で答えが残るタイプの問題です。

そのため,知識不足のために消去できない選択肢が一つでもあると正解できないのです。

 

こういったタイプの問題は毎年かなり出題されます。

 

さて,この問題の正解は,選択肢2です。

 

2 グループの発達過程とは,グループの誕生から終結に至る,力動的関係の過程を示すものである。

 

これはとても難しいです。

後出しじゃんけん的に解説すると,発達過程はグループであっても人と同じように誕生から消滅するまでの過程であり,集団力学を活用して変化していくものである,と考えることができるでしょう。

 

しかし,これは今だから言えることです。

消去法を使わず,この選択肢を正解だと認識するのはかなり難しいものです。

 

ということで,ほかの選択肢の消去ポイントを紹介します。

 

 

1 波長合わせとは,メンバー間の親しい対面や接触を通して,お互いに刺激し,影響し合うことである。

 

波長合わせは,準備期にワーカーが行うものです。

この段階ではまだメンバー同士は対面していません。

 

 

3 グループの凝集性とは,メンバーがどのような思いや感情を持ってグループの場面にやってくるのかを,援助者があらかじめ理解しておくことである。

 

グループの凝集性は,作業期に成立するもので,仲間意識を指します。

 

メンバーがどのような思いや感情を持ってグループの場面にやってくるのかを,援助者があらかじめ理解しておくことは,波長合わせです。

 

 

4 メンバー間の相互作用とは,メンバーがグループの構成員として認められるため,グループが持つルールのことである。

 

メンバー間の相互作用とは,集団力学で変化していくものです。

 

メンバーがグループの構成員として認められるため,グループが持つルールのことは,グループの凝集性です。

 

5 プログラム活動とは,メンバーと機関・施設側との間で目標達成に向けての取組について合意を形成し,双方の責任を明確にすることである。

 

プログラム活動は,グループワークの目的を達するために用いられる実際の活動です。

 

メンバーと機関・施設側との間で目標達成に向けての取組について合意を形成し,双方の責任を明確にするのは,開始期に行われます。


 

<今日の一言>

 

一つひとつを確実に消去することで正解できる問題は,勉強不足の人にとっては,とても難しい問題となります。

それでも5分の1の確率では正解することはできますが,合格基準である6割ラインを超えるためには,このような不安定な実力ではちょっと難しいと言えます。

国試で不合格になると知識不足を実感しますが,国試合格に必要な知識は,広い知識よりもこのような問題を確実に正解することができる知識です。

日々の勉強は単調で無味乾燥に感じると思いますが,それでも勉強をやり続けた人が国試合格をつかむことができることでしょう。

2020年9月22日火曜日

設問に気をつけること

事例問題は,多くの人が思っているほど正解するのは簡単ではありません。


慣れも必要です。


さて,今回のテーマは「設問に気をつけること」です。

設問に適合するものを探し出さなければなりません。

国家試験問題は,事例検討ではありません。


中には事例検討のように考えても正解できる問題もありますが,そのように解くと正解できない問題もあります。


結構単純な論理ですが,うっかりするとそこが抜け落ちるので,注意が必要です。

それでは,今日の問題です。


第29回・問題114 事例を読んで,ソーシャルサポートネットワークを活用したJ支援員(社会福祉士)の支援として,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 R市の高齢福祉課はNPO法人に委託して,団地内で「コミュニティカフェ」を開始した。委託を受けたNPO法人に所属するJ支援員は,地域包括支援センターや社会福祉協議会の協力を得て,地域住民ボランティアと共に,月に2回,団地内の集会所において主に高齢者を対象としてカフェを開催している。しかし,団地内では一人暮らし高齢者が増えており,カフェに参加していない人も多い。

1 身体機能に不安を感じる参加者に,地域包括支援センターの利用を勧める。

2 カフェのプログラムは,専門職が行うものを優先する。

3 参加者の仲間関係によってグループ分けをする。

4 団地自治会に見守り活動を提案する。

5 カフェの運営会議では社会福祉協議会の要望を優先する。


この問題の条件は「ソーシャルサポートネットワークを活用した支援」です。


たとえ,適切な対応だとしてもソーシャルサポートネットワークを活用していなければ,不適切になります。


どんな問題であっても,絶対に正解にならないものは,


2 カフェのプログラムは,専門職が行うものを優先する。

5 カフェの運営会議では社会福祉協議会の要望を優先する。


の2つです。


残るのは,

1 身体機能に不安を感じる参加者に,地域包括支援センターの利用を勧める。

3 参加者の仲間関係によってグループ分けをする。

4 団地自治会に見守り活動を提案する。


この中で,ソーシャルサポートネットワークを活用していないのは,


3 参加者の仲間関係によってグループ分けをする。


この選択肢は,カフェ内部の対応になっています。

うっかりすると,この選択肢を正解にしてしまう人もいるでしょう。


グループ分けするのは,決して不適切な対応ではありません。

しかし,ソーシャルサポートネットワークを活用していないので正解にはなりません。


正解は,

1 身体機能に不安を感じる参加者に,地域包括支援センターの利用を勧める。

4 団地自治会に見守り活動を提案する。


選択肢1を選びにくいのは「利用を勧める」だからです。

ここに引っ掛かったとしても,ソーシャルサポートネットワークを活用した支援なので,適切なのです。

本当に気をつけたい問題です。


<今日の一言>


数点差で不合格になった人は,とても悔しかったことでしょう。

知識不足を実感するかもしれません。

知識をつけても,今日の問題のようなものを正解できなければ,ざるで水をすくうようなものです。

何度も数点差で涙を流している人は,事例問題なども振り返ってみてください。

2020年9月21日月曜日

難しそうでも意外と解ける

 まずは,昨日の問題から。


第32回・問題109 カデューシン(KadushinA.& KadushinG.)が示した,「会話」と「ソーシャルワーク面接」の相違に関する記述として,正しいものを1つ選びなさい。

1 「ソーシャルワーク面接」と比べて,「会話」には意図的な目的が存在している。

2 「ソーシャルワーク面接」と比べて,「会話」では参加者間に明確な役割分担がある。

3 「ソーシャルワーク面接」と比べて,「会話」の参加者はしばしば文化的に異質である。

4 「会話」と比べて,「ソーシャルワーク面接」には参加者間に平等な権威と力がある。

5 「会話」と比べて,「ソーシャルワーク面接」ではスピーチのパターンが構造化されている。


正解は選択肢5ですが,受験した人は,「なにこれ?」と思ったことでしょう。

しかし,知識がなければ解けない問題ではありません。

得点するのに,じゃまなのは「文化的に異質」でしょう。

少々知らないことばがあっても,何とか考えなければなりません。

「異質」の対義語は「同質」です。

会話の多くは,仲間同士で行われることを考えると,会話は「同質」の方がしっくりくると思いませんか?

国試当日,心に余裕がなくなると柔軟な思考ができなくなりますので注意が必要です。

2020年9月20日日曜日

意図のないものはソーシャルワークではない~その②

 ソーシャルワークは,意図的な活動です。

意図のないものは,ソーシャルワークとは言えません。

第32回・問題109 カデューシン(KadushinA.& KadushinG.)が示した,「会話」と「ソーシャルワーク面接」の相違に関する記述として,正しいものを1つ選びなさい。

1 「ソーシャルワーク面接」と比べて,「会話」には意図的な目的が存在している。

2 「ソーシャルワーク面接」と比べて,「会話」では参加者間に明確な役割分担がある。

3 「ソーシャルワーク面接」と比べて,「会話」の参加者はしばしば文化的に異質である。

4 「会話」と比べて,「ソーシャルワーク面接」には参加者間に平等な権威と力がある。

5 「会話」と比べて,「ソーシャルワーク面接」ではスピーチのパターンが構造化されている。



正解は,選択肢5です。


「スピーチのパターンが構造化されている」とは,意味のないものはないという意味だと言えます。





2020年9月19日土曜日

意図のないものはソーシャルワークではない!

ソーシャルワークは,意図的な活動です。


意図のないものは,ソーシャルワークとは言えません。


クライエントとの会話には無駄なものはありません。

無駄話の中からラポールを築くことができると思うワーカーはワーカー失格です。


クライエントとの会話の中に無駄話を挟み込むのは,クライエントにとって失礼極まりない行為です。


クライエントとの会話は,すべて意図されたものです。


それでは今日の問題です。


第29回・問題113 ネットワーキングに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 静態的な概念である。

2 既存の所属や地域の制約の中で展開する。

3 特定の強力なリーダーに導かれる。

4 日常的な結び付きを無意図的に繰り返し使用する。

5 目標と価値を共有する。


短い文章で構成された問題ですが,これがなかなか難しいものです。


この問題の難易度を上げている理由の一つは,

選択肢1の「静態的」ということばです。


このことばで,問題を読むペースが崩されます。


静態的って何?


と思うと負けです。


意味は正確にわからなくてもだいたいのニュアンスをつかむことができればOKだと思わなれば,得点力は極端に下がってしまいます。


静態的は「動きがない様子」をいいます。

ネットワーキングは,有機的な結び付きです。

必要に従って絶えず変化していきます。


静態的の反対語は,動態的(動きのある)です。


ネットワーキングはむしろ動態的です。


このように,逆の意味のあるものは,要注意です。


具体的に言えば

「右と左」

「上と下」

「前と後ろ」

などです。


さて,この問題の正解は,選択肢5です。

5 目標と価値を共有する。


この問題を正解できた人も自信をもってこれを正解にした人はそれほど多くはないはずです。


ほかの選択肢を消去することで,正解できるタイプの問題だからです。

そのため,一つでも消去できないものがあると正解できません。


その一つは,選択肢1です。


そして,選択肢4

4 日常的な結び付きを無意図的に繰り返し使用する。


なんだかわからないので,こういったものを選ぶということをすると得点を伸ばすことは到底無理です。


ソーシャルワークは,意図的な活動です。


「無意図」は存在しません,

はたから見ると,無意図に見えるものでも,無意味なものはありません。


2020年9月18日金曜日

ケースアドボカシーとコーズアドボカシー

アドボカシーは,権利擁護・代弁などと訳されます。

アドボカシーにはさまざまなスタイルがあるので,それぞれを覚えなければなりません。

 

特に注意が必要なのは,ケースアドボカシーとコーズアドボカシーです。

 

ケースアドボカシーは,「ケース」という言葉から連想できるように,あるクライエントのためのアドボカシーです。

 

それに対して,コーズアドボカシーは,その言葉から意味を連想することが難しいと言えます。

 

32回国試でも誤認させるように出題しています。

 

2 コーズアドボカシーとは,クライエントの権利を守るために,法的な手段を用いる活動である。

 

法的な手段を用いるのは,リーガルアドボカシーといいます。

 

コーズアドボカシーは,同じ課題を抱えるクライエントの代弁や制度の改善・開発を目指す活動をいいます。

 

覚え方のコツとしては,原点は対クライエントにあり(ケースアドボカシー),それを普遍化するための活動が「コーズアドボカシー」だと考えるのが良いと思います。

 

それでは,今日の問題です。

 

29回・問題112 社会資源の開発に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ケースアドボカシーとは,クライエントと同じ状況に置かれている人たちの権利を守るために,新しい資源を開発しようとすることである。

2 小地域開発とは,社会福祉の制度やサービスの創設・改善・維持を目指す活動である。

3 ソーシャルアクションとは,地域の問題について,専門家を入れずに住民がグループでの取組を通して問題解決を図れるようにするものである。

4 コーズアドボカシーとは,一人のクライエントの利益と安定した生活をまもるための働きである。

5 社会計画とは,公的な機関や専門職が地域の問題について情報を収集・分析し,合理的な取り組み方を決めて実施することである。

 

びっくりするのは,ロスマンのコミュニティ・オーガニゼーションが出題されたことです。

 

今までは,この科目ではなく,地域福祉で出題されてきたものです。

 

しかし,ロスマンのコミュニティ・オーガニゼーションを知らなくても,ケースアドボカシーとコーズアドボカシーを混同しなければ,正解できるように作られた問題です。

 

正解は,選択肢5です。

 

5 社会計画とは,公的な機関や専門職が地域の問題について情報を収集・分析し,合理的な取り組み方を決めて実施することである。

 

ほかの社会計画がわからなくても,ほかの選択肢を消去することでこの選択肢が残ります。

 

それでは解説です。

 

1 ケースアドボカシーとは,クライエントと同じ状況に置かれている人たちの権利を守るために,新しい資源を開発しようとすることである。

 

これは,コーズアドボカシーの説明です。

 

4 コーズアドボカシーとは,一人のクライエントの利益と安定した生活をまもるための働きである。

 

これは,ケースアドボカシーの説明です。

 

これからが,いよいよロスマンの領域に突入します。

 

2 小地域開発とは,社会福祉の制度やサービスの創設・改善・維持を目指す活動である。

 

小地域開発がわからなくても,ソーシャルアクションはわかるのではないでしょうか。

これは,ソーシャルアクションの説明です。

 

3 ソーシャルアクションとは,地域の問題について,専門家を入れずに住民がグループでの取組を通して問題解決を図れるようにするものである。

 

この内容がわからなくても,ソーシャルアクションはほかの選択肢で使われているので,ソーシャルアクションではないと推測できます。

 

「専門家を入れずに」というところが引っ掛かりますが,住民がグループでの取組を通して問題解決を図れるようにするものは,小地域開発です。

 

5 社会計画とは,公的な機関や専門職が地域の問題について情報を収集・分析し,合理的な取り組み方を決めて実施することである。

 

そして,最終的にこれが残ります。

 

社会計画は,専門家によりどのように資源を配分するかを計画し実施する活動です。

 

<今日の一言>

 

ロスマンのコミュニティ・オーガニゼーションに関する説は,この問題を使って整理すると以下のようになります。

 

小地域開発モデル

住民がグループでの取組を通して問題解決を図れるようにする活動。

社会計画モデル

専門的な機関や専門職が地域の問題について情報を収集・分析し,合理的な取り組み方を決めて実施する活動。

ソーシャルアクションモデル

社会福祉の制度やサービスの創設・改善・維持を目指す活動

 

2020年9月17日木曜日

援助を求めないクライエントへの対応

援助を積極的に受けない,あるいは援助を拒否するクライエントのことをインボランタリークライエントと言います。

実際の現場では対応が難しいと思いますが,国家試験は白黒をはっきりつけなければならないので,ポイントさえ押さえれば答えられるように出題します。


それでは今日の問題です。


第29回・問題111 事例を読んで,地域包括支援センターのF社会福祉士の対応に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 地域包括支援センターに勤務するF社会福祉士は,G民生委員よりHさん(85歳,男性)について相談を受けた。Hさんは妻(78歳)と二人で暮らしている。Hさんは近所付き合いもせず,G民生委員が訪ねても,自分たちで何とかやっているから大丈夫だという。しかし,先日,妻が脳梗塞で入院したので改めて様子を見に行くと,Hさんは疲れ切った様子だったので,福祉サービスの利用を勧めたが拒否されたとのことであった。

1 Hさんに電話をして,地域包括支援センターに相談に来るよう勧める。

2 Hさんに援助を求める意思がないので,住民や専門職には協力を求めない。

3 市の担当課と連絡を取って,情報を共有する。

4 Hさんが援助を求めるまで,見守りながら待つ。

5 Hさん宅を訪問し状況を把握する。



事例問題の基本は,初回面接・初回訪問の場合は,まずは状況把握です。

そのため,選択肢5は必ず正解になります。

5 Hさん宅を訪問し状況を把握する。


この問題のポイントは,選択肢4です。

見守りすることが正解になる問題も数多くあります。


しかし,この選択肢が正解にならないのは,ネットワーキングがなく,見守りをするからです。


もし「見守り」をするのであっても,「近所の住民と連携しながら見守りをする」であれば正解になる可能性があります。


実際にどのように住民に協力を求めるのかは,社会福祉士の知恵が発揮されるところです。


事例問題では,その知恵の部分は複雑になるので,そこまで突っ込んでは出題することはまずないでしょう。


もう一つの正解は,

3 市の担当課と連絡を取って,情報を共有する。


市の担当課と連絡を取って情報を共有しても,何も変わらない,と思う人は,この選択肢を選ぶことができません。


しかし,選択肢4と異なり,アクションを起こしています。


<今日の問題>


この問題では描かれていませんが,F社会福祉士が市の担当者に連絡するのは,意味があってのことだと考えられます。


何か変化が起きればよい,という根拠のない期待ではなく,次の手を見据えて行動を起こしているはずです。


一見すると,正解だと誤認してしまいそうな選択肢4の何もせず見守るのは,次の手を見据えたものが見えてきません。


今日の問題は決して難しくありませんが,正解を2つ選ぶ問題は,実はちょっと高度です。


2つめが選びにくいためです。


しかし,この問題のように,ポイントを見極めることで,つまらないミスは防ぐことができるでしょう。


この問題のポイントは,ちゃんとアクションを起こしていることです。

2020年9月16日水曜日

面接技法について~特に「感情の反映」~

社会福祉士は,相談援助の専門職です。


心理職が行うカウンセリング技法は,ソーシャルワーク場面でも活用できます。


参考書には,たくさんの技法が書かれていますが,特に気をつけたいのは,感情の反映です。


感情の反映は,クライエントの発言の情緒的な面を言葉にして返す技法です。


事例問題が,第22回と第30回に出題されていますが,どちらも正解は「感情の反映」となっています。


第22回

「私は一体これからどうしたらいいでしょうか。小さい子どもを抱えて別れることもできず,ただこの状況に耐え続けるしかないのでしょうか」といって沈黙した。それに対して,相談員(社会福祉士)は「今は八方ふさがりの状態で,とてもおつらいのですね」と応じた。

第30回

「親には迷惑を掛けたくないし,行政のお世話になるのも気が引ける…」と黙り込むBさんに,A社会福祉士は,「どうにもならなくて,おつらいのですね」と伝えた。


かなり高度な面接技法であることがわかりますね。


それでは今日の問題です。


第29回・問題108 相談援助のための面接に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 閉ざされた質問は,クライエントが自分の考えや気持ちを表現できるように促すために用いる。

2 要約とは,クライエントの言葉をそのまま繰り返し,対話を促すことである。

3 感情の反映とは,クライエントの感情や態度に関係なく,ワーカー自身の感情を伝えることである。

4 沈黙場面では,クライエントの混乱が沈黙の第一の理由と捉え,ワーカーが指示的に関わる。

5 非言語的な表現の観察においては,クライエントのアンビバレントな感情を理解する。


この問題にも「感情の反映」が出題されていますが,これが正解ではないと判断するのは,それほど難しくはないでしょう。


そういった意味では,問題の作り方が下手だなぁと思います。


それでは解説です。


1 閉ざされた質問は,クライエントが自分の考えや気持ちを表現できるように促すために用いる。


クライエントが自分の考えや気持ちを表現できるように促すために用いるのは,「閉じられた質問」です。


2 要約とは,クライエントの言葉をそのまま繰り返し,対話を促すことである。


クライエントの言葉をそのまま繰り返すのは,「繰り返し」の技法です。


3 感情の反映とは,クライエントの感情や態度に関係なく,ワーカー自身の感情を伝えることである。


ソーシャルワークの場面では,ワーカーの感情を伝えることはありません。

なぜならソーシャルワークには必要ではないからです。


4 沈黙場面では,クライエントの混乱が沈黙の第一の理由と捉え,ワーカーが指示的に関わる。


沈黙には,意味があります。


慣れないワーカーは,クライエントが沈黙すると焦ってしまいますが,それを打開しようと指示的にかかわるのは,最悪です。


ソーシャルワークの場面では,一般的に指示的にかかわることはありません。


5 非言語的な表現の観察においては,クライエントのアンビバレントな感情を理解する。


これが正解です。

アンビバレントとは,「好き」と「嫌い」といった反対の感情があることです。


<今日の一言>


アンビバレントは,聞いたことがない受験生も多かったと思いますが,ほかの選択肢はわかりやすいので,消去することで,この選択肢が残ります。

知らないものが出題されても,焦ることなく,落ち着いて考えると正解できることがよくあります。

焦ることなく,落ち着くことの重要性を教えてくれる問題です。

2020年9月15日火曜日

ケースマネジメントとケアマネジメント

社会福祉士国試の出題基準では


ケースマネジメントとケアマネジメント


とケースマネジメントとケアマネジメントが併記されていますが,2つの用語にそれほどの違いはありません。


そのためなのか,次のカリキュラムの科目の内容では,ケースマネジメントの用語が使われず,ケアマネジメントとなっています。


聞くところによると,ケースマネジメントはアメリカの脱施設化の中で生まれて発展し,ケアマネジメントはサービス提供の効率化を求めてイギリスで発展したとのことです。


それでは今日の問題です。


第29回・問題109 ケースマネジメントに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 複数の組織から類似の機能を持つサービスが用意されるなど,手厚いサービスが提供される。

2 身体的,心理的,社会環境的な側面から各専門職が独自にサービスを提供する。

3 専門職がクライエントの意向にかかわらず自立生活のプランを立てる。

4 地域の資源を活用・調整して,住み慣れた地域でできる限り長く暮らし続けられるようにすることである。

5 サービス利用者の満足感,快適性よりも,援助者の実行しやすい援助を提供する。


この問題の落とし穴としては,ケアマネジメントは知っていてもケースマネジメントは知らない,といったところでしょうか。


そこだけ気をつければ,答えは見えてくるでしょう。


正解は,選択肢4です。

4 地域の資源を活用・調整して,住み慣れた地域でできる限り長く暮らし続けられるようにすることである。


これ以外は,慎重に読めば間違いだとわかるのではないでしょうか。


<今日の一言>


新しいカリキュラムによる国家試験は,第37回国家試験から始まります。

大学では,令和2年度から新しいカリキュラムに移行していきます。

この人たちが卒業する年の国試が新しいものとなります。

そんなこともあり,これから新しいカリキュラムに向けて,第33~36回国試も少しずつ内容も新しいカリキュラムを見据えて出題されていくように思います。

そういったことから,今後はケースマネジメントの言葉は使われなくなるのかもしれません







2020年9月14日月曜日

事例問題は2つ選ぶのを忘れないこと

ソーシャルワーク系の事例問題は,それほど難しくはないですが,正解を2つ選ぶ問題は,うっかりすると2つ選ぶのを忘れてしまうので,注意が必要です。


第29回・問題111 事例を読んで,地域包括支援センターのF社会福祉士の対応に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 地域包括支援センターに勤務するF社会福祉士は,G民生委員よりHさん(85歳,男性)について相談を受けた。Hさんは妻(78歳)と二人で暮らしている。Hさんは近所付き合いもせず,G民生委員が訪ねても,自分たちで何とかやっているから大丈夫だという。しかし,先日,妻が脳梗塞で入院したので改めて様子を見に行くと,Hさんは疲れ切った様子だったので,福祉サービスの利用を勧めたが拒否されたとのことであった。

1 Hさんに電話をして,地域包括支援センターに相談に来るよう勧める。

2 Hさんに援助を求める意思がないので,住民や専門職には協力を求めない。

3 市の担当課と連絡を取って,情報を共有する。

4 Hさんが援助を求めるまで,見守りながら待つ。

5 Hさん宅を訪問し状況を把握する。


この問題は,適切なものを2つ選ぶものです。


正解は,

3 市の担当課と連絡を取って,情報を共有する。

5 Hさん宅を訪問し状況を把握する。


注意するのは,選択肢4です。


4 Hさんが援助を求めるまで,見守りながら待つ。


同じようなものでも,ネットワーキングを活用して見守りをするなら正解になりますが,これでは何もしないことと同じです。

2020年9月13日日曜日

初回面接の重要性とは

現在の社会福祉士の国家試験の事例問題は,短文事例問題のみです。

精神保健福祉士には,長文事例問題が残っています。

短文事例問題には多くの情報を書けないこともあり,きっちり読めば必ず答えになるものは見つけやすいでしょう。


今日の問題は,おそらく事例を読まなくても解ける問題です。

そういった意味では,問題の質はそれほど高くはないと言えます。


それでは問題です。


第29回・問題107 事例を読んで,この場面におけるBスクールソーシャルワーカー(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Bスクールソーシャルワーカーは,小学校4年生のC君の母親から初めて相談を受けた。C君は低学年の時には学校から大きな問題を指摘されたことはなかったが,4年生になってからは授業に集中できず,落ち着かないところが目立つようになり,周りの友達とのトラブルが多くなった。また,この1か月の間,不登校気味となっている。さらに,C君自身も学校でのストレスから,自宅では2歳年下の弟との喧嘩が激しくなり,弟も非常に混乱しているようである。また,夫に相談しても話を聞こうとせず,どうしたら良いのか分からないと訴えた。

1 「ご家庭でのお子さんの様子をもう少し詳しく聞かせていただけますか」

2 「お子さんの問題は夫婦で話し合うのが最も大事なのではないですか」

3 「兄弟喧嘩くらい多少は大丈夫ですよ」

4 「お子さんの学校の問題は,先生ともっと話し合うべきです」

5 「お母さんのこれまでの生活歴をお聞きしてもよろしいですか」


絶対に正解にならないのは,

2 「お子さんの問題は夫婦で話し合うのが最も大事なのではないですか」

3 「兄弟喧嘩くらい多少は大丈夫ですよ」

4 「お子さんの学校の問題は,先生ともっと話し合うべきです」


の3つです。


正解は,

1 「ご家庭でのお子さんの様子をもう少し詳しく聞かせていただけますか」

です。

迷うことがあるとしたら,


5 「お母さんのこれまでの生活歴をお聞きしてもよろしいですか」


正解を2つ選ぶ問題だとすると,正解になることもあるかもしれません。


しかし,この問題は,正解は一つだけです。


ポイントは,初回面接の場面だということです。


初回面接は特別なものです。


初対面の人に,自分の生活歴を話すでしょうか。


ラポールができていなければ,「私はCのことを相談しているのです。私のことは関係ないでしょう」と切り返されておしまいです。


もし,この質問をするなら,母親の生育歴が,C君に影響を与えていると考えられる場合でしょう。

しかし,それはもっと先のことです。

この問題はあくまで「この時点における」対応を選ぶものです。

将来的には,正しいことかもしれませんが,この時点で不必要な対応なら,正解にはなり得ません。


この手の問題はかなり多く出題されています。


「この時点における」を注意しましょう。

2020年9月12日土曜日

ケースワークの原則とは?

今回は,バイステックの7原則とも言われる「ケースワークの原則」に取り組んでいきたいと思います。

 

個別化

クライエントを他のクライエントと比べることなく,理解すること。

意図的な感情表出

クライエントが感情を表現することができること。

統制された情緒的関与

援助者が自分の情緒をコントロールできること。

受容

クライエントを受け止めること。

非審判的態度

クライエントを非難するような態度を取らないこと。

自己決定

クライエントが自己決定する主体であること。

秘密保持

クライエントに関する情報を漏らさないこと。

 

理解しにくいのは,「意図的な感情表出」と「統制された情緒的関与」でしょう。

 

感情を表出するのは,クライエントです。

情緒を統制するのは,ワーカーです。

これが逆だとおかしなことになってしまいます。

 

統制された情緒的関与ができるようになるには,ワーカーの自己覚知が欠かせません。

 

なぜなら,ワーカー自身の価値観がクライエントの話した内容を許せないものであったなら,ワーカーは混乱し,冷静にクライエントに接することができなくなってしまうかもしれないからです。

 

ワーカーは個人的にどのような価値観を持っていようが,ソーシャルワークには関係ないことです。

 

それを持ち込まないようにするのが,自己覚知であり,統制された情緒的関与です。

 

それでは,今日の問題です。

 

29回・問題106 バイステック(BiestekF.)の援助関係形成の原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「自己決定の原則」は,クライエント自身や第三者に重篤な危害が及ぶことが想定される場合においても優先する。

2 「受容の原則」とは,ワーカーの個人的な価値観と一致する場合において,クライエントを受け止めることである。

3 「個別性尊重の原則」とは,他のクライエントと比較しながら,クライエントの置かれている状況を理解することである。

4 「非審判的態度の原則」とは,クライエントを一方的に非難したり,判断しないことである。

5 「統制された情緒的な関与の原則」とは,クライエント自身が自らの情緒的混乱をコントロールできるようにすることである。

 

冷静に読めば,それほど難しくはない問題かもしれません。

 

しかし,国試会場は特別な空間です。

普段できることがその場でも同じようにできないことがあるのが怖いところです。

 

正解は,選択肢4です。

 

4 「非審判的態度の原則」とは,クライエントを一方的に非難したり,判断しないことである。

 

ぜんぜん難しくはないでしょう,

 

しかし,国試会場では,そんなに簡単に正解させてくれないのです。

 

特に注意すべきなのは,カタカナ語は,よくよく読まないと勘違いや早飲み込みをしてしまうことがあることです。

 

それでは解説です。

 

1 「自己決定の原則」は,クライエント自身や第三者に重篤な危害が及ぶことが想定される場合においても優先する。

 

原則は,例外があるから,原則なのです。

例外がないのは,原理といいます。

 

自己決定の原則の例外は,生命等に危険がある場合です。

 

2 「受容の原則」とは,ワーカーの個人的な価値観と一致する場合において,クライエントを受け止めることである。

 

原則は。例外があるので原則ですが,ワーカーの個人的な価値観と一致する場合以外は受容しないのであれば,原則どころの話ではなくなります。

 

ワーカーの価値観をソーシャルワークに持ち込むのはご法度です。


3 「個別性尊重の原則」とは,他のクライエントと比較しながら,クライエントの置かれている状況を理解することである。

 

他のクライエントと比較するのであれば,個別化ではなくなってしまいます。

 

5 「統制された情緒的な関与の原則」とは,クライエント自身が自らの情緒的混乱をコントロールできるようにすることである。

 

この選択肢が要注意です。

 

情緒的混乱をコントロールするのは,ワーカーです。

 

クライエントは「意図的な感情表出」です。


2020年9月11日金曜日

受験申込み開始

 

33回国家試験の受験申込みが始まりました。

 

今年(2020年度)は,コロナの影響で実習が遅れている学校もあるようです。

 

それがどのように国試に影響するのかとても気になるところですが,講義が行われなかったこともあり,例年よりも勉強不足で国試に臨む受験生が増えるのではないかと思います。

 

今年はそんなことから,ほかの受験者と差をつけやすい国試となることでしょう。

 

春先のステイホームの時期に勉強をしっかり続けてきた人たちがいるからです。

 

この学習部屋に訪れている方は,勉強不足という人はまずいないのではないかと思います。

 

体調不良で,勉強したくないと思う日もあるでしょう。

 

そういった日は,だらだら勉強せず,自分でラインを決めて,ある程度できたら,切り上げるということも必要でしょう。

 

今までの努力は,それを可能とするはずです。

 

しかし,重要なのは,まったく勉強しない日をつくらないことです。

2020年9月10日木曜日

モニタリングとは

モニタリング(経過観察)とは,支援の実施中に行われるもので,支援が計画通りに進んでいるかなどを確認します。そのうえで必要な場合は,再アセスメントなどを検討します。

 

プロセスは,以下のようになります。

 

相談援助の過程(プロセス)

受理面接(インテーク)

事前評価(アセスメント)

支援計画(プランニング)

支援の実施(インターベンション・介入)

経過観察(モニタリング)

事後評価(エバリュエーション)

支援の終結(ターミネーション)

終結後の支援(アフターケア)

 

モニタリングは,どの時点で行われるのかわかりにくいこともあり,国家試験では,何度もそのことが問われています。

 

今日の問題もそんな問題です。

 

29回・問題105 ソーシャルワークの援助過程におけるモニタリングに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 プランニングの前に実施される。

2 インターベンションが行われている間に実施される。

3 契約の前に実施される。

4 インテークの途中で実施される。

5 援助終結後に実施される。

 

モニタリングを少しでも知っていれば,それほど難しくない問題でしょう。

 

正解は,選択肢2。

 

2 インターベンションが行われている間に実施される。

 

うろ覚えの人が勘違いしやすいのは,「5 援助終結後に実施される」でしょう。

 

援助の終結後に行われるのは,アフターケアですが,モニタリングは支援後に行われるもの,というイメージをもっていると間違えるので注意が必要です。

 

社会福祉士がソーシャルワーカーであるならば,カタカナ語が苦手などと思うことなく,しっかり覚えておきたものです。

2020年9月9日水曜日

「動的」「静的」について

私たちが目指している国家資格は,社会福祉士(あるいは精神保健福祉士)です。


今の時点(9月)ではまだまだ勉強が進んでいないと思いますが,国家試験が近づいてくると,やり残した感のない,いわゆる「万能感」になる人がいます。


それなのに,国家試験の当日,問題用紙を開いてみると,勉強したことがないことばが並んでいて,「こんなはずではなかった」と思います。


まじめに勉強した人ほど,その思いは強いことでしょう。


知らないことばが出てきても,知恵を絞って考えられることが国試では求められています。


勉強したことがないことばを目の当たりにしても動じないように,「国家試験とは,このようにしてふるいにかけている。私はそんな挑発には乗らない」といった気構えが必要です。


今日のテーマは「動的」「静的」です。


一般用語ですが,日常会話にはまず使うことはないでしょう。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題104 ソーシャルワークにおけるアセスメントに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 コミュニティはアセスメントの対象に含まれない。

2 ソシオグラムは,クライエントと複数世代の家族メンバーとの関係性を表す。

3 パーソナリティに焦点化して,クライエントに関する情報を収集する。

4 プライバシー保護のため,クライエント以外の者から情報収集は行わない。

5 支援プロセスの進行と共に展開する動的なプロセスである。


アセスメントという用語を勉強していない受験生はまずいないと思います。

しかし,この問題はことのほか簡単ではないレベルのものです。


理由は,「動的」です。


この問題の正解は,選択肢5です。

5 支援プロセスの進行と共に展開する動的なプロセスである。


この場合の「動的」とは,「動きのある」といった意味合いで使われています。


つまり,この文章は,アセスメントは,支援中はどのプロセスでも行われるものである,といったような意味合いだと考えられます。


アセスメントは「インテーク」と「プランニング」の間に行う情報収集&課題分析だと考えていると,たとえ「動的」の意味がつかめたとしても,間違う可能性があります。


注意が必要です。


「動的」の反対語は「静的」です。

動的の反対語ですから,「動きのない」といった意味合いとなります。


それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。


1 コミュニティはアセスメントの対象に含まれない。


システム理論で言えば,コミュニティも一つのシステムを形成しているので,コミュニティに関する情報も重要です。


ICFで考えても,生活機能に「参加制約」があっても,環境によってクリアできることもありますし,クリアできないこともあります。


2 ソシオグラムは,クライエントと複数世代の家族メンバーとの関係性を表す。


ソシオグラムは,人間関係を矢印によって図式化するアセスメントツールです。


刑事ドラマでは,被害者が真ん中にあり,交友関係のある人を周りに配置して,矢印の向きで,敵対していたのか,好意があったのか,などを可視化しています。


実際の捜査では,ソシオグラムは使われないそうですが,視聴者が理解しやすいようにとの演出上の効果をねらっています。


ソシオグラムで重要なのは,矢印の向きです。矢印のないただの線では,人間関係をすぐ理解することができません。


3 パーソナリティに焦点化して,クライエントに関する情報を収集する。


パーソナリティ(人格)も重要な情報かもしれません。

しかし,おそらく心理職であっても,パーソナリティに焦点化して情報収集するものではないのではないでしょうか。


まして,ソーシャルワークでは,パーソナリティ以外にも情報収集しなければならないことはたくさんあるでしょう。


4 プライバシー保護のため,クライエント以外の者から情報収集は行わない。


プライバシー保護は,もちろん必要です。

プライバシー保護に留意しながら,情報収集は行われます。


ただし,情報収集は,クライエントの支援のために必要なものに限られます。


<今日の一言>


今日の問題では「動的」に引っ掛かると,正解できる確率が下がります。


そのため,苦し紛れで,違和感があっても「パーソナリティに焦点化して,クライエントに関する情報を収集する」といった選択肢を選んでしまいがちになります。


国家試験の得点力を上げる方法はいくつも存在しますが,完璧に意味がわからなくても「この文章はおおよそこんな意味ではないだろうか」と概略をつかむことはとても重要です。


「動的」というたった2文字のために,その問題を正解できないのでは,あまりにもったいないと思いませんか?

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