今回は,行動変容アプローチを取り上げます。
・行動変容アプローチ |
学習理論を活用して,クライエントの問題となる行動を消去や強化することにより,問題行動全体の変容を図る。 |
行動変容アプローチは,パーソナリティの変容を目指すものではなく,行動の変容を目指すものです。
その時に用いられるのが,学習理論です。
学習理論は,「心理学理論と心理的支援」で学ぶものですが,レスポンデント条件づけとオペラント条件づけがあります。
簡単に言えば,レスポンデント条件づけは,刺激が行動に変わるものです。
例としては,梅干しを見ると唾が出る,といったものがあります。
オペラント条件づけは,行動の結果に賞罰などを加えることで行動に変わるものです。
例としては,模擬試験の結果が良くて,そのことを先生に褒められて,そのあとよく勉強するようになった,などがあります。
さて,今回は,ペアレント・トレーニングを取り上げます。
ペアレント・トレーニングは,子育て中の親に対しての教育訓練プログラムです。
ペアレント・トレーニングにおける学習理論は,
それでは,今日の問題です。
第29回・問題102 子ども家庭支援センターのK家庭支援専門相談員(社会福祉士)は,行動変容アプローチを応用したペアレント・トレーニング講座の講師として,観察した子どもの行動の表現方法について話した。講座終了後,参加していたLさん(35歳,女性)から相談に乗ってほしいと,声をかけられた。別室で改めて話を聞くと,Lさんは5歳になる長男の行動で困っているという。講座での話を理解したつもりだが,子どもの行動を表現する適切な言い方を教えてほしいというものであった。そこで,K家庭支援専門相談員は,行動変容アプローチに基づく行動の表現を例として示した。
次の例示のうち,講座内容の趣旨に沿った表現として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 いつも落ち着きがありません。
2 ちゃんとできたことはありません。
3 何かにつけて口答えばかりです。
4 弟が持っているおもちゃを横取りします。
5 とにかくかんしゃく持ちなのです。
講座内容の趣旨とは「観察した子どもの行動の表現方法」です。
Lさんの要望は「子どもの行動を表現する適切な言い方を教えてほしい」というものです。
子どもの行動を表現するとはどういうことなのでしょうか?
ペアレント・トレーニングという専門用語に気を取られては,冷静に考えることができなくなるので,注意が必要です。
事例問題は,答えにあいまいさが生じないように作られます。
この問題の場合のポイントは,言葉から子どもの行動が具体的に分かるか,というものです。
それでは解説です。
1 いつも落ち着きがありません。
具体的ではない点は以下の通りです。
・「いつも」というのは,どの頻度? 24時間中?
・落ち着きがない,というのはどんな様子?
2 ちゃんとできたことはありません。
・「ちゃんと」とは何? その基準は?
3 何かにつけて口答えばかりです。
・「何かにつけて」とは,どんな時? その内容は?
4 弟が持っているおもちゃを横取りします。
5 とにかくかんしゃく持ちなのです。
・かんしゃく持ちとは何? どんな行動?
<今日の一言>
今日の問題は,ペアレント・トレーニングを知らなくても正解できる可能性のあるものでしょう。
逆に,ペアレント・トレーニングにとらわれると焦ってしまう恐れがあります。
先にも述べたように,ソーシャルワーク系の事例問題の場合は,解釈によって正解が分かれるような問題は出題しません。
そのため,ポイントに一度気が付くと,それ以外は正解に見えることはほとんどありません。
今日の問題ももう一度見直してみてください。