2020年9月5日土曜日

解決志向アプローチとは

様々なアプローチは,毎年必ず出題されてきました。

しかも複数問が出題されています。

 

アプローチ名

援助方法

・心理社会的アプローチ

状況の中の人」を基本概念として,心理社会的に課題のあるクライエントに対して,コミュニケーションを通して関わっていく。

・機能的アプローチ

ワーカーの所属する機関の機能を活用して,クライエントの意志で問題解決できるように援助する。

・問題解決アプローチ

クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する。

・課題中心アプローチ

クライエント自らが問題を解決するための課題を設定し,あらかじめ決められた期間の中で課題を達成することを目指す。

・危機介入アプローチ

危機状態に陥っている人に対して早期にかかわり,危機に対して対処能力を高める。

・行動変容アプローチ

学習理論を活用して,クライエントの問題となる行動を消去や強化することにより,問題行動全体の変容を図る。

・エンパワメントアプローチ

クライエントが抑圧された状況を認識して,潜在能力に気づいて,対処能力を高められるようにかかわる。

・ナラティブアプローチ

クライエントが語るストーリーを重視して,新たな意味の世界を創り出すことを援助する。

・解決志向アプローチ

クライエントが抱く解決のイメージを尊重し,その実現に向けてクライエントの社会的機能を高めることを目指す。

・フェミニストアプローチ

女性にとっての差別や抑圧などの社会的な現実を顕在化させ,個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指す。

・実存主義アプローチ

利用者が他者とのつながりを形成し,疎外状態から解放されることに焦点を当てる。

・エコロジカルアプローチ

「人と環境」の交互作用に着目して援助する。

 

アンダーラインを引いたところは,特に押さえておいてほしいキーワードです。

 

今回は,解決志向アプローチを取り上げます。

 

解決志向アプローチは,「クライエントが抱く解決のイメージを尊重し,その実現に向けてクライエントの社会的機能を高めることを目指す」と書きました。

 

この「クライエントが抱く解決のイメージ」というのは,未来を志向したものです。

 

未来に目を向けることができるように,特徴的な質問を活用してアプローチしていきます。

 

エクセプション・クエスチョン

エクセプションは,例外を意味し,多くの場合はうまくいかないものであっても,うまくいった時を思い起こしてもらうことで,その例外が多く発生することを目的にした質問です。

クライエントはうまくいかないことに目を向けがちですが,毎回だめだったわけではなく,うまくいくこともあります。そこに気がついてもらうことが大切です。


スケーリング・クエスチョン
今までの体験などを数値化して答えてもらう質問です。
現在の状況がとても辛いと思っても,もうちょっと頑張れそうだと思えることを目的としています。


コーピング・クエスチョン
今までの困難な状況をどのように乗り越えてきたのかを尋ねる質問です。


サバイバル・クエスチョン

サバイバルは,生き延びることを意味しています。サバイバル・クエスチョンは,コーピング・クエスチョンの一つで,コーピング・クエスチョンを用いる時よりももっともっと辛い状況の時に用います。

辛い状況であっても生き延びてきたからこそ今があります。
そのことを称賛し,クライエントに勇気をもってもらうことを目的とした質問です。


ミラクル・クエスチョン

最も解決志向アプローチっぽい質問です。


ネットで調べると,「朝を覚ますと今までの問題がすべて解決しています。あなたはそのことにどのように気がつきますか」といったような説明が多いと思います。

誤解を恐れず,簡単に述べると「今の問題がすべて解決したら,あなたはどうしますか」といったことを目的とした質問です。

 

 

それでは,今日の問題です。

 

29-100】 解決志向アプローチに関する次の記述として,正しいものを1つ選びなさい。

1 問題の原因の追求よりも,クライエントのリソース(能力,強さ,可能性等)を活用することを重視する。

2 ヒューマンシステムを言語システムとして捉える。

3 対話を,専門家ネットワークと個人的ネットワークの間に生まれるものと捉える。

4 個人と環境の継続的な相互作用により,無力化が起こると考える。

5 クライエントが,自分の人生を描き出す対話のパートナーとなる。

 

 

難しめの選択肢が含まれているので,正解を正しく認識しないと底なし沼に落ち込む恐れがあります。

 

この5つの選択肢のうち,未来を志向するキーワードが含まれているのは,


1 問題の原因の追求よりも,クライエントのリソース(能力,強さ,可能性等)を活用することを重視する。

 

しかありません。そしてこれが正解です。

 

ほかの選択肢も確認します。

 

2 ヒューマンシステムを言語システムとして捉える。

 

なんだかよくわからない文章です。こういったものが正解になることはまずありません。

 

3 対話を,専門家ネットワークと個人的ネットワークの間に生まれるものと捉える。

 

これもなんだかよくわからない文章です。おかしな文章を入れて,受験生を混乱させようという意思が読み取れるように思います。

 

4 個人と環境の継続的な相互作用により,無力化が起こると考える。

 

無力化や抑圧というキーワードが含まれるのは,エンパワメントアプローチです。

 

5 クライエントが,自分の人生を描き出す対話のパートナーとなる。

 

この文章は,出題された当時,おかしな言い回しのものだと思った不思議な選択肢です。

 

改めて今読んでみると,その違和感の意味がわかるような気がします。

 

「クライエントが」がどこにかかっているのかが明確ではないように思います。

 

「クライエントが対話のパートナーになる」

あるいは

「クライエントが自分の人生を描き出す」

 

前者であれば,対話のパートナーとなるのは「クライエント」になります。

後者であれば,対話のパートナーとなるのは「ワーカー」になります。

 

ムリにつくった文章なので,おかしなものになったのではないでしょうか。

 

こういったものが正解になることはまずありません。

 

解決志向アプローチは,ミラクルク・エスチョンなど特徴的な質問を活用するからといって,文章もミラクルなものであるはずがありません。

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