問題解決アプローチは,心理社会的アプローチと機能的アプローチの折衷アプローチとして,「ケースワークは死んだ」という言葉で知られるパールマンが提唱したものです。
パールマンというイメージから男性のように思えますが,女性です。
1905年に生まれて,2004年に亡くなっています。
1905年は,日本で言うと明治28年です。日露戦争の講和のためのポーツマス条約を締結した年にパールマンは誕生しました。
・問題解決アプローチ |
クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する。 |
このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。
ワーカビリティは,援助を自分に取り入れることの能力を言います。
クライエントに問題解決の動機付けがされてこそ援助可能となります。つまりクライエント自身がその役割を理解して問題解決に取り組むことが大切です。逆に,問題解決の動機付けがなされていないクライエントには用いることが困難です。
問題解決アプローチで用いられる介入技法には「部分化」があります。
部分化とは,クライエントが抱える問題を分解することです。
これによって,解決困難な問題であっても,解決できる部分を見出すことができます。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題101 パールマン(Perlman,H.)が提唱した問題解決アプローチの援助技法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会生活技能訓練(SST)の技法を用いる。
2 ライフストーリーの書き換えを目指した技法を用いる。
3 部分化の技法を用いる。
4 強化による行動変容によって適応行動を増やす技法を用いる。
5 例外探しの技法を用いる。
正解は,
3 部分化の技法を用いる。
今なら,「部分化」はどの参考書に書かれていることでしょう。
しかし,この問題が出題された国試を受験した人の中で,部分化を勉強していた人はそれほど多くはなかったと考えられます。
この問題を正解するためのポイントは,消去できる選択肢を確実に消去することです。
一つでも消去できない選択肢があると,正解にたどり着くことができません。
そのようにこの問題は構成されています。
それだけ,ほかの選択肢は特徴的な内容となっています。
1 社会生活技能訓練(SST)の技法を用いる。 |
→ 行動変容アプローチ |
2 ライフストーリーの書き換えを目指した技法を用いる。 |
→ ナラティブアプローチ |
4 強化による行動変容によって適応行動を増やす技法を用いる。 |
→ 行動変容アプローチ |
→ 解決志向アプローチ |
これらをきっちり消去することで,正解が残ります。
<今日の一言>
今日の問題は,実に美しい問題だと思いませんか?
選択肢の中に,間違った内容のものは一つもありません。
間違っているのは,問題解決アプローチではなく,別のアプローチのことを述べたものだからです。
極めて美しさが際立つのは,
普通の問題なら,主語にあたる部分を入れ替えて,
問題解決アプローチでは,例外探しの技法を用いる。
というように構成するところですが,そうなっていないことです。
国試勉強をしていると,無味乾燥に思えるかもしれませんが,違った視点で見ると,実に興味深いことがたくさんあります。
その中には,解答テクニックにつながるヒントも多く含まれています。