今回は,バイステックの7原則とも言われる「ケースワークの原則」に取り組んでいきたいと思います。
個別化 |
クライエントを他のクライエントと比べることなく,理解すること。 |
意図的な感情表出 |
クライエントが感情を表現することができること。 |
統制された情緒的関与 |
援助者が自分の情緒をコントロールできること。 |
受容 |
クライエントを受け止めること。 |
非審判的態度 |
クライエントを非難するような態度を取らないこと。 |
自己決定 |
クライエントが自己決定する主体であること。 |
秘密保持 |
クライエントに関する情報を漏らさないこと。 |
理解しにくいのは,「意図的な感情表出」と「統制された情緒的関与」でしょう。
感情を表出するのは,クライエントです。
情緒を統制するのは,ワーカーです。
これが逆だとおかしなことになってしまいます。
統制された情緒的関与ができるようになるには,ワーカーの自己覚知が欠かせません。
なぜなら,ワーカー自身の価値観がクライエントの話した内容を許せないものであったなら,ワーカーは混乱し,冷静にクライエントに接することができなくなってしまうかもしれないからです。
ワーカーは個人的にどのような価値観を持っていようが,ソーシャルワークには関係ないことです。
それを持ち込まないようにするのが,自己覚知であり,統制された情緒的関与です。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題106 バイステック(Biestek,F.)の援助関係形成の原則に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 「自己決定の原則」は,クライエント自身や第三者に重篤な危害が及ぶことが想定される場合においても優先する。
2 「受容の原則」とは,ワーカーの個人的な価値観と一致する場合において,クライエントを受け止めることである。
3 「個別性尊重の原則」とは,他のクライエントと比較しながら,クライエントの置かれている状況を理解することである。
4 「非審判的態度の原則」とは,クライエントを一方的に非難したり,判断しないことである。
5 「統制された情緒的な関与の原則」とは,クライエント自身が自らの情緒的混乱をコントロールできるようにすることである。
冷静に読めば,それほど難しくはない問題かもしれません。
しかし,国試会場は特別な空間です。
普段できることがその場でも同じようにできないことがあるのが怖いところです。
正解は,選択肢4です。
4 「非審判的態度の原則」とは,クライエントを一方的に非難したり,判断しないことである。
ぜんぜん難しくはないでしょう,
しかし,国試会場では,そんなに簡単に正解させてくれないのです。
特に注意すべきなのは,カタカナ語は,よくよく読まないと勘違いや早飲み込みをしてしまうことがあることです。
それでは解説です。
1 「自己決定の原則」は,クライエント自身や第三者に重篤な危害が及ぶことが想定される場合においても優先する。
原則は,例外があるから,原則なのです。
例外がないのは,原理といいます。
自己決定の原則の例外は,生命等に危険がある場合です。
2 「受容の原則」とは,ワーカーの個人的な価値観と一致する場合において,クライエントを受け止めることである。
原則は。例外があるので原則ですが,ワーカーの個人的な価値観と一致する場合以外は受容しないのであれば,原則どころの話ではなくなります。
ワーカーの価値観をソーシャルワークに持ち込むのはご法度です。
3 「個別性尊重の原則」とは,他のクライエントと比較しながら,クライエントの置かれている状況を理解することである。
他のクライエントと比較するのであれば,個別化ではなくなってしまいます。
5 「統制された情緒的な関与の原則」とは,クライエント自身が自らの情緒的混乱をコントロールできるようにすることである。
この選択肢が要注意です。
情緒的混乱をコントロールするのは,ワーカーです。
クライエントは「意図的な感情表出」です。