社会福祉士は,相談援助の専門職です。
心理職が行うカウンセリング技法は,ソーシャルワーク場面でも活用できます。
参考書には,たくさんの技法が書かれていますが,特に気をつけたいのは,感情の反映です。
感情の反映は,クライエントの発言の情緒的な面を言葉にして返す技法です。
事例問題が,第22回と第30回に出題されていますが,どちらも正解は「感情の反映」となっています。
第22回
「私は一体これからどうしたらいいでしょうか。小さい子どもを抱えて別れることもできず,ただこの状況に耐え続けるしかないのでしょうか」といって沈黙した。それに対して,相談員(社会福祉士)は「今は八方ふさがりの状態で,とてもおつらいのですね」と応じた。
第30回
「親には迷惑を掛けたくないし,行政のお世話になるのも気が引ける…」と黙り込むBさんに,A社会福祉士は,「どうにもならなくて,おつらいのですね」と伝えた。
かなり高度な面接技法であることがわかりますね。
それでは今日の問題です。
第29回・問題108 相談援助のための面接に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 閉ざされた質問は,クライエントが自分の考えや気持ちを表現できるように促すために用いる。
2 要約とは,クライエントの言葉をそのまま繰り返し,対話を促すことである。
3 感情の反映とは,クライエントの感情や態度に関係なく,ワーカー自身の感情を伝えることである。
4 沈黙場面では,クライエントの混乱が沈黙の第一の理由と捉え,ワーカーが指示的に関わる。
5 非言語的な表現の観察においては,クライエントのアンビバレントな感情を理解する。
この問題にも「感情の反映」が出題されていますが,これが正解ではないと判断するのは,それほど難しくはないでしょう。
そういった意味では,問題の作り方が下手だなぁと思います。
それでは解説です。
1 閉ざされた質問は,クライエントが自分の考えや気持ちを表現できるように促すために用いる。
クライエントが自分の考えや気持ちを表現できるように促すために用いるのは,「閉じられた質問」です。
2 要約とは,クライエントの言葉をそのまま繰り返し,対話を促すことである。
クライエントの言葉をそのまま繰り返すのは,「繰り返し」の技法です。
3 感情の反映とは,クライエントの感情や態度に関係なく,ワーカー自身の感情を伝えることである。
ソーシャルワークの場面では,ワーカーの感情を伝えることはありません。
なぜならソーシャルワークには必要ではないからです。
4 沈黙場面では,クライエントの混乱が沈黙の第一の理由と捉え,ワーカーが指示的に関わる。
沈黙には,意味があります。
慣れないワーカーは,クライエントが沈黙すると焦ってしまいますが,それを打開しようと指示的にかかわるのは,最悪です。
ソーシャルワークの場面では,一般的に指示的にかかわることはありません。
5 非言語的な表現の観察においては,クライエントのアンビバレントな感情を理解する。
これが正解です。
アンビバレントとは,「好き」と「嫌い」といった反対の感情があることです。
<今日の一言>
アンビバレントは,聞いたことがない受験生も多かったと思いますが,ほかの選択肢はわかりやすいので,消去することで,この選択肢が残ります。
知らないものが出題されても,焦ることなく,落ち着いて考えると正解できることがよくあります。
焦ることなく,落ち着くことの重要性を教えてくれる問題です。