事例問題は,多くの人が思っているほど正解するのは簡単ではありません。
慣れも必要です。
さて,今回のテーマは「設問に気をつけること」です。
設問に適合するものを探し出さなければなりません。
国家試験問題は,事例検討ではありません。
中には事例検討のように考えても正解できる問題もありますが,そのように解くと正解できない問題もあります。
結構単純な論理ですが,うっかりするとそこが抜け落ちるので,注意が必要です。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題114 事例を読んで,ソーシャルサポートネットワークを活用したJ支援員(社会福祉士)の支援として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
R市の高齢福祉課はNPO法人に委託して,団地内で「コミュニティカフェ」を開始した。委託を受けたNPO法人に所属するJ支援員は,地域包括支援センターや社会福祉協議会の協力を得て,地域住民ボランティアと共に,月に2回,団地内の集会所において主に高齢者を対象としてカフェを開催している。しかし,団地内では一人暮らし高齢者が増えており,カフェに参加していない人も多い。
1 身体機能に不安を感じる参加者に,地域包括支援センターの利用を勧める。
2 カフェのプログラムは,専門職が行うものを優先する。
3 参加者の仲間関係によってグループ分けをする。
4 団地自治会に見守り活動を提案する。
5 カフェの運営会議では社会福祉協議会の要望を優先する。
この問題の条件は「ソーシャルサポートネットワークを活用した支援」です。
たとえ,適切な対応だとしてもソーシャルサポートネットワークを活用していなければ,不適切になります。
どんな問題であっても,絶対に正解にならないものは,
2 カフェのプログラムは,専門職が行うものを優先する。
5 カフェの運営会議では社会福祉協議会の要望を優先する。
の2つです。
残るのは,
1 身体機能に不安を感じる参加者に,地域包括支援センターの利用を勧める。
3 参加者の仲間関係によってグループ分けをする。
4 団地自治会に見守り活動を提案する。
この中で,ソーシャルサポートネットワークを活用していないのは,
3 参加者の仲間関係によってグループ分けをする。
この選択肢は,カフェ内部の対応になっています。
うっかりすると,この選択肢を正解にしてしまう人もいるでしょう。
グループ分けするのは,決して不適切な対応ではありません。
しかし,ソーシャルサポートネットワークを活用していないので正解にはなりません。
正解は,
1 身体機能に不安を感じる参加者に,地域包括支援センターの利用を勧める。
4 団地自治会に見守り活動を提案する。
選択肢1を選びにくいのは「利用を勧める」だからです。
ここに引っ掛かったとしても,ソーシャルサポートネットワークを活用した支援なので,適切なのです。
本当に気をつけたい問題です。
<今日の一言>
数点差で不合格になった人は,とても悔しかったことでしょう。
知識不足を実感するかもしれません。
知識をつけても,今日の問題のようなものを正解できなければ,ざるで水をすくうようなものです。
何度も数点差で涙を流している人は,事例問題なども振り返ってみてください。