今回は,地域共生社会を学びます。
地域共生社会とは・・・
制度・分野ごとの『縦割り』や「支え手」「受け手」という関係を超えて,地域住民や地域の多様な主体が『我が事』として参画し,人と人,人と資源が世代や分野を超えて『丸ごと』つながることで,住民一人ひとりの暮らしと生きがい,地域をともに創っていく社会。 |
詳しく述べると・・・
「縦割り」という関係を超える
・制度の狭間の問題に対応
・介護,障害,子ども・子育て,生活困窮といった分野がもつそれぞれの専門性をお互いに活用する
・1機関,1個人の対応ではなく,関係機関・関係者のネットワークの中で対応するという発想へ
「支え手」「受け手」という関係を超える
・一方向から双方向の関係性へ
・一方向の関係性では,本人の持つ力を引き出すという発想になりにくい。
「世代や分野」を超える
・世代を問わない対応
・福祉分野とそれ以外の分野で一緒にできることを考える
(例:保健医療,労働,教育,住まい,地域再生,農業・漁業など多様な分野)
住民一人ひとりの暮らしと生きがい,地域をともに創っていく
・地域住民や地域の多様な主体が参画し,暮らし続けたいと思える地域を自ら生み出していく。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題22
次の記述のうち,近年の政府による福祉改革の基調となっている「地域共生社会」の目指すものに関する内容として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 老親と子の同居を我が国の「福祉における含み資産」とし,その活用のために高齢者への所得保障と,同居を可能にする住宅等の諸条件の整備を図ること。
2 「地方にできることは地方に」という理念のもと,国庫補助負担金改革,税源移譲,地方交付税の見直しを一体のものとして進めること。
3 普遍性・公平性・総合性・権利性・有効性の五つの原則のもと,社会保障制度を整合性のとれたものにしていくこと。
4 行政がその職権により福祉サービスの対象者や必要性を判断し,サービスの種類やその提供者を決定の上,提供すること。
5 制度・分野ごとの縦割りや,支え手・受け手という関係を超えて,地域住民や地域の多様な主体が我が事として参画すること等で,住民一人ひとりの暮らしと生きがい,地域をともに創っていくこと。
答えは,前説によってすぐわかると思いますが,解説します。
1 老親と子の同居を我が国の「福祉における含み資産」とし,その活用のために高齢者への所得保障と,同居を可能にする住宅等の諸条件の整備を図ること。
これは,高齢者社会が目指すもののことです。
2 「地方にできることは地方に」という理念のもと,国庫補助負担金改革,税源移譲,地方交付税の見直しを一体のものとして進めること。
これは,三位一体改革のことです。
3 普遍性・公平性・総合性・権利性・有効性の五つの原則のもと,社会保障制度を整合性のとれたものにしていくこと。
これは,社会保障制度審議会の1995年勧告で示されたものです。
4 行政がその職権により福祉サービスの対象者や必要性を判断し,サービスの種類やその提供者を決定の上,提供すること。
これは,措置制度のことを述べたものです。
5 制度・分野ごとの縦割りや,支え手・受け手という関係を超えて,地域住民や地域の多様な主体が我が事として参画すること等で,住民一人ひとりの暮らしと生きがい,地域をともに創っていくこと。
これが正解です。
〈今日の一言〉
地域共生社会のほかで覚えておきたいのは,措置制度です。
2000年(平成12年)の社会福祉法によって,それまで福祉サービスを利用するためには,行政に申し込んで行政が判断する(措置制度)が,サービス提供事業者と契約する契約制度へと変更され,現在に至ります。
しかし,現在でも,児童福祉,高齢者福祉などには措置制度が残ります。
児童福祉では,里親委託や児童養護施設などの社会的養護など,高齢者福祉では,養護老人ホームへの入所などは,現在でも措置によってなされます。