現行の生活保護法に至るまでの流れをまず押さえましょう。
明治以降の日本の救貧制度は以下の4つです,
①恤救規則
②救護法
③旧・生活保護法
④現・生活保護法
発展過程はこれらを押さえておくだけで大丈夫です。
たったこれだけです。
恤救規則
救済の対象 ➡ 無告の救民(児童は13歳以下の孤児,老人は70歳以上の老衰者)
救済の方法 ➡ 米代の金銭給付 ※コメの現物給付じゃないよ!!
救済の実施 ➡ 国 ※地方じゃないよ!!
救護法
救護の対象 ➡ 65歳以上の老衰者,障害などで仕事に支障がある者など。
※「性行著しく不良又は著しく怠惰な場合は救護しなくてもよい」「扶養義務者が扶養できる者は,急迫な事情がある場合を除いて保護しない」。
救護の種類 ➡ 生活扶助 医療扶助 助産扶助 生業扶助(4種類)
救護の実施 ➡ 市町村
補助機関 ➡ 方面委員 ※協力機関ではないよ!!
旧・生活保護法
保護の対象 ➡ 「無差別平等の原則」。ただし欠格条項あり(労働意欲がない, 素行不良者,扶養可能な扶養義務者がいるなど)。「扶養義務者が扶養できる者は,急迫な事情がある場合を除いて保護しない」。しかし,「無差別平等」は打ちだしている。
保護の種類 ➡ 生活扶助 医療扶助 助産扶助 生業扶助 葬祭扶助(5種類)
保護の種類 ➡ 生活扶助 医療扶助 助産扶助 生業扶助 葬祭扶助(5種類)
保護の実施 ➡ 市町村
補助機関 ➡ 民生委員
元になるもの ➡ 社会救済(SCAPIN775) ※GHQによる指令書です。
現・生活保護法
保護の対象 ➡ 本来の「無差別平等の原則」が実現。
保護の種類 ➡ 生活扶助 医療扶助 助産扶助 生業扶助 葬祭扶助 教育扶助 住宅扶助 + 介護扶助(8種類)
保護の実施 ➡ 市町村
保護機関 ➡ 福祉事務所
補助機関 ➡ 社会福祉主事
協力機関 ➡ 民生委員
元になるもの➡ 日本国憲法第25条(生存権)
それでは今日の問題です。
第35回・問題26
福祉六法の制定時点の対象に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 児童福祉法(1947年(昭和22年))は,戦災によって保護者等を失った満18歳未満の者(戦災孤児)にその対象を限定していた。
2 身体障害者福祉法(1949年(昭和24年))は,障害の種別を問わず全ての障害者を対象とし,その福祉の施策の基本となる事項を規定する法律と位置づけられていた。
3 (新)生活保護法(1950年(昭和25年))は,素行不良な者等を保護の対象から除外する欠格条項を有していた。
4 老人福祉法(1963年(昭和38年))は,介護を必要とする老人にその対象を限定していた。
5 母子福祉法(1964年(昭和39年))は,妻と離死別した夫が児童を扶養している家庭(父子家庭)を,その対象外としていた。
今日のテーマは,選択肢3に出題されています。
それでは解説です。
1 児童福祉法(1947年(昭和22年))は,戦災によって保護者等を失った満18歳未満の者(戦災孤児)にその対象を限定していた。
現在の児童福祉法の児童の定義は,
児童とは、満十八歳に満たない者
この定義は,児童福祉法ができた当初から同じです。
戦災孤児に限定していません。
2 身体障害者福祉法(1949年(昭和24年))は,障害の種別を問わず全ての障害者を対象とし,その福祉の施策の基本となる事項を規定する法律と位置づけられていた。
障害の種別を問わず全ての障害者を対象とし,その福祉の施策の基本となる事項を規定する法律と位置づけられているのは,障害者基本法です。
3 (新)生活保護法(1950年(昭和25年))は,素行不良な者等を保護の対象から除外する欠格条項を有していた。
欠格条項があったのは,救護法と(旧)生活保護法です。
日本国憲法に基づいて作られた(新)生活保護法には,無差別平等の原理があります。
貧困に陥った理由は問われません。
4 老人福祉法(1963年(昭和38年))は,介護を必要とする老人にその対象を限定していた。
老人福祉法では老人を定義していませんが,対象は限定していません。
5 母子福祉法(1964年(昭和39年))は,妻と離死別した夫が児童を扶養している家庭(父子家庭)を,その対象外としていた。
これが正解です。
現在の母子及び父子並びに寡婦福祉法は,当初は母子を対象としていました。
その後,寡婦を対象に加え,さらに父子が加わり,現在に至ります。