2025年5月27日火曜日

社会福祉法が定める苦情の解決

 

社会福祉法では,苦情の解決のため,社会福祉事業の経営者に以下の努力義務を規定しています。

 

社会福祉事業の経営者による苦情の解決

第八十二条 社会福祉事業の経営者は,常に,その提供する福祉サービスについて,利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならない。

 

 

また,都道府県社会福祉協議会に設置される運営適正化委員会が,福祉サービスに関する利用者等からの苦情の解決に当たります。

 

運営適正化委員会は,苦情の解決に当たり,当該苦情に係る福祉サービスの利用者の処遇につき不当な行為が行われているおそれがあると認めるときは,都道府県知事に対し,速やかに,その旨を通知しなければなりません。

 

都道府県知事は,その通知に基づき,指導や指定の取消しなどを行います。

 

それでは,今日の問題です。

 

35回・問題30

福祉サービスの利用に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会福祉法は,社会福祉事業の経営者に対し,常に,その提供する福祉サービスの利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないと規定している。

2 社会福祉法は,社会福祉事業の経営者が,福祉サービスの利用契約の成立時に,利用者へのサービスの内容や金額等の告知を,書面の代わりに口頭で行っても差し支えないと規定している。

3 福祉サービスを真に必要とする人に,資力調査を用いて選別主義的に提供すると,利用者へのスティグマの付与を回避できる。

4 福祉サービス利用援助事業に基づく福祉サービスの利用援助のために,家庭裁判所は補助人・保佐人・後見人を選任しなければならない。

5 福祉サービスの利用者は,自らの健康状態や財力等の情報を有するため,サービスの提供者に比べて相対的に優位な立場で契約を結ぶことができる。

 

今日のテーマは,選択肢1に出題されています。

 

問題づくりが下手な問題なので,知識がなくても正解できそうな問題かもしれません。

 

それでは,解説です。

 

1 社会福祉法は,社会福祉事業の経営者に対し,常に,その提供する福祉サービスの利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないと規定している。

 

これが正解です。苦情の解決は努力義務です。

 

苦情を適切に解決しなければならない。

 

と出題されると誤りとなります。

 

2 社会福祉法は,社会福祉事業の経営者が,福祉サービスの利用契約の成立時に,利用者へのサービスの内容や金額等の告知を,書面の代わりに口頭で行っても差し支えないと規定している。

 

(利用契約の成立時の書面の交付)

第七十七条 社会福祉事業の経営者は、福祉サービスを利用するための契約(厚生労働省令で定めるものを除く。)が成立したときは、その利用者に対し、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。

 一 当該社会福祉事業の経営者の名称及び主たる事務所の所在地

 二 当該社会福祉事業の経営者が提供する福祉サービスの内容

 三 当該福祉サービスの提供につき利用者が支払うべき額に関する事項

 四 その他厚生労働省令で定める事項

 

3 福祉サービスを真に必要とする人に,資力調査を用いて選別主義的に提供すると,利用者へのスティグマの付与を回避できる。

 

スティグマの付与を回避しやすいと言えるのは,普遍主義です。

 

選別主義を用いた制度の代表は,生活保護制度です。

 

スティグマを感じやすいのがイメージできるでしょう。

 

4 福祉サービス利用援助事業に基づく福祉サービスの利用援助のために,家庭裁判所は補助人・保佐人・後見人を選任しなければならない。

 

社会福祉法に規定される福祉サービス利用援助事業は,日常生活自立支援事業のことです。事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人を対象とします。

 

補助人等を選任しなくても,判断能力があると認められれば利用できます。

 

5 福祉サービスの利用者は,自らの健康状態や財力等の情報を有するため,サービスの提供者に比べて相対的に優位な立場で契約を結ぶことができる。

 

利用者は,サービス提供事業者よりも情報などが不足しているため,契約するのに不利です。

 

これは,情報の非対称性と呼ばれるものです。

 

そのため,第三者評価など,サービスの内容を知る仕組みが必要です。

 

社会福祉事業の経営者には,以下の努力義務が規定されています。

 

福祉サービスの質の向上のための措置等

第七十八条 社会福祉事業の経営者は,自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより,常に福祉サービスを受ける者の立場に立つて良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。

 

現在のところでは,第三者評価の受審義務があるのは,社会的養護施設(児童養護施設・乳児院・母子生活支援施設・児童心理治療施設・児童自立支援施設)のみです。

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