今回は,小さな政府を学びます。
小さな政府とは,財政支出が小さい政府のことです。
歴史的には,アダム・スミスが「夜警国家」(国家の機能を最小限にとどめる国家)を主張したことで知られます。
その後,20世紀の後半に出てきたイギリスのサッチャー首相に代表される新自由主義も小さな政府を目指すものです。
それでは,今日の問題です。
第35回・問題24
福祉政策に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 アダム・スミス(Smith,A.)は,充実した福祉政策を行う「大きな政府」からなる国家を主張した。
2 マルサス(Malthus,T.)は,欠乏・疾病・無知・不潔・無為の「五つの巨悪(巨人)」を克服するために,包括的な社会保障制度の整備を主張した。
3 ケインズ(Keynes,J.)は,不況により失業が増加した場合に,公共事業により雇用を創出することを主張した。
4 フリードマン(Friedman,M.)は,福祉国家による市場への介入を通して人々の自由が実現されると主張した。
5 ロールズ(Rawls,J.)は,国家の役割を外交や国防等に限定し,困窮者の救済を慈善事業に委ねることを主張した。
かなり難易度が高い問題です。
もしかすると高校生のほうが正解できるかもしれません。
正解となったものは,「政治・経済」で学ぶものだからです。
正解は,選択肢3です。
3 ケインズ(Keynes,J.)は,不況により失業が増加した場合に,公共事業により雇用を創出することを主張した。
これをケインズ主義といいます。
1929年におきた世界大恐慌に対して,アメリカでは,ニューディール政策を行いました。
その時のベースとなったものがケインズ主義です。この思想は,小さな政府に対して,大きな政府といいます。
思い出したでしょうか。
ほかの選択肢も解説します。
1 アダム・スミス(Smith,A.)は,充実した福祉政策を行う「大きな政府」からなる国家を主張した。
アダム・スミスが出張したのは,小さな政府です。
2 マルサス(Malthus,T.)は,欠乏・疾病・無知・不潔・無為の「五つの巨悪(巨人)」を克服するために,包括的な社会保障制度の整備を主張した。
マルサスが主張したのは,著書「人口論」の中で,救貧法は,貧困を増大させるというものです。
食糧には限界があり,貧困者が救貧法によって救済されることで人口が増大し,食糧と人口の差が貧困を生み出すと考えました。
欠乏・疾病・無知・不潔・無為の「五つの巨悪(巨人)」を克服するために,包括的な社会保障制度の整備を主張したのは,ベヴァリッジです。
4 フリードマン(Friedman,M.)は,福祉国家による市場への介入を通して人々の自由が実現されると主張した。
フリードマンが出張したのは,小さな政府です。
5 ロールズ(Rawls,J.)は,国家の役割を外交や国防等に限定し,困窮者の救済を慈善事業に委ねることを主張した。
ロールズが提唱したのは,格差原理です。
格差原理とは,社会的な不平等が認められるのは、最も恵まれない人々に収入,機会,自由などを配分する場合のみと考える原理です。
国家の役割を外交や国防等に限定し,困窮者の救済を慈善事業に委ねることとは,アダム・スミスが主張した夜警国家のことです。