ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。
その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。
その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム理論に影響を受けたジェネラリスト・ソーシャルワークとなっていきます。
これによって,従来の方法にとらわれない「総合的かつ包括的な相談援助」が可能となってきました。
改めて考えてみると当然です。
縦割りの法制度や方法論は,支援する側の都合であり,支援を必要としている人の都合ではありません。
特に昨今の福祉ニーズは,複雑化していることもあり,ジェネラリスト・ソーシャルワークの視点が求められているとも言えます。
ジェネラリスト・ソーシャルワークのジェネラリストとは,スペシャリストの対義語であり,「全体像をとらえること」を意味しています。
それでは今日の問題です。
第23回・問題90 総合的かつ包括的な相談援助に向けたジェネラリストの視点に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 地域住民の参加を得ながら発見と見守りの機能を強化することで,予防的な働きかけを重視する。
2 困難な問題が重複したクライエントについては,最初に相談を受けた機関の担当ワーカーによって最後まで対処することが求められる。
3 既存の社会福祉制度の対象となる人を優先し,適切にサービスを提供することを重視する。
4 支援困難な事例であっても,できる限り専門職の力を借りずに地域住民で対処できるように働きかけることが目標となる。
5 援助者の方からクライエントに積極的に働きかけるのではなく,本人の意志を尊重して自ら援助を求めてきた人を対象とすることを基本とする。
旧カリキュラム時代にあった「社会福祉援助技術論」という科目は,現行カリキュラムでは「相談援助の基盤と専門職」と「相談援助の理論と方法」に分割されました。
その際に加わった内容が「総合的かつ包括的な相談援助」です。
現行カリキュラムの第1回国試では出題されず,初めて出題されたのは,今日の問題である第23回です。
その後,第24回,第25回と出題され,第29回では事例問題として出題されています。
一般的な一問一答式は,第25回に出題されたっきりです。
もう十分浸透したと考えているのか,しばらく間を空けて次の出題機会を待っているのかはわかりません。
しかし,出題基準で示されている限り,覚えておかなければならないことは間違いありません。
それはさておき,今日の問題は,設問によって勉強不足の人でも解ける可能性を高めている問題です。
「初めて問題」なので,サービスだったと言えるでしょう。
それでは解説です。
1 地域住民の参加を得ながら発見と見守りの機能を強化することで,予防的な働きかけを重視する。
これが正解です。
予防的な働きかけを重視する,の重視するという部分に引っかかるところかもしれません。
しかし,結果的にこれが残ります。
問題の発生後,つまり事後的にかかわるのが従来のソーシャルワークだったと言えますが,問題の発生を事前に予防するということは,新しいソーシャルワークの視点だと言えます。
まさしく,全体像をとらえた「ジェネラリスト」としての視点でしょう。
2 困難な問題が重複したクライエントについては,最初に相談を受けた機関の担当ワーカーによって最後まで対処することが求められる。
これは間違いです。
ジェネラリストの視点は,全体像をとらえることです。ニーズを充足するための最善の方法で支援します。
最初に相談を受けた機関が最後まで責任を持って対応するというのは,支援者側の都合でしかありません。
3 既存の社会福祉制度の対象となる人を優先し,適切にサービスを提供することを重視する。
これも間違いです。
既存の方法にとらわれないのが,ジェネラリストとしての視点です。
4 支援困難な事例であっても,できる限り専門職の力を借りずに地域住民で対処できるように働きかけることが目標となる。
これも間違いです。
目的はニーズの充足です。地域住民の力で解決できるものなら,そのような働きかけも必要でしょう。
しかし,この場合は支援困難な事例です。様々な機関の専門的な力が必要となると考えられます。
5 援助者の方からクライエントに積極的に働きかけるのではなく,本人の意志を尊重して自ら援助を求めてきた人を対象とすることを基本とする。
これも間違いです。
本人の意志を尊重するのはいつの時代も必要です。
自ら援助を求めてきた人を対象とするのは当然です。ジェネラリストとしての視点ではもう一歩必要です。
この場合は「援助者の方からクライエントに積極的に働きかける」がジェネラリストとしての視点だと言えるでしょう。
<今日の一言>
今日の問題は,設問が勉強が足りない人でも正解できる可能性を高めていると述べました。
その理由は設問に「総合的かつ包括的な相談援助」だと明記されているからです。
ジェネラリスト・アプローチもジェネラリスト・ソーシャルワークもわからなくても,総合的かつ包括的な相談援助にあたる選択肢を探し出せばよいのです。
ここで「ジェネラリストって何?」と思うと問題は解けなくなる元となるので注意が必要です。
特にこの問題の場合は,「総合的かつ包括的」という言葉から「地域包括支援センター」などを思い起こせる柔軟な思考があることで正解可能性を高めることになります。
問題を発生させない一次予防,問題の早期発見の二次予防といったものからの連想です。
難易度がそれほど高くない問題でも確実に正解するのは,決して簡単なものではありません。
だからこそ,こういった推測,連想などのプラスアルファのものをフル活用して,「正解可能性」を高める必要があるのです。
合格する人と合格できない人の差は,こんなところにも表れていきます。
最新の記事
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体は,市町村です。 同法における都道府県の役割は,障害福祉計画の作成,地域生活支援事業の実施,障害福祉サービス事業者等の指定などに限られます。 なお,自立支援医療には,育成医療,更生医療,精神通院医療の3種類がありますが,このう...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
様々なアプローチは,毎年必ず出題されています。 しかも3~4問が出題されています。 ようやく出題実績のある12種類が揃いました。 ・心理社会的アプローチ 「 状況の中の人 」を基本概念として,心理社会的に課題のあるクライエントに対して,コミュニケーションを通して関わってい...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
近年の出題基準から「日本社会福祉士会倫理綱領」が消えています。 第 37 回国家試験から新しいカリキュラムに移行しますが,そのカリキュラムでは「社会福祉士の倫理綱領」が示されています。 日本社会福祉士会も組織メンバーである日本ソーシャルワーカー連盟が「ソー...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
先日からソーシャルワークの発展過程を取り上げています。 取り上げる順番が逆になってしまいましたが,今回からケースワークの源流について学んでいきたいと思います。 まずは「現代社会と福祉」で学ぶ領域を押さえておきたいと思います。 イギリスでは,領主による「エンクロージャー...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
今回は,グループワーク(集団援助技術)の主な理論家を学びます。 グループワークの主な理論家 コイル セツルメントやYWCAの実践を基盤とし,グループワークの母と呼ばれた。 また,「グループワーカーの機能に関する定義」( ...
-
社会学の伝統的な研究領域の一つには,社会変動があります。 社会変動とは,社会の様子がどのように変わっていくかを示すものです。 ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ 軍事型社会から産業型社会へ などです。 さて,今回のテーマは,属性主義と業績主義です。 属性主義 とは,自分の出自な...