柔らかい ⇔ 硬い
温かい ⇔ 冷たい
有機的 ⇔ 機械的
こういった逆のイメージの言葉を使って社会調査を行う方法を「SD法」といいます。
ひとによってもちろん違いますが,どちらかというと,後者の「硬い」「冷たい」「機械的」といったイメージを持つのはないでしょうか。
しかし,システム理論はどちらかと言えば,前者の「柔らかい」「温かい」「有機的」の方が本来に近いです。
システム理論では,システムはシステムの構成要素の交互作用によって,変化していくととらえます。
変化するのがシステムです。
それにもかかわらずシステムと聞くと,プログラム化した機械というイメージを抱きがちです。
言葉から受けるイメージと実際が違うところが,試験委員のねらいどころとなります。
勉強した人は正解できる。
勉強が足りない人は正解できない。
国試にとって理想の問題です。
国試は,勉強した人と勉強が足りない人の差がつかなければならないのです。
「相談援助の理論と方法」は,あまり勉強せずに国試に臨む傾向があるので,なおのこと差がつきやすいものとなります。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題99 システム理論に基づく相談援助の対象に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 クライエント・システムの単位は,小集団に限られる。
2 人と環境との全体的視座から把握される。
3 家族への対応は,援助の全過程で,問題の原因となる構成員に焦点化される。
4 実践者の志向するケースワークなどの特定の方法によって把握される。
5 相談援助の対象としての個人は,システム概念から除外される。
正解は,選択肢2です。
2 人と環境との全体的視座から把握される。
システム理論では,人と環境を一体のものととらえるのが特徴です。
システム理論を理解していれば,答えはすぐわかるはずです。
システム理論を理解していなければ,答えがわからないでしょう。
社会福祉士の国試は難しく感じますが,結局はこういったところに差が生じます。
正解以外の解説はいらないかもしれませんが,一応解説します。
1 クライエント・システムの単位は,小集団に限られる。
クライエントに関連するものは,すべて環境です。
小集団に限られるものではないです。
3 家族への対応は,援助の全過程で,問題の原因となる構成員に焦点化される。
問題の原因となる構成員(クライエント)を取り巻く環境は,家族です。
援助の全過程で,問題の原因となる構成員に焦点化するのであれば,人と環境を一体化して働きかける,というシステム理論の視座がありません。
4 実践者の志向するケースワークなどの特定の方法によって把握される。
ソーシャルワークのアプローチには様々なものがあります。
エコロジカルアプローチなら,システム理論と言えるでしょう。
しかし,問題解決アプローチや危機介入アプローチに代表されるアプローチでは,システム理論の視座は強調されていません。
5 相談援助の対象としての個人は,システム概念から除外される。
人と環境がシステムです。
個人をシステムから除外してしまったら,システム理論ではなくなってしまいます。
<今日の一言>
システムと聞くと,難しそうだ,と思う人は多いと思います。
しかし,システム理論は,人と環境を一体のものとしてとらえて,その接点に働きかけるものだということさえ理解していれば,多くの問題は解けます。