2019年4月10日水曜日

ソーシャルワーク実践の共通基盤~価値・知識・介入

ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきました。

その統合化については,今まで紹介してきたとおりです。

バートレットは,ソーシャルワーク実践の共通基盤として,価値・知識・介入(調整活動)があることを明らかにしました。

今回からソーシャルワークの価値について取り上げたいと思います。

覚えるのは面倒だと思いますが,社会福祉士がソーシャルワーカーであるためには,価値を身につけることが欠かせないのです。

それでは今日の問題です。

第23回・問題88 ソーシャルワークの価値に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 バートレット(Bartlett,H.)は,調整活動のレパートリーに応じて価値や知識が異なることから,方法が価値や知識より優位にあると述べている。

2 ブトゥリム(Butrym,Z.)は,ソーシャルワーク固有の価値前提として,「人間尊重」「人間の社会性」「教育の可能性」を挙げている。

3 コーズ(Kohs,S.)は,価値の根源を求めていく中で,ソーシャルワークの基本的な諸価値は単一の哲学から導き出されたものであると結論づけている。

4 レヴィ(Levy,C.)は,倫理を人間関係及びその交互作用に価値が適用されたものと規定し,人間関係における行動に直接影響を及ぼす点に特色があると述べている。

5 ベーム(Boehm,W.)は,ソーシャルワークが社会的責任を負うことから,ソーシャルワークの価値はその社会における支配的な価値に一致すると述べている。


ものすごく難しく感じることでしょう。

この問題が出題された時点で正解できた人はほとんどいなかったものと思われます。

つまり,国試でこのような問題が出題されたときは,必ずしも正解できなければならないという問題ではないということです。

しかし,今は覚えなければなりません。

それでは解説です。

1 バートレット(Bartlett,H.)は,調整活動のレパートリーに応じて価値や知識が異なることから,方法が価値や知識より優位にあると述べている。

これは間違いです。

バートレットは絶対に覚えたいです。

前説に書いたように,価値・知識・介入(調整活動)は,ソーシャルワーク実践の共通基盤です。

分野やニーズが異なっていても,そのベースには価値・知識・介入(調整活動)があります。これらはバランスが取れていることが必要です。

2 ブトゥリム(Butrym,Z.)は,ソーシャルワーク固有の価値前提として,「人間尊重」「人間の社会性」「教育の可能性」を挙げている。

これも間違いです。

旧カリ時代にもブトゥリムは出題され,この後も出題されています。

特にしっかり覚えたいです。

ソーシャルワーク固有の価値前提として,「人間尊重」「人間の社会性」「変化の可能性」を挙げました。

クライエントは,変化するものです。

教育は,ソーシャルワークには向きません。


3 コーズ(Kohs,S.)は,価値の根源を求めていく中で,ソーシャルワークの基本的な諸価値は単一の哲学から導き出されたものであると結論づけている。

これは間違いです。

単一の哲学から導き出されたものではないと述べています。


4 レヴィ(Levy,C.)は,倫理を人間関係及びその交互作用に価値が適用されたものと規定し,人間関係における行動に直接影響を及ぼす点に特色があると述べている。


これが正解です。

このとおりのことを述べています。


5 ベーム(Boehm,W.)は,ソーシャルワークが社会的責任を負うことから,ソーシャルワークの価値はその社会における支配的な価値に一致すると述べている。


これは間違いです。

一致しては危険です。

一般的な価値と対決することも時には求められます。


<今日の一言>

今日の問題には,実は元ネタがあります。

第16回・問題6 社会福祉援助における価値に関する次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい。
1 コーズ(Kohs,S.)は,『ソーシャルワークの根源』において,価値の根源を求めていく中で,社会福社の基本的な諸価値は,単一の哲学から導き出されたものではないと述べている。
2 バートレット(Bartlett,H.)は,『社会福祉実践の共通基盤』において,ソーシャルワーク実践における本質的な要素は,価値,知識及び調整活動の総体から構成され,知識と価値が優先されるべきであると述べている。
3 パールマン(Perlman,H.)は,『ソーシャルワークとは何か』において,三つの価値前提として「人間尊重」「人間の社会性」「変化の可能性」を挙げ,これらは,ソーシャルワークにのみ固有の価値であって,他の援助方法に対するソーシャルワークの独自性を示していると述べている。
4 「レヴィ(Levy,C.)は,『ソーシャルワーク倫理の指針』において,人間関係と人間交互作用に価値が適用されたものが倫理であると規定し,倫理も選択されたものであるが,人間関係における行動に直接影響を及ぼす点に特色があると述べている。
5 ベーム(Boehm,W.)は,『ケースワークの基礎』の中の論文「ソーシャル・ワークの性格」において,社会全体に対するソーシャルワークの責任について述べているが,それは,その社会で支配的な価値とあらゆる点で一致するような一組の価値を,ソーシャルワークに賦与することを意味するものではないと述べている。

答えは,選択肢3です。

パールマンではなく,ブトゥリムです。

この問題もとても難しいですが,この問題にも前年の第15回に元ネタがあります。

かつては,このように続けて出題されることが多くありました。
3年の過去問で合格できる,といったアドバイスはこの当時のものです。

文章は難しくでも,ある程度勉強したら合格できる試験でした。
誤っているものを1つ選ぶ問題は難易度が低いのです。

今は,このような出題はありません。

3年間の過去問解くだけで正解できる試験ではありません。

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