2019年4月24日水曜日

バートレットによる「人と環境」

人はその人だけで存在しているのではなく,周りの環境に影響を受けている存在です。
言われてみれば,至極当たり前のことではあります。

しかし,ここに至るには長い年月を要しました。

古くさかのぼれば,慈善組織協会(COS)の時代は,貧困になるのは,個人的な理由だと考えられていました。

しかし,ブース,ラウントリーらの貧困調査によって,古典的な貧困観は多く変化していくことになります。

それらは今まで学んてきたことです。

システム理論では「人と環境」は一体のものととらえます。

ソーシャルワークの理論家たちは,「人と環境」についてどのように述べているのか,を勉強してきました。


リッチモンドは

ソーシャル・ケース・ワークは,「人と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを発達させる過程」である。

と述べています。

リッチモンドは,ケースワークの科学化を目指したので,「個別に意識的に」が特徴です。


ソロモンは

人は抑圧された環境に置かれると,無力(パワーレス)の状態に陥ることが多い。

と述べています。

ソロモンは,エンパワメントアプローチの提唱者です。「無力の状態」が特徴です。


パールマンは

クライエントは,役割ネットワークのなかで役割を生成している存在である。

と述べています。

パールマンは,問題解決アプローチの提唱者です。

問題解決アプローチは役割理論の影響を受けています。
クライエントは,問題解決の主体者としての役割があります。

クライエントが解決に向けた動機づけがなされていることが必要です。

「役割」というのがパールマンの特徴です。


さて,今回はバートレットを取り上げます。

バートレットは,「人と環境」について,

人々が試みる対処と環境からの要求との間で保たれる均衡関係


と述べています。


これは以下のように整理できます。


環境からの要求
 ↓  ↓
(交互作用) ⇒ バランスを取る
 ↑  ↑
人が試みる対処


バートレットの特徴は,均衡関係(バランス)というところに焦点を当てていることです。

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それでは,今日の問題です。


第27回・問題98 ソーシャルワークが対象としている「人と環境との関係」に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 リッチモンド(Richmond,M.)は,人々と資源システムとの連結や相互作用としてとらえた。

2 パールマン(Perlman,H.)は,人と環境及び両者の相互作用の連関性としてとらえた。

3 ホリス(Hollis,F.)は,他の相互作用によって影響を受けた累積的相互作用としてとらえた。

4 バートレット(Bartlett,H)は,人々が試みる対処と環境からの要求との間で保たれる均衡関係としてとらえた。

5 ジャーメイン(Germain,C)は,社会生活の基本的要求を充足するために,社会成員が社会制度との間に取り結ぶ関係としてとらえた。



正解は選択肢4です。

今日の問題もとても難しいものです。

消去法で正解にたどりつくことができないからです。

前回取り上げた問題を下書きにして,この問題が作られています。

チームfukufuku21は,これを

国試は少しずつ重なっていて,少しずつ違う

と表現しています。


第25回では,

ゴスチャ(Goscha,R.)らは,社会生活機能の概念を,環境からの要求と個人が試みる対処との交換及び均衡に焦点化してとらえた。(第25回問題101選択肢4)

と出題されています。

ここではバートレットではなく,ゴスチャと出題されています。
この出題があるので,今日の問題は正解できた率は,第25回よりも高くなったはずです。

ほかの選択肢も解説します。


1 リッチモンド(Richmond,M.)は,人々と資源システムとの連結や相互作用としてとらえた。

リッチモンドが述べたのは,

ソーシャル・ケース・ワークは,「人と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して,パーソナリティを発達させる過程」である。

です。


2 パールマン(Perlman,H.)は,人と環境及び両者の相互作用の連関性としてとらえた。

パールマンが述べたのは,

クライエントは,役割ネットワークのなかで役割を生成している存在である。

です。


3 ホリス(Hollis,F.)は,他の相互作用によって影響を受けた累積的相互作用としてとらえた。

ホリスは,「心理社会的アプローチ」の提唱者です。

「人と環境」について

人と環境及び両者の相互作用の連関性

と述べています。

連関性とはつながりのことを意味しています。


5 ジャーメイン(Germain,C)は,社会生活の基本的要求を充足するために,社会成員が社会制度との間に取り結ぶ関係としてとらえた。


ジャーメインは「エコロジカルアプローチ」の提唱者です。

個人と環境との接点に介入するのが特徴です。



<今日の一言>

今まで取り上げてきた中で,正解になっていないのは,

ホリス
ジャーメイン
ラップ

です。

次にこのような出題がある時は,これらが正解になりそうです。

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