欧米生まれのソーシャルワークの用語には,外国語が多く使われています。
外国語の用語は,その言葉を知らないと意味がわかりません。
漢字のように文字から意味を推測することができないので,勉強不足では確実に得点するのは難しいと言えるでしょう。
覚えるのが面倒かもしれません。
しかし覚えてしまえば,問題自体はそれほど入り組んだものではないので,得点できます。
合格できる人と合格できない人の差は,実はこういったところにも原因があるように思います。
「相談援助の基盤と専門職」は,勉強をしっかりしないと得点できない科目です。
しかし,一つひとつを確実に覚えれば,得点できる科目になります。
しかも,社会福祉士19科目の中では,ソーシャルワークにとって「価値」「知識」を身につける科目なので,とても大切です。
さて,今回もアドボカシーです。
アドボカシーは,権利擁護,代弁と訳されます。
もちろんアドボカシーは,クライエントの利益のために行うものです。
それでは今日の問題です。
第31回・問題95 アドボカシーに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ソーシャルワーカー自身の利益のために,サービス利用者の権利を擁護することである。
2 サービス利用者の主体的な生活を実現するために,その意思や権利を代弁することである。
3 サービス提供機関が利用者に訴えられた場合に,サービス提供機関の権利を代弁することである。
4 自らの意思を示すことが困難なサービス利用者の権利を,その家族や友人の判断に基づいて擁護することである。
5 サービス利用者の主張と,利害の対立する相手方の主張とを中立的な立場で調整することである。
アドボカシーという用語がわからなくても,「これは違うだろう」と消去できる選択肢はいくつかあると思います。
しかし,しっかり覚えておかないと,正解するのは難しいです。
知識不足の人は間違えてしまう選択肢が含まれているからです。
そういった意味では,上手に作った問題だと言えるでしょう。
それでは解説です。
1 ソーシャルワーカー自身の利益のために,サービス利用者の権利を擁護することである。
これは間違いです。
サービス利用者の権利を擁護することは正しいですが,目的がまったくだめです。
目的はサービス利用者(クライエント)の利益です。
2 サービス利用者の主体的な生活を実現するために,その意思や権利を代弁することである。
これが正解です。
アドボカシーは,権利擁護や代弁と訳されます。
ソーシャルワークの機能はいくつもありますが,その中でも権利擁護は中心的な機能ということができるでしょう。
3 サービス提供機関が利用者に訴えられた場合に,サービス提供機関の権利を代弁することである。
これも間違いです。
ぜんぜんだめです。
アドボカシーの意味を正しく理解していなくても,これを正解とする人はほとんどいないでしょう。
アドボカシーの目的は,クライエントの利益のためです。
4 自らの意思を示すことが困難なサービス利用者の権利を,その家族や友人の判断に基づいて擁護することである。
これも間違いです。
サービス利用者が自分の意思を示すことができなかった場合,家族や友人も重要な手がかりとなります。
しかし,それはあくまでもサービス利用者の権利のためです。家族や友人の判断で行われるものではありません。
5 サービス利用者の主張と,利害の対立する相手方の主張とを中立的な立場で調整することである。
これも間違いです。
サービス利用者の主張と,利害の対立する相手方の主張とを中立的な立場で調整するのは,ソーシャルワークの機能のうちの「メディエーター(調停機能)」です。メディエーターはもともと「仲介者」という意味です。
<今日の一言>
ソーシャルワークの機能について,第31回国試では,問題95と問題107の2問も出題されました。
現行カリキュラムで本格的に出題されるのは,第31回が初めてと言っても良いでしょう。
外国語の用語は難しいですが,今後はしっかり学ぶことが必要です。
最新の記事
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体は,市町村です。 同法における都道府県の役割は,障害福祉計画の作成,地域生活支援事業の実施,障害福祉サービス事業者等の指定などに限られます。 なお,自立支援医療には,育成医療,更生医療,精神通院医療の3種類がありますが,このう...
過去一週間でよく読まれている記事
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
様々なアプローチは,毎年必ず出題されています。 しかも3~4問が出題されています。 ようやく出題実績のある12種類が揃いました。 ・心理社会的アプローチ 「 状況の中の人 」を基本概念として,心理社会的に課題のあるクライエントに対して,コミュニケーションを通して関わってい...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
近年の出題基準から「日本社会福祉士会倫理綱領」が消えています。 第 37 回国家試験から新しいカリキュラムに移行しますが,そのカリキュラムでは「社会福祉士の倫理綱領」が示されています。 日本社会福祉士会も組織メンバーである日本ソーシャルワーカー連盟が「ソー...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
先日からソーシャルワークの発展過程を取り上げています。 取り上げる順番が逆になってしまいましたが,今回からケースワークの源流について学んでいきたいと思います。 まずは「現代社会と福祉」で学ぶ領域を押さえておきたいと思います。 イギリスでは,領主による「エンクロージャー...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
今回は,グループワーク(集団援助技術)の主な理論家を学びます。 グループワークの主な理論家 コイル セツルメントやYWCAの実践を基盤とし,グループワークの母と呼ばれた。 また,「グループワーカーの機能に関する定義」( ...
-
社会学の伝統的な研究領域の一つには,社会変動があります。 社会変動とは,社会の様子がどのように変わっていくかを示すものです。 ゲマインシャフトからゲゼルシャフトへ 軍事型社会から産業型社会へ などです。 さて,今回のテーマは,属性主義と業績主義です。 属性主義 とは,自分の出自な...